回想Ⅴ いつもと違う夕食 そして告白と記念日と
「おはよー!」
『お!おはよっ』
「今日夕飯食う?」
『今日は夕ご飯の日だから超食う!』
「今日は豪勢に作るから、期待しててー」
『え?なになになに? まさかの満漢全席????』
「そこまでのまさかは流石にないよ!」
『別に普通でも充分豪華なのに…』
「今日は飯友3ヶ月記念! 記念日にしちゃうかーってノリで作るっ」
『気合はいってるなあ! 私も気合いれていく!』
「胃袋に気合入れといてねっ」
『ってーか、3ヶ月なんてよく憶えてるなぁ』
「律儀なA型」キリッ
『ズボラなA型…私のことですよ、ええ…』
「別にご飯作れる作れないで決まらないでしょ…」
『そそそうだよね ご飯作れても部屋汚かったらアレだし』
「それは私のことと受け取ってもいいのでしょうか」
『男のアイテムだけはまだ見つからないのよねー…』
「たまにキョロキョロしてると思ったら、そんなの探してはるんですね…」
『ちちちがうよ! 掃除の時だよ!』
「なおのこと見付かる可能性高いな… 場所変えとこ…」
『その台詞で存在は確認しました』
「夜には無くなってるかもね」
『もったいない…』
「そう思うんなら探さないでください!」
『ふひーー ごちそーさまー』ズー
「お粗末さま」
『予想の90度斜め上だった… 至福の時間だった…』
「90度は斜めじゃないけど、そいつはよかった」
『これだけの量作って疲れたでしょ? 肩でもお揉みしましょうか?』
「いえいえ! 料理は趣味ですから」
『趣味でここまでとは恐れ入るよ』ズズー
「あははは… 好きこそ物の得意なれってね」
『好きこそかぁ… 食べるのは好きなんだけどなぁ』
「それを如何に 作って見たい まで進化させるかだねぇ…」
『無期の課題だ』
「はいはい 早く仮釈放させましょうね…」
『あ、ところでさ… ねえねえ』
「ん?」
『なんか今日、微妙ーに深刻な顔してるけど なんかあったの?』ズー
「え? っそそそそうかな」
『明らかにドモってるけど』
「あーじつはさー」
『んん?』
「…」
『んーーーー?』
「んー なんというか」
『なんだい 君と私の仲だ 何でも言いたまえよ!』
「なんと言ったらいいか」
『言葉はニュアンスで感じるものだから! 多少言葉足らずでも大丈夫っ』
「…好きです」
『…なんか聞き間違えたかもしれないから Take2いこーかな』
「いや、たぶん聞いたとおりだけど…」
『…びっくりした』
「ごめん…」
『いや…うれしいよ ありがとう』
「…」
『…』
「俺のこと… 嫌い?」
『 そういう質問卑怯だなー…』
「…ごめん」
『…好きだよ』
「え! じゃ、じゃあ…」
『ちょちょちょちょちょっとまって』
「ん?」
『一緒にいて楽しいし、好きだ』
「お、おう… 俺もだ…」
『買い物しても ご飯食べても お茶飲んでても ゴロゴロしてても、楽しいし、大好きだよ』
「そこまで言われると照れてしまうけど… 俺もです…はい…」
『でもこの気持ちがlikeなのかloveなのか…わからんのです』
「…」
『きっと… あの…』
「…なに?」
『お互いさ…』
『元の恋人の面影がある… じゃん?』
『そう言うのもあるかなって その影を追ってるかなって 思って しまう』
『やさしい 君に ご飯作ってくれる 君に 馬鹿話してくれる 君に 笑い合ってる 君に』
『前の恋人と重ねてる部分があると言えない わけではない…』
「正直…」
『…?』
「俺もそうかも しれない 最初にも言ったけど、似てるから…」
『私もそういった…ね』
「…うん」
『ダメだよ、じゃあ 重ねてる内は 追っている内は ダメ』
「…ダメ かな? そういう始まり方もあるんじゃないかな…?」
『きっとその内…別れたこと想像しちゃう 怖い…だから… ダメ』
『私は…壊れてしまう… だから始めたくない そう言う始まり方はしたく ない んだ』
「…そっかー」
『…ごめんね』
「いや、こっちこそ ごめん 俺 迷ってて…どうしたらいいか分からなくて」
『ごめん』
「こういう関係が…嫌じゃないけど…なんかじれったい様な 変な感じがして…」
『ごめん…』
「でも 君がそれなら 俺はそれでいい」
『…』
「変わって欲しくない」
『本当に ごめん ね』
「それと」
『…?』
「…ごめんじゃないだろ?」
『あ…ありがとう… だった…』
「そ 俺の方こそ ありがとう ちゃんと聞いてくれて 話してくれて ありがとう」
『んーん 私のほうこそ 聞いてくれて 話してくれて ありがとう』
「…あははは」
『…あっはっはっは』
「今日記念日作っちゃったなー フラレタ記念日!」
『フラレた日は…?』
「酒でも飲むか…!」
『ぷっ 私も飲むー!』
「すーぐ潰れるくせに…」
『否定はできません』