表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正統派王道RPGの世界~戦士はだいたい苦労役~  作者: あどん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/12

第3話:無難な【戦士】の皮算用

この世界において、「偶然」とは神の導きと同義だとされている。 【勇者】アルフレッドの幼馴染である俺が【戦士】のロールを得たのも、決して偶然ではない。必然であり、神の差配。人々はそう語るだろう。


その夜、俺の家をフィリアが訪ねてきた。彼女の瞳には、すでに揺るぎない答えが宿っていた。


「私は行くわ」


その一言に、迷いはなかった。


「アルと一緒に旅立つって決めたの。あいつを一人にはしておけないから」 「そうか……」


予想はしていた。だが、いざ突きつけられると胸の奥が騒ぐ。彼女は強い娘だ。村長の娘という責任感、そして【魔術師】の職を得た自負。授かった力は正しく使うべきだ――そんな彼女らしい理屈が、その背中を押しているのだろう。


「テオはどうするの?」 「……まだ迷ってる」


正直な答えだった。英雄になりたいわけでも、世界を救いたいわけでもない。だが、ここで一つだけ確かなことがあった。


「でも、これだけは言える。もし俺が行くと決めたなら、その時は全力でお前たちを支えるよ」 「うん、それでいいわ」


フィリアは、ふわりと春の陽だまりのように微笑んだ。 しかし、すぐに真剣な表情へと戻り、少し言い淀んでから続けた。


「……もし、テオが行かないと決めたとしても、誰もあなたを責めたりしない。それだけは忘れないで」


その言葉に、締め付けられるような痛みと救いを感じた。彼女はとっくに、死線を超える覚悟を完了している。その上で、俺には「平穏」という選択肢を差し出してくれたのだ。その献身的な優しさが、痛いほどに有り難かった。


「ありがとう、フィリア」


心からの言葉を口にすると、彼女は途端に顔を赤くして頬を掻いた。


「べ、別に感謝されるようなことじゃないわよ! ただ、あんたに無理して欲しくないだけなんだから!」


慌てる姿がいつもの幼馴染らしくて、思わず笑みがこぼれる。彼女は大切な友人だ。危険な目に遭ってほしくない。だが、俺が残ることで、彼女一人がその危険に飛び込んでいくのを見過ごすことなど、それ以上に耐え難かった。


(……どうしたものか)


深夜、屋根の上で星空を仰ぐ。 前世ではしがないサラリーマンだった俺が、異世界で勇者パーティーの末席を検討するなど、何の冗談だろう。


翌朝。結論から言えば、俺もアルフレッドに同行することに決めた。 理屈や損得は色々あったが、最後は自分の意志だ。大切な友人たちが剣を取り、杖を掲げるなら、俺だけが逃げるわけにはいかない。


……と、友人想いの熱い決意を固めた風の俺だったが。 その裏では、転生者らしい打算も働いていた。


この手の物語にはテンプレートがある。 中盤あたりで「可憐な女武闘家」か「ボーイッシュな美少女剣士」あたりが加入すれば、地味な初期メンバー(戦士)はお役御免になるのが世の常だ。酒場で待機するか、馬車の隅っこがお似合いだろう。


そうなれば、あとは「昔馴染みの功労者」として、後方腕組みポジションで荷物持ち兼雑用係に徹すればいい。


(まあ、それまでは適当に頑張るとするか。どうせ【戦士】なんて替えのきく凡職だ。主人公補正全開のアルフレッドや、魔法特化のフィリアがいれば、俺の出番なんてたかが知れているだろうしな)


俺は、これから始まる過酷な冒険を前に、そんな「捕らぬ狸の皮算用」をしながら、あえて茨の道へと足を踏み入れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ