時間稼ぎ
とりあえずゾンビにWSを放って見たものの、これだけじゃ到底倒す事は出来ない。
ヘイトを俺に向ける事は出来た様で、こちらへ向かって走って来る。1匹だけならまだしも3匹かぁ・・・少なくてもあちら側からアタッカーが来るまでは、こいつらの相手をしつつセラへのヒールだな。
せめて、誰かがゾンビへドライアードツールをかけてくれると嬉しいが、ここには使える人がいない。と言うか、俺とセラしかいないのでやるしかない。
1匹目が掴みかかる様に突っ込んできたので、伸ばした腕を掴み体捌きを行いゾンビの勢いを利用して投げ飛ばす。流石に1対3で真正面から戦うと、時間稼ぎどころか俺が死んでしまう。
身体を元に戻すと既に2匹目が俺の目の前にいた。軸をずらし足払いを行いすっ転んでもらう。
3匹目が後1歩ほどの距離から腕を伸ばし俺を掴もうとしてきていたので、腕を外側へ捌いて内側へ入り肘を振り上げる。
ゾンビの顎へ命中しのけぞったところに逆手で水月を突く。そのまま後ろに倒れてくれたので、飛び上がり首でも踏みつけようとしたのだが、1匹目のお帰りだ。
背後から腕を振り下ろして殴りつけてきたので、先ほどと同じく内側へ避け伸ばした腕を掴み、逆手で肘を入れる。動きが止まったので、そのまま背負い投げをして地面へ叩きつける。
こいつも踏みつけには至らず、側面から2匹目のゾンビがタックルしてきたので軽く跳びあがり側宙の要領でゾンビの上を転がって避け、着地と同時に沈み込み水面蹴りを放って転ばせる。
そのタイミングで立ち上がり、セラへのヒールを行う。
んん・・・・・・これ忙しいな!!
セラへのヒールは絶対的に無くせない。ゾンビを1匹でも倒せば楽になるのだが、攻撃に集中してしまうと他のゾンビから攻撃を喰らう。1撃良いのをもらったら、俺の防御力では耐えられない。
今まで戦った事を考えると、しっかり防いだ上で衝撃を逃がす為に跳んでも中々の衝撃を受ける。
吹き飛ばされている時に自己ヒールは出来るが、魔力はセラの為に残しておきたいところだ。
今出来るのはダメージを少しずつ与えつつ、やっぱり時間を稼ぐのがせいぜいだな。
こんな少しずつのダメージでは、ゾンビを倒せるのはいつになるのやら。魔力が惜しいという理由でDUを使うのも却下だな。
何とか良いのを喰らわずに、時間稼ぎに専念しよう。幸いな事にここにいる3匹程度なら、武神との修行の成果もあり何とかなりそうだし。
そんな自分に都合の良い事を考えたりするもんじゃなかった。ザケンのすぐそばにゾンビが2匹湧き、あのままではセラへ行ってしまう。致し方無しだが、俺はまた湧いたゾンビにWSを撃ち込んだ。
これでめでたく1対5だ。何とかなるんだろうかね。何とかするしかないよね。
考えている間もなく、今ザケンの傍に湧いたゾンビ2匹がこちらへ走り込んできた。
片方のゾンビが邪魔になる位置へ移動し、手前側のゾンビに足払いをして転ばせ、後ろのゾンビもそれに巻き込まれる形で転んでくれた。
本当なら正面から正拳突きなりなんなり入れて、後ろのゾンビもろとも吹き飛ばしたいのだが、いかんせん俺とのパワーが段違いだ。
真面に当たると確実に俺が押し負けて倒され、その後はゾンビに潰されたまま他のゾンビに殺されてしまう。
攻撃力か防御力のどちらかだけでもファイター職並みに強ければ何とかなるのだが、所詮俺はヒーラーだからなぁ。どっちも無いのはしょうがない。5匹になってしまったら、倒すのは諦めて時間を稼ぎつつ生き残ろう。
一縷の望みをかけて少し遠くにいるワニ達を見てみたが、まだワニが到着したかどうかのタイミングだ。
スカーレットにゾンビが群がり、それをジャンヌが補助しつつリカ達が範囲魔法を撃ち込んでいる。
これはまだまだ助けが来るまでには時間がかかりそうだ。最初から分かっていた事だけど、5匹はきつい。何なら3匹でもきついのが本音だ。
そんな俺の気持ちなど全く関係なく、起き上がった順番でゾンビが襲い掛かって来る。
何にしても死なない様に立ち回ってみるかな。
それから暫く経ち、何とゾンビを2匹倒す事が出来た!ファイター職じゃないヒーラーが1対5でゾンビ2匹も倒すとは、大金星じゃなかろうか。
今までの修行の成果、悪魔の島に来てからのレベルアップ含め、多少なりとも俺の努力が報われたんだなと感慨深い。
この調子なら残りの3匹も倒してゆっくり魔力回復の瞑想でも出来るかな。と妄想したものの、現実は厳しい。俺が2匹を倒している間に、追加で2匹湧いてリンクしているので結果まだ目の前には5匹いる。
多少なりとも最初の3匹にはダメージを与えているので、もしかしたらもうすぐ3匹は倒せるのかもしれない。
少しでも攻撃の溜めの時間をつくれれば、頭を踏み潰す事も可能だろう。だが、それは俺が万全の状態ならだ。
今は少し距離が出来たので、再度セラへヒールを行う。セラの様子を見る限りだと・・・・・・やはりと言うか当たり前なのだが、かなり辛そうだ。
浮遊サーベルが無くなったとは言え、相手はレイドボスだ。オルフェン並みの頑丈さではないのだが、あいつよりは知性を感じる。成長速度はオルフェンよりも圧倒的に早い。
現に今、セラは剣と盾を使い必死に攻撃を捌きながらザケンを抑え込んでいるが、ザケンの動きが洗練されてきている。剣豪・・・・・・とまではいかないかもしれないが、正直遠くから見ている分にはそれに近い。
サーベル1本での戦い方が、そこら辺のファイターより上手くなっている。その上、単純な力そのものはこちら側とは比べるべくもなく強い。永遠と戦い続けているセラが辛いのは当たり前だ。
せめて俺がゾンビの処理を終えて、セラの手伝いを少しでも出来れば良いのだが―――無理だな。
ゾンビと戦い続けている間に思いっきり攻撃を受けてしまった。どうにも避けられない状態で直撃を受けるよりは・・・・・・と思って左腕でぶん回していたゾンビの腕をガードしたのだが、やはり良くなかった。
俺の腕はへし折れた。当然、腕1本では衝撃を殺せずあばらも何本か一緒に折れた様だ。
口から血が出てきたので、多分肺とかにもダメージがいったのか、呼吸もままならない。
この状態で最低5匹のゾンビ相手にどこまで戦えるのやら・・・・・・諦めると言う選択肢はないからやるけどね。
何にしても俺は時間を稼いでセラへヒールをかける為にいる。だから自分へのヒールは出来ない。
既に魔力がほぼ空になってきた。ここからは魔力枯渇の地獄も見ながら戦う事になりそうだ。
出来れば早く助けが来てくれたらありがたいと思いつつ、俺はゾンビに吹っ飛ばされて宙を舞った。




