ailes d'ange -4
テスト投稿です
杳はあの夏の終わり以来、ずっと気配を探していた。
今まで時折感じていたものの存在を実感した今、それはまるで恋のように儚くすら思われる。
「先輩、ねぇ先輩」
珍しく時間通りに昼休みが取れた。
杳にとっては、それが幸運か不運か判断のつきにくい所だ。
「あ、ゴメン。なんだっけ」
「もう、まだ仕事の事考えてるんですかぁ」
ランチへ出る後輩たちに捕まり、一緒に食べる事になったのだ。
「天使ですよ。どんな姿なのかなって」
別の後輩が答えた。
「あれ、まだそれ流行ってるんだ」
杳はぼんやりと、季節を超えて流行り続けるなんて、世の中ネタ切れなのかな、と思いながら彼女たちの話題に注意を向けた。
「まだまだ流行ってますよぉ」
「そうそう、特集組んだ雑誌とか、結構売れてるって言うし」
「先輩、気になりませんか、自分の天使がどんな姿なのか」
彼女たちはきゃあきゃあと楽しげにその妄想を膨らませている。
杳もその言葉に彼の姿を想像し始めた。
私よりだいぶ背は高いはず。
多分、よく鍛えられたマッチョな身体。
後ろから抱きしめられた感覚を思い出しながら思った。
後輩たちは美少女や美少年を想像し、賑やかに喋っている。
その声が耳に入り、何故自分はマッチョなオヤジを思い描くのか不思議に思った。
そもそも何故『彼』なのか。
杳の感じる気配が何なのかも判然としないのに、自分が既に姿を想像出来る事に呆れた気分になった。
「どうしたんですか」
明るい声がかかる。
顔に出ていたのだろう。
「あ、うん。なんかアイドルの話でもしてるみたいだなって思って」
杳は答えた。
秋が深まり、彩り鮮やかな落ち葉が路面を飾る。
また現れるかも知れない気配を探しながら、杳は趣味のカメラを構える。
しかし夏のあの日を境に、それを感じる事はない。
「ずっと探してるようだな」
ダニエルのもとに訪れているジャックが言うと、ダニエルは困った様な、それでいて少し嬉しそうな顔で答えた。
「ああ。勘のいい子だから」