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正統派王道RPGの世界~戦士はだいたい苦労役~  作者: あどん


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第7話:【魔法使い】はやはり強い

その後も何度かモンスターと遭遇したが、特に苦戦することなく撃破することができた。 フィリアの魔法による後方支援、俺の前衛での牽制、そしてアルフレッドの決定力。 三者の連携は、想像以上に噛み合っていた。


「思ったよりも順調ね」

「ああ。【ロール】を得たことで身体能力のベースが底上げされているみたいだ」

「僕たち三人なら、この程度の敵は問題ないね」


自信に満ちた表情で言い切るアルフレッド。その頼もしさに、フィリアも自然と笑みをこぼす。 だが――肝心の「大型の狼」には未だ出会っていない。


(どこに潜んでいる……?)


もしかしたら見間違いだったのか、あるいは村人の噂が大袈裟だったのか。 そんな安堵と拍子抜けが混ざり合った、その時だった。


「――グゥオオオオオッ!!」


突如、森の肺腑を震わせるような咆哮が響き渡った。 空気がびりりと震え、鳥たちが悲鳴を上げるように一斉に飛び立つ。


「……亜種か」


アルフレッドの呟きに、背筋を冷たいものが走る。 間違いない。村を、街道を脅かしている元凶がすぐそばにいる。


俺たちは言葉を交わさずとも、互いの顔を見て頷いた。気配を殺し、声のした方へと慎重に歩を進める。


「……いたぞ」


茂みの向こうに、圧倒的な質量を持った影が伏していた。 通常の月光狼ムーンライトウルフを一回り、いや二回り以上も上回る巨躯。全身を覆うのは夜を溶かしたような漆黒の毛。 体長は優に二メートルを超え、赤く濁った瞳からは、絶え間なく殺意が滴り落ちていた。


「これが噂の大型種か……」

「デカいわね、冗談抜きで……」

「……だが、幸いにも単体だ」


視線を交わす。 引き返すという選択肢も頭をよぎったが、不思議と足は後ろを向かなかった。 この世界に“完全な安全”などどこにもない。ここで踏み出さなければ、もっと厄介な試練が待っているだけだ。


「行くぞ」

「ああ!」

「ええ!」


俺の号令を皮切りに、三人が同時に地を蹴った。


「『ウォークライ』!」


雄叫びと共に、真っ先に牙の届く距離へと踏み込む。 巨大な狼は巨体に似合わぬ反射速度で、俺の頭上から鋭い爪を振り下ろしてきた。


「くっ……!」


盾で受け流そうとするが、岩を叩きつけられたような衝撃に腕が痺れる。 その隙を突き、アルフレッドが横から斬りかかるが、狼は驚異的な身のこなしで刃を回避した。


「『サンダーボルト』!」


フィリアの放った雷撃が側面に直撃する。 致命傷には至らないまでも、狼の動きを確実に鈍らせた。


(今だ!)


さらに深く踏み込み、剣を振るう。 手応えはあった。刃が肉を裂く感触が伝わる。だが、狼は怯まない。強引な反撃の爪が俺を捉えた。


「しまっ――」


右肩を焼くような鋭い激痛。 温かい血の感触が腕を伝い、地面を叩く。


「テオ!」


フィリアの悲鳴が聞こえたが、止まれば食い殺されるだけだ。


「させない!」


アルフレッドが強引に割って入り、狼の脇腹を深く抉る。狼が呻き声を上げ、たまらず距離を取ったその隙だった。

アルフレッドは狼を牽制しつつ、空いた左手をこちらへ向ける。


「――『ヒール』!」


掲げた掌から暖かな光が放たれ、俺の肩を包み込んだ。引き裂かれた肉が瞬時に繋がり、痛みが引いていく。


(前線で戦いながら回復魔法までこなすのか……。これが【勇者】ってやつか)


「助かった、アル!」

「いいよ、すぐに畳みかけよう!」


再び前へ出る。 傷を癒やされ万全に戻った俺たちの前で、消耗した狼はもはや反撃の精彩を欠いていた。


「トドメは任せて!」


次の瞬間。 フィリアの声が、澄み切った魔力を伴って森に響いた。


「――集え、雷霆らいていよ」


空気が張り詰め、肌が粟立つ。 これまでの魔法とは明らかに次元の違う魔力が、彼女の杖へと収束していく。


「天より落ち、全てを穿て――」


狼がようやく本能的な恐怖を覚えたのか、こちらへ向き直る。 だが、もう遅い。


「『ライトニング・スピア』!!」


放たれたのは、一本の巨大な雷の槍。


閃光が視界を白く焼き、 次の瞬間――それは狼の胸部を寸分の狂いなく貫いていた。


「――――」


声にならない断末魔。 巨体が数歩よろめき、そのまま崩れるように地を叩く。


訪れる静寂。 耳鳴りだけが響き、焦げた匂いが森を包んでいた。


「……倒したんだよね?」


アルフレッドの呟きが、やけに小さく聞こえた。 フィリアは杖を下ろし、溜まっていた息を長く吐き出す。


「ええ。完全に」


狼の身体は粒子となり、淡い光となって空気中に溶けていく。 あとに残されたのは、掌に収まりきらない大粒の魔核と、その猛々しさを物語る白い牙だった。


大概、どのRPGでも魔法は強いからな。強敵にこそ輝くのが魔法使いだ。


「みんな、お疲れ様。いい戦いだった」

「ああ……」


顔を見合わせると、自然と笑みがこぼれた。


「……なんか、身体が軽く感じない?」

「私も、今そう思ったわ」


――レベルアップ。 確かに、俺たちはこの瞬間に、一歩先へ進んだのだ。


「戦利品を回収して、王都へ急ごう。暗くなる前に森を抜けたい」

「うん。行きましょう!」


こうして俺たちは、初めての「壁」を乗り越え、次なる目的地へと力強く歩み出したのだった。

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