◆最終章
マークと別れたあとベリルはメモに記された場所を訪れる。広大な敷地にぽつんと一角だけ他とは違う雰囲気の墓石が建ち並んでいた。
「……」
死んだ場所も年月も記されておらず。ただ名前だけが墓石に刻まれていた。
「ブルー……」
ベリルは建ち並ぶ墓石に目を細める。
涙は出なかった。代わりに胸が締め付けられる。
「……っ」
はき出せない苦しみにベリルは胸を強く掴んだ。微かに震える体は今にも崩れそうに弱しく立ちつくす。
私がいなければ彼らは死ぬ事は無かったのだろうか。
過ぎ去った過去を悔いる事は簡単だ。だが……それが彼らの望む事なのか? 彼らはベリルを逃がすために自らの命を犠牲にした。
ブルー教官はベリルを『人類の理想』だと言った。
いがみ合い争い合う人類は彼の中で1つになっている。それは科学者たちの儚い夢だったのかもしれない。
『人種などどうでもいいじゃないか』
ベルハース教授の笑い声が聞こえてくるようだった。
『見るがいい。何の不具合も無く、全ての人種のDNAがここにまとまっているだろう?』
科学者たちが笑う。
「……」
ベリルは一度、目を閉じて墓地をあとにした。
振り返らずに前を見据えて──
END




