表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正統派王道RPGの世界~戦士はだいたい苦労役~  作者: あどん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/12

第11話:【僧侶】、洗礼への同行者

アルミラ姫が、優雅に、しかしどこか重々しい響きを伴って拍手をした。


「素晴らしい。これで四人のパーティーが結成されましたね。ですが――一つ、看過できない問題があるのです」

「問題、ですか?」


俺の問いかけに、アルミラ姫は柔らかな微笑を収め、その端正な顔立ちを引き締めた。


「彼女は神殿の秘蔵っ子。……正直に申し上げれば、勇者パーティーへの同行を快く思わない保守派も少なくありません」


その言葉に、場の空気がわずかに張り詰める。 当のセラフィーナは驚いた様子も見せず、ただ静かに両手を胸元で重ね、運命を受け入れるかのように佇んでいた。


「神殿にとって【聖女候補】とは、国そのものの象徴。死地を巡る戦いの旅に同行させるなど前例が少なく、反発が出るのも無理はありませんわ」


アルミラ姫は一度言葉を切り、俺たち一人ひとりの顔を射抜くように見渡した。


「だからこそ――抗いようのない“正当性”が必要なのです」

「正当性……?」

「ええ」


姫は静かに頷き、その瞳に強い光を宿して続けた。


「“継承の迷宮”に挑んでいただきたいのです」

「継承の迷宮……?」


思わず聞き返すと、アルミラ姫は少しだけ遠くを見るような、懐かしむような表情を浮かべた。


「正式名称は、王都管理第七地下迷宮。ですが、人々は敬意と畏怖を込めて“継承の迷宮”と呼びます」

「歴代の勇者が、旅の始まりに必ず挑んだ場所……でしたね」


アルフレッドの言葉に、姫は肯定を返した。


「その通りです。この迷宮は王都の直下に広がる巨大な訓練遺構で、三十層までは一般の冒険者にも開放されています。ですが――」

「そこから先が、本番というわけか」


俺が先を促すと、姫は意味深に微笑んだ。


「ええ。三十層よりその先は、【認められた者】のみが入場を許される聖域。迷宮そのものが意志を持ち、挑戦者の資格を問うとさえ言われていますわ」


選ぶ、か。 ただの訓練場なら「第七迷宮」なんて呼び方で十分なはずだ。わざわざ「継承」と呼ぶからには、そこには数値化できない“何か”があるのだろう。


「最下層で受ける“洗礼”の内容は、詳細な記録が残されていません。ただ……」


アルミラ姫の声が、わずかに低く沈む。


「洗礼を受けた歴代の勇者は例外なく、劇的な成長を遂げています。力としての能力だけでなく、自らの宿命を受け入れるだけの『覚悟』も含めて、です」


なるほど。神殿の老いぼれたちを黙らせるには、これ以上ない舞台だ。勇者としての「質」を証明してみせろ、ということか。


「……わかりました」


アルフレッドが、迷いなく一歩前に出た。


「我々一同、全身全霊でその試練に臨む所存です」

「ありがとうございます。その言葉を待っておりました」


姫は安堵したように胸をなでおろした。 その時だった。


セラフィーナが、静かに、しかし確かな意志を伴って歩み出た。


「……あの」


控えめだが、広間に凛と響く声だった。


「私自身、この旅が決して容易なものではないと理解しております。それでも――」


彼女は真っ直ぐにアルフレッドを、そして俺たちを見つめる。


「勇者様と共に歩み、共に試練を越えたいと切に願っております。どうか、私にもその機会をお与えください」


その瞳に宿る決意は、本物だった。 彼女はただ用意された席に座るだけの僧侶ではない。自ら濁流に身を投じ、その手で運命を掴み取る覚悟を、とうに決めていたのだ。


(……なるほどな)


俺は内心で小さく息を吐いた。 この洗礼は勇者のためだけじゃない。 セラフィーナ自身が、周囲の雑音を断ち切り、“選ばれるべき聖女”になるための儀式でもあるのだ。


アルミラ姫は満足そうに頷いた。


「その覚悟があるのなら、もう案ずることはありません。明日より直ちに準備にかかりましょう」


こうして俺たちは、新たな仲間――セラフィーナを加え、四人体制となった新生勇者パーティーとして、地下深くに眠る“継承の迷宮”へと挑むことになった。


それが、ただの通過儀礼ではないことを、この時の俺たちは、まだ深く理解していなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ