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無もなき老人が自分の人生を振り返り、人生の選択肢について考えていく物語。
土砂降りの中で、ずぶ濡れの老人が歩いている。周りの人々は無関心で誰も声をかけない。それが当たり前で、トラブルに巻き込まれないに越した事はない。
老人は空を見上げて、何かつぶやいた。
雨音で周りには聞こえない。
そしてまた、ゆっくりと歩き出した。
雨宿りが出来そうな歩道橋の下を見つけると、ゆっくりと腰を下ろして座り込んだ。
そして、ゆっくりと目を瞑り人生で記憶がある5歳ぐらいの事を思い出していた。
くん、司くん…
そう呼ばれて、声のする方に顔を向けた。
5歳ぐらいの女の子が、笑顔で話しかけている。「司くん、今日は何して遊ぼうか?」
かわいい笑顔でそう彼女は話しかけている。
ああ、幼稚園時代の記憶だ。
彼女の名前は…
そう、あゆみちゃんだ。
「あゆみちゃんは何がしたいの?」
そう、聞き返した。
「うーん、お砂場でお家を作ろうよ」
「いいよ、大きなお家を作ろうよ」
二人で小さなバケツに水を入れて砂場に向かった。




