森の中のマッチョ
魔境にこもっていると時々人が襲われているのを目にする。
昔の俺のように調子に乗った若者であったり。
万全の対策のつもりだったが対策が足りていなかった人であったり。
冒険者組合の理念の一つ、冒険者間の互助にのっとって俺はまずそうなら助けていた。
だから今この目の前にいるやたらはきはきとしゃべるこの青年。
武器も持ってない。魔力も感じられない。
筋肉があるとはいえ上裸のとても正気とは思えない服装の青年もその手合いだと思っていた。
おもっていたのだが...
棒立ちのこの青年にクマ魔獣が首を攻撃したらクマ魔獣の爪が折れた。
なんなんだこいつ。
「あ?今しゃべってんだから喉はやめろよっ!」
べきょ。
勢いよく後ろに振りぬいた拳によってクマ魔獣の頭が凄惨なことになった。
ほんとうになんなんだこいつ。
「キレるとこそこじゃないだろ」
「会話は最後まで聞く、大事なことだろ!じいちゃんもよく言ってた!」
「そうだね。はいこれ野菜」
「お!ありがとな!肉ばっかで飽きてたんだ!」
この人あれか。前にお兄さんたちが言ってた魔境にこもれるクラスの馬鹿強い人だ。
「ほいこれお礼のクマ魔獣の爪だ!」
今形容しがたい死体にされたクマ魔獣の手から爪を素手でバキバキ取って渡してきた。
何者なんだよこいつ。それクッソ固いんだが?昔俺の蔦をプチプチしてきたやつなんだが?
至近距離の爆発に耐えれるくらい堅かったんだが?
まだ幻覚であったほうが信用できる存在の青年はそんなことを気にせず話しかけてくる。
「おっと自己紹介がまだだったな!俺はカルラ・フェロメルト!筋肉が自慢な冒険者だ。よろしくな!」
「あぁうん。俺はハタ・グレーヌ。しがない植物魔法使いだ。よろしく」
っていうかフェロメルトって理事長の名前じゃん。お孫さんかな?
「いやぁいかにも植物魔法使いっぽい人がソロでいたから心配して見てたんだけど、何その形容しがたい何か!すげぇな!ド派手にめきょーんって!」
「これは今作ってる植物で衝撃波を出す植物をベースに何か作れないか試しているとこ。俺としてはそっちのが気になるんだが。首どうなってんの?あれめっちゃ固いはずなんだけど?」
「それは体質だな!どうも俺は皮膚が魔力を通さないらしい!で、とった魔力が外に出されず過剰に蓄積され固まり、こういうことになるんだと!同じ体質のじいちゃんに感謝だ!おかげで効率よく強くなれた!それじゃあ元気でな!野菜あんがとな!」
「あぁうん、そちらこそお元気で」
嵐のように跳び去っていった。
っていうか跳躍力どうなってんだ。ばひゅーんっつったぞ。
なんかもう疲れた。
寝床に帰ろ。
_______
はいおはよういい朝だ。
寝床にしている対魔獣罠たっぷりツリーハウスは今日も安眠を提供してくれた。
正直無理だと思っていたが、住めば都。為せば成る。
初日に全力で作り上げた城塞じみた過剰とも思える罠の数々は就寝時にちゃんと俺を守ってくれている。
さぁ今日も元気に魔改造!
とはいえまずは罠の確認だ。
さーて俺の安眠を妨げようとした愚か者は今日はいるかなー?
「やっぱりハタ!君のだったか!やっぱり壊さなくて正解だった!」
カルラ、おまえかよ。
「なんで罠にかかってんだよ。たくさん看板立てておいただろ。
冒険者協会指定の危険マークに明かりの実までつけた看板みなかったのか?」
「すまない!跳んでたから見えなかった!すべて蹴散らすのも忍びないから解除してくれないか!?」
とりあえず「魔力喰らい」をまいて罠の効力をなくす。
「ほいこれで出れるはず。っていうかこの罠結構自慢の攻撃力なんだが…ほんとなんで無事なんだよ」
「なんかチクチクしてくるこれのことか?」
「なんでこれをチクチクで済ませれるのほんと。その辺の魔獣なら貫けるんだけどなぁ。まぁいいや。お詫びに朝食おごるよ。行動の邪魔して悪かった」
「いいのか!ありがとう!」
朝から声がでかい。ずっとこの声なのも昨日言ってた体質のせいなのだろうか。
朝食の準備といっても大したことはしない。
朝食野菜セットの種一式をまいて急速成長させる。
そして爆発しない小麦と魔獣肉を発火の実で焼いて完成!
「はいどうぞ」
「いただきます!」
うんおいしい。でもやっぱり物足りない。
うちの村でとれたのに比べるとどうしても味が落ちる。
急速成長じゃ丹精込めて作られたものにはどうしても勝てないよなぁ。
土の魔力をだいぶ使うし、急速成長は農業にはとことん向いてない。
「ごちそうさまでした!!おいしかった!ひさしぶりに人間らしい食事がとれた!」
わぁ食べるの早い。
「それは何より。というかカルラ、お前もずっと魔境にいるのか?」
「ああ!体質上魔力の多い場所にずっといたほうが強くなれるからな!」
「そうか。でも寝るときどうしてるんだ?まさかずっと起きてる?」
「まさか!この辺の魔獣になら傷もつけられないからその辺で寝てるさ!」
「…これからこの家使っていいよ」
「いいのか!ありがとう!」
魔境籠り仲間が増えた。




