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午後7時、言葉にしなきゃ届かない

「午後7時、まだ君を想ってる」


 午後7時。家に着いて、ソファに沈み込んだ。


 バッグを床に置いて、スマホを見つめる。

 着信も通知もないのに、なんとなく画面を開いたり閉じたり。


 さっきまで一緒にいたのに――

 神谷くんの声が、笑顔が、まだすぐそばにあるような気がする。


 


 鏡の前で前髪を直したとき、ふと思い出す。

 「今日の髪型、似合ってるね」って言ってくれた言葉。

 その一言が、今日一日ずっと心をあたためてくれてた。


 


 ソファに座ったまま、ふぅっとため息みたいな息がこぼれる。


 こんなふうに、誰かを思いながら夜を迎えるのは初めてだ。


 


 スマホが震えた。

 表示された名前に、思わず笑みがこぼれる。


 神谷くん。


 《もう家ついた?》


 たったそれだけのメッセージが、どうしてこんなにも嬉しいんだろう。


 


 《うん。神谷くんは?》


 すぐに返すと、彼からの返信も早かった。


 《今、夕飯つくってるとこ。炒めすぎに気をつけてる!(笑)》


 《ふふ、それは頑張って》


 《佐伯さんは?もうゴロゴロしてる?》


 《うん。あなたのこと考えながら》


 ――送ってから、ちょっとだけドキッとした。

 でも、嘘はつきたくなかった。


 


 《……俺も。今日、君と過ごした時間ずっと思い出してた》


 その返信に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

 嬉しさと、くすぐったさと、どうしようもない愛しさと。


 


 午後7時。

 まだ街は騒がしくて、夜には少し早い時間。


 でも、私の中ではもう静かに始まっていた。

 “恋人”としての、最初の夜。


 明日もきっと、彼の声を聞きたくなる。

 そう思いながら、スマホを胸に抱いて、そっと目を閉じた。


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