魔改造
ずっとふかふかのベッド寝ていたいが朝がきた。
長い長い手続きを終え、クマ魔獣から逃げ切った俺は売却もめんどくさすぎてそのまま宿に直行。
冒険家業初日の収入は0円であった。
さてどうしようか。
結局逃げ切れたのだからこれからも近くの森でちまちま小銭を稼いでいくか?
クマ魔獣から逃げ隠れちまちまと植物を回収して生きていくか?
否、否、断じて許容できない。
俺はそんな生活のために旅に出たわけじゃない。
世界中の植物を知って使って俺を育ててくれた恩を村のみんなに還元したい。
ならば強くならなければならない。
あの程度のクマもどきに苦戦しているようでは世界なんて到底回れない。
森の奥底の魔境と呼ばれる場所の植物までたどり着けない。
正直調子に乗っていた。村付近に出てくる魔獣程度なら簡単に勝てた。
だから満足してしまっていた。
たかが敵に根を伸ばすだけ。
たかが拘束するだけ。
たかが視界を封じるだけ。
その程度の植物で魔改造と銘打っていた自分を恥じる。
幸い、昨日とってきた植物がたくさんある。
魔力たっぷりの土地でそだった植物は珍妙な特性を有していることが多い。
大いに参考にさせてもらおう。
無駄なプライドも捨てよう。
一人で何でもできるなんて付け上がりすぎだ。
ヤドリギの取引でしばらく生活できるだけのお金もある。
心置きなく魔改造していこう。
二度とあんな無様をさらさないように。
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「やあハタ君久しぶり!」
「お久しぶりですベガルタさん」
「頼まれてた植物入荷できたよ」
「わぁ!ありがとうございます!」
「うちの商会ヤドリギのおかげで儲かってるからね。
君のお願いならこれくらいサービスするよ。
これからフォレス村に向かうところなんだ。家族に伝言があるなら聞くよ?」
「それなら…手紙を家族に渡していただけませんか?」
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父さん、母さん、弟たちへ
私が旅立ってから三か月が過ぎようとしているでしょうか。
手紙を出すのが遅れてごめんなさい。
お元気ですか?
俺は怪我無く元気に過ごせています。
べガルダさんがヤドリギを良い値で買ってくれたおかげで日銭に追われることもなく、安定して過ごせています。
ですが、冒険業で稼いでいくという予定は頓挫してしまいました。
はっきり言って調子に乗っていました。甘く見ていました。
村にいたときに準備していた種があればやっていけると。
甘かったです。それはもう村でとれるサツマイモくらいには。
なのでこの冬ずっと種を改良していました。
より強く、悪辣な効果を発揮する植物を作るために。
ベガルタさんの商会に取り寄せてもらった南方の珍しい特徴を持つ植物のおかげでもうすぐ満足のいく種が出来上がりそうです。
俺自身も鍛えなおしました。
ただ急成長させるだけの植物魔法使いじゃこれらの種を十全に使いこなせないから。
これでやっと雪辱を果たすことができそうです。
この三か月でやっと冒険者としてのスタートラインに立てた気がします。
その過程でつくれた発火の種をこの手紙に添えて送ります。
少し魔力を込めて成長させるだけで火が発生する優れものです。
ぜひ料理などに役立ててください。
とても調子に乗っていたハタ・グレーヌより
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