午後11時、恋がほどけて、重なるとき
午後11時。
ベッドサイドの照明は落とされて、部屋には薄明かりだけが残っていた。
私の指先と、神谷くんの指先がゆっくりと絡む。
見慣れたはずの彼の顔が、
こうしてすぐ目の前にあるだけで、胸がいっぱいになるなんて思わなかった。
「……大丈夫?」
低くて優しい声が、髪の奥に落ちてくる。
私は小さくうなずいて、目を閉じた。
心の奥でずっと求めていたのは、
この温もりだったのかもしれない。
指先が肌に触れるたびに、
忘れていた何かをひとつずつ、取り戻すようだった。
「……苦しくない?」
彼の問いかけに、私は声にならない笑みを浮かべて、
そっと彼の首に腕をまわした。
「ううん。……ずっと、こうされてみたかった」
近づいてくる体温。
吐息が触れて、
私たちの鼓動がひとつになる。
名前を呼ばれるたび、
愛しさがあふれて、
自分の全部が彼にほどけていくような感覚。
何度も目を合わせて、
何度も唇を重ねて、
そして、言葉よりも深く、想いを伝えていく。
「……好きだよ」
彼の言葉に、私はぎゅっと目を閉じた。
返事をする代わりに、また彼を強く抱きしめる。
心と身体、どちらが先だったのかなんて、
今はもう、わからない。
ただ確かに言えるのは、
今夜、私はこの人と恋に落ちなおしたということ。
何度でも、
どんな夜でも。
私はこの人に、愛されたかった。