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ailes d'ange -5

テスト投稿です

 ジャックが自分の対象から目を離してダニエルのもとに来たのには訳がある。

 人にはそれぞれ漠然と流動的ではあるが、決まった未来のようなものがあり、よほどの事でもない限り、それはふんわりとおぼろげながらも天使の目に映る。

 それが先日からダニエルに見えなくなったのだ。

 未来が見えないと言うのは、魂の消滅を意味する。

「俺にも見えん。何が有ったんだ」

 ジャックは人の未来が見えない事は初めての経験で驚く。

 (はるか)を取り巻くビジョンが無色透明なのだ。

「真空のようだろ」

 ダニエルが言った。

 天使は人間に直接手を下したり直接願いを叶えたりはしないが、願いを伝えたり、祈ったりはする。

 その祈りの声が、人には見えない何かを震わし、結果的に人を癒す事に繋がる。

 透明な空気の中に、澄み切って見える杳の姿。

 本来なら、様々な彩りをまとって見えなければならないその姿が、怖い程くっきりと見える。

「彼女に何か変化が有ったのか」

 ダニエルは特に何もないが、と言いながら、最近の彼女の体調について説明した。


 天使とて、人の心が覗けたり、考えている内容が解る訳ではない。

 人間よりもその表情を読む能力が高いに過ぎない。

「不便だよな。

 見るだけ、記録するだけ。

 出来るのは、俺たちが覚えていてやる位だ」

「去年の春先に、彼女、病気だって事が分かったんだ」

 それは治らない病。

「素粒子になりたいらしい」

「何だそれ」

「光の中に溶け、全ての源の中に混じる」

 ダニエルは生きる事への執着の薄くなった彼女の願いが聞こえた。

 勿論、生あるもののその願いは聞き届けられない。

「病気を知って、彼女の心から色彩が消えた。

 だけど彼女はこれまで以上に色彩を感じるようになった。

 それで、還りたいと思ったようだ」

 ダニエルは、杳が自然の中で小さな輝きを見つけた時の笑顔が気に入っている。

 そして(はるか)が自分の、無意識に笑顔になった事に気付いて、慌ててしかめっ面に戻る時の表情も愛しく感じていた。

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