再挑戦
周りがざわついてきており、その声や音が耳に入り目を覚ます。あれからどれほど寝ていたのだろうか。
ハクは律儀に俺の頭を膝に乗せたままウトウトしている。こんな状態でもしっかり休めたのかな。
俺はハクのお陰もあり、あれだけあった倦怠感や頭痛も無くなっている。これならまた戦えそうだ。
俺が起きた事が分かったのか、ハクも目を開ける。
「お早う御座います。気分はいかがですか?」
「おはよう、ハク。お陰様で絶好調だよ」
名残惜しいがハクの膝から頭を離し身体を起こす。少し身体を動かし変な痛みがないか確認するが、やはりどこも悪くは無い様だ。これからまたザケンと戦うのだから、多少痛みがあったところで気にしないけどね。
あれから大分時間が経ったのか、海賊船の壁に空いている穴から日が射しこんでいた。無事に朝をむかえられて何よりだ。特に大きな混乱は起きてない様なので、坂道にいたのは正解だったな。
全員が見えている訳じゃないが、どこからも報告は上がってこないので、皆無事だったのだろう。
「おはよう、ハガネさん。1階の坂道までの人も含めて全員無事だよ。今は干し肉とか食べて少しでも栄養をとっているところ。この後まだ長いからね」
ギンナルがゆっくりと歩いてこちらに来る。
「おはよう。昨日はありがとう。急遽だったけど、ギンナルがしっかり指揮をとってくれたから、何とか皆避難する事が出来たよ。今日も頼りにしているよ」
「頼りにするのは構わないけど、またあんな状況に追い込まれない様にしてね」
俺は苦笑いで返す。ギンナルの言う通りで指揮系統を任せるって事は、俺がどうにもなっていないって事だしね。出来れば指揮を待たせなくて良い様に上手く倒したいところだ。
あ・・・・・・そういえば、まだセラを見ていない。血盟員もちらほら見つけたが、セラが居ないぞ。と言うか、盾の3人がいない。
近くに居たユイに聞いてみよう。
「ユイも昨日はありがとうね。お陰でここまで逃げられたよ。それで・・・・・・セラ、ジャンヌ、スカーレットの3人は・・・・・・無事かな?」
無事に決まっているのだが、やはり聞くのが少し怖い。そう易々とやられるとは思えないが、何故か見つからない。
「いえいえ。あの位いつでもやりますよ!盾の人達は甲板への出口と海賊船の中層と下層に別れて待機しています。万が一ザケンや魔物が来たら大変ですので。3人とも元気いっぱいですよ!セラさんも絶好調で、朝目覚めてからジャンヌさんとミラさんと摸擬戦してました。この狭い所で器用に戦ってましたよ」
良かった・・・・・・。当たり前だが無事だったか。それにしても起きてから摸擬戦をしているとは驚きだ。身体の動きを確認する為に行ったのだろうが、元気なものだな。
「そうか、それなら良かったよ。1時間後に再度ザケンへ挑もう。全体に広めておいてくれ」
そう伝えるとユイはうなずき、近くの人達から伝えてくれている。
陽が当たっている間だけ討伐が出来る。は、もはや間違いはないだろう。だから急いだ方が良いのかもしれないが、まだまだ時間はある。陽が昇りだしたばかりだし。
少しでも腹に何かを入れて、戦える準備をしておこう。もう一度逃げられるとは限らない。討伐が成功するか、こちらが全滅するかだ。
「お、ハガネさん、起きたのですね!おはようです!」
「おはよう、リリ。相変わらず元気いっぱいだね」
下のから声がかかったと思ったらリリだった。
「スタンアタックPTは、もう再編成したですよ。いつでもいけます!他も補助PTの2PTを解散して、それぞれのPTへ編成済です。多少戦力は落ちたかもですが、昨日の感じならきっと討伐出来るですっ!」
「ありがとう。リリのPTはザケン討伐の要だからね、ザケンへのスタン、しっかり頼むよ」
「はいです!!」
既にPTの編成も済んでいるのか。改めて確認しておこう。
現在のPTはメイン盾PT、スタンアタックPT、WIZPT、弓PT、周辺魔物狩りPTだな。それぞれフルPTで45名だ。という事は・・・・・・18名も死なせてしまったのか。
今は悔やんだり後悔している場合じゃないのは分かっているが・・・・・・。
死んでしまったメンバーの為にも必ず討伐し、遺品と共に戦利品をドール城下町へ持ち帰ろう。俺達迄討伐出来ずにやられたら、誰も居品を持って帰れないからな。
戦力的にはどうだろう。補助PTの2PTが無くなりはしたが、メインの5PTは残っている。
だがレベルの全体平均は少し下がってしまっているが、そこまでの支障は出ないと思われる。
問題があるとしたら、ゾンビ狩りの速度が落ちてしまうのと、ザケンへのダメージを与える速度が落ちる事か。メイン盾PTのメンバーは変わっていないので受けは安定すると思うが、討伐に時間がかかるのは厳しい気もする。
ザケンの浮遊サーベル6本が同時に動いた時に、ジャンヌとスカーレットだけでは抑えきれず、ワニにも手伝ってもらっていた。
だけど今度はセラもいる。盾職3人なら受けきれる・・・・・・と思ってもいいだろう。
どう考えた所で予測する事しか出来ないが、勝率が無くなってはいない。
周辺魔物狩りPTのみではゾンビの処理が難しいので、弓PTの一部には雑魚狩りを手伝ってもらおう。
WIZにはザケンに集中してもらい、スタンアタックPTのアタッカーも2名位はゾンビ狩りに回そう。
ザケンへの攻撃は少し減ってしまうが、ゾンビに絡まれる方がやっかいだ。これでいこう。
俺は盾3人へのヒールをするのが仕事だから、まずはそれをきっちりとこなす。メイン盾3人が動ける状態なら、ザケンのタゲは外れない。当たり前の戦い方を当たり前にやろう、
時間が経ちギンナルの号令で各自エンチャントを行う。
周辺魔物狩りPT、盾PT、スタンアタックPT、WIZPT、弓PTの順に扉をくぐる。
海賊船の甲板は陽の光で満たされていた。ザケンはまだ遠い位置にいるが、特に何もせずに中央付近に立っている。
ゾンビ達はその周囲をうろうろと動いているだけで、こちらには気が付いていない。
扉付近には魔物がいなかったので、順次展開する。
「皆・・・・・・生きて帰ろう。もう少しだけ、この討伐に付き合ってくれ。倒された人達の為にも必ず討伐を成功させたい。その為に無理も言うと思う。厳しい戦いになるのは分かり切っているけど、死力を尽くそう。ザケンを―――討伐する。俺に力を貸してくれ!!」
「おぉ!!」
ここで倒せなければやり直しは効かない。
必ず勝つ!




