束の間の休息
「静かですねぇ・・・・・・」
「ああ・・・・・・そうだね」
これが晴れた日の草原で、ピクニックに来て手作りの昼食を頂き、休息してる最中の会話なら良かったが、現実は薄暗い木製の海賊船の中だ。
坂道に寝転がり、ハクに膝枕をしてもらっていると声がかかった。
確かに言われた様にとても静かだ。先ほど迄甲板でザケンと死闘を繰り広げていたとは思えない。
今この場に魔物はいないし、皆もそれぞれ寝ている。もちろん見張りを坂道の上下に立てて交互に休む様にはしているけど。話をしている人は皆無なので、俺達も小声で話をしている。
「気分はどうですか?少しは良くなりましたか」
「お陰様でね。ハクに膝枕をしてもらえば、直ぐに治るよ」
「魔力枯渇が辛いのは、私もメイジの端くれですから知ってますよ。私の膝枕なんかで治るならいつでもしちゃいます」
「それは嬉しいな。またこうしてもらえるなら、魔力枯渇も悪くない」
2人で他愛のない事を話していると、近くにいたユイからも声がかかった。
「お2人とも・・・・・・仲がいいのは良いですけど、小声で話していても皆に聞こえてますからね」
「はい・・・・・・聞こえちゃってます。お噂通り、そちらの血盟の女性は全てハガネさんのお嫁さんなのですか?」
同時にうちのメイン盾PTにいるエルダーの人も会話に参加してきた。
「誤解ですよ。全ての女性が私の婚約者ではないですし、婚約者になっていない女性も多々いますよ」
実際ワニの婚約者も3名はいるし、まだ俺の婚約者ではない女性だっているのだ。嘘はついていない。
「そうなんですか?正直不思議だったんですよね。PTや血盟は男女間のいざこざで解散してしまったりするじゃないですか。だから戦乙女の方々みたいに女性だけのPTが出来たりは良くある事なんです。私も嫌な経験した事は1度や2度じゃありません。なのに、戦乙女の方々はハガネさんのクランにそのまま入っちゃうし、それ以外のメンバーもワニ様以外は全員女性ですし。どうやって成り立っているんだろうな~って思ってました。それこそハガネさんがクランメンバーの弱みでも握って、誰も逆らえない様にしている、とか。実際は婚約者なんていなくって、凄い仲が悪いとか。色々冒険者ギルドでは噂になってましたよ。でもハガネさんに会ってみて、ハガネさんと接してる皆さんを見ていたら納得しました。素晴らしい関係性が築けているんだなぁと。ハクさんなんてハガネさんに夢中ですし、ハガネさんも皆さんとラブラブですもんね」
当たり前の様に、ドール城下町でも冒険者ギルドで噂になっているんだな・・・・・・。
風評被害と言い切れないところが困りどころだ。
「そんな、私とハガネさんがラブラブだなんて。確かに相思相愛ですし、ここにいる誰よりも付き合いが長いですし、ハガネさんが私をいつも見てくれている事はもちろん知っています。でも、うちのクランはいざこざなんてないですよ!私はハガネさんを信じていますし、皆さんも同じくハガネさんを信じています。それでもうちのクラン以外の女性がハガネさんにすり寄って来ていたら、ミラさんにデットリブローして欲しいなぁとか、何でセラさんはその女性を叩き斬らないんだろうとかは、きっと皆思ってます。でもでも、ハガネさんはこれ以上は・・・・・・これ以上には流石に婚約者を増やしたりとかはしないと信じてます。そうです、信じているんです。万が一にもそんな事があれば―――フルエンチャントと歌、踊りを入れたリカさんに、雷魔法を使ってもらうだけですし、きっと増えたとしても私をしっかりと愛してくれるはずなんです。だから、いざこざなんてないですよ♪」
ハクがノリノリだな・・・・・・。信じている、信じていると言いながら、思いっきり釘を刺して来たな。しかもこのエルダーの人にも釘を刺して来た。
確かにハクと出会ってから数名・・・・・・いや、10数名の婚約者は増やしました。ただあくまで俺が増やそう増やそうとして増やした訳ではないのは理解して頂きたい。
もちろん嫌々などではない。相手に好きになってもらい、俺も好きになったから婚約者になってもらっている。何なら美しい人、可憐な人、可愛い人ばかりが俺の傍に集まってくれていて、滅茶苦茶幸せだ。出来る事ならもっともっと増やしてみたい!!
「ハガネ・・・・・・さん」
ヤバい。ハクの顔が真面に見てはいけない事になっている。冗談に決まっているじゃないですか、ハクさん。だからそんな顔で上から見下ろさないで。
膝枕をしてもらっている関係上、エルダーさんにはハクの顔は見えていない。
「あ~・・・ははっ。いえ、噂を色々聞いていたからどんな人かと思っていたんですけど、実際に見てみたら決断力に優れていて、この人数を動かせる様な盟主様だからやっぱり凄いなと。何人もいるなら、1人位婚約者が増えたりしても別に良いのかなぁとか思っていたんですけど・・・・・・これは簡単には入り込めないですねぇ。でも、実際に貴方はどうです?自分で言うのもなんだけど、私は容姿は良い方だと思ってますけどよ。貴方も格好良いし、お似合いじゃない?ねぇ、どうです?」
このエルダーさんも諦める訳じゃないんだ。確かに綺麗な人だけど、好きじゃない人とまで婚約したりしないからね。でも綺麗な人だなぁ。しかもまだそんなに長い時間を一緒に過ごした訳でもないのに、俺に対してかなり好意的だと感じられる。
これは真剣に検討して・・・・・・痛い痛いっ!エルダーさんと反対側にある俺の耳が千切れるっ!!
ハクが耳を抓ってきている。しかも、先ほどよりも顔が怖くなってきている。
俺はまだ何にも返事をしていないし、表情に出したつもりもないのだが、相変わらず俺の考えがバレている様だった。流石一番付き合いが長い人だ。
「いえいえ。過分な評価をして頂き大変嬉しく思いますが、私には既に好意をもってくれている方が何人もおりますので。さらに貴方の様な美しい方まで―――男冥利に尽きますね」
痛いっ!耳が無くなる・・・・・・・このままではまずい。
オルフェンにぶん殴られても立ち上がったけど、耳をつねられるのは普通に痛い。
「尽きますが・・・・・・生憎とそこ迄の甲斐性がないもので。私はハク達を繋ぎとめるだけで、精一杯ですよ。ご覧の様にユイもいますし」
良かった、耳が千切れずに済んだ様だ。ハクの力が急に抜け、何故かユイもくっついてきた。
「モテモテですねぇ。分かりました、この場は諦めます。でも!無事に討伐したら、もう一度ちゃんとアタックさせて貰いますからねっ!」
非常に美しいエルフのお姉さんが、太陽の様な笑顔で嬉しい事を言ってくれた。
町へ戻ったら、一度食事へお誘いしよ・・・・・・痛っ!
こんなところで遊んでいる場合じゃない。しっかりと朝に向けて休まねば。
俺は会話を終わらせて、ハクの膝の上で眠りについた。決してハクが怖くて夢へ逃げた訳ではない。
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