希望的観測
俺は何度期待を裏切られた事だろう。
この世界に転生?してから裏切られたのは何度目だろうか。人は希望を持つからこそ生きていける。それは正しい。だが、希望を持つから絶望もするのだ。そんな事は前世から知っている事だ。
この世界は前世などより厳しく、こちらにとって都合が良かった事などほぼ経験をしていない。
それでもこうやってまた希望を持ち、そうして裏切られてしまう。
何度も甘い考えを持つ俺が悪いのか。この優しくない世界が悪いのか。
何を言ったところで目の前の現実は変わらない。俺の目の前ではセラが浮遊サーベルに腹部を貫かれ、地面へ伏しているのが現実だ。
それをカバーしようとジャンヌとスカーレットが順番にUDを使いセラの前に立ちふさがるが、浮遊サーベルが二人の装備を削っていく。
UDを使用していた為、2人は致命傷になっていないが、装備品は耐えられなかった様だ。
それとUDすら使用していなかったセラは鎧の背中までサーベルが貫通し、周囲へ血をまき散らしながら倒れてしまった。
「セラっ!!!GBH!レナ、頼む!」
「はい!リストアライフ!」
「リリ!全員スタンアタックをフルで使って!ワニさん、弓PTもスタンショットを!!リカ、WIZPTでゾンビを全部お願い!補助2PTでWIZのゾンビ狩りの補助を!ミラとリースはセラを連れて離れて!」
ギンナルが指示を飛ばしミラとリースがセラを連れてザケンから離れる。ザケンにはスタンアタックとスタンショットが降り注ぐ。セラは生きているのか?GBHを直ぐに使ったから死んでないと信じたい。
少し離れた位置に移動したミラから声が上がる。
「まだセラは生きてるっ!うちのPTでヒールを!」
良かった・・・・・・何とか即死は免れて生き延びてくれた。ただ安心出来る様な状況ではない。
そろそろ盾2人のUDも切れザケンが動き出す。スタン系のスキルを永遠使える訳じゃないからな。
今何があったんだ・・・・・・セラは順調に受けていたのだが、スタンが切れたタイミングでザケンの浮遊サーベルが動き出し、セラを貫く為に放たれたのは分かった。だが、セラはしっかり盾で受け流した。
その後にまさかの2本目の浮遊サーベルが攻撃を開始していた。1本目を捌いたばかりでセラの防御に隙が出来、そのタイミングで身体の中心を2本目が貫いていた。今まではそんな攻撃はしてこなかったのだが、ザケンのHPを削る事が出来たからこそ、行動パターンが変わったのかもしれない。
こうなっては陽が落ちる前に討伐など出来るのだろうか。ザケンのHPがちゃんと削れているのは間違いないのだろうが、半分以下になって今の行動パターンに・・・・・・と考えるのは都合が良すぎるだろう。
6本中の2本を同時使用してきたのなら、考えたくはないがいずれは6本同時使用もあり得るだろう。
何となくではあるのだが、2割のHPが削れて2本になり、3割で3本・・・・・・6割で6本同時使用じゃないだろうか。
そう考えたら6本同時使用されてから、残りの4割ものHPを削らなければならない。
ワニがUEを使った状態であれば6本同時使用されたとしても、もしからしたら回避が出来るかもしれない。だが、UEの効果時間である1分の間に残り6割を削り切れるとは思えない。
やはりこのメンバーの中で一番受けが上手いセラに前線へ立ってもらい、残りを削り切るしかない。
だがそのセラがもはや戦線復帰出来るのかわからない。明日の朝日が昇る迄はどちらにせよ隠れてなければならなくなるので、その時間があればもしかしたら復帰が出来るか。
何にせよ今の状況ですぐに逃げ出すのは難しい。出来る限りのダメージを与えやれるところまではやってみよう。
「ジャンヌ!メイン盾を頼む。スカーレットは直ぐにジャンヌと交代できる様に少し距離を置いて、魔力を全快にしておいてくれ」
「任せて!!」
不安そうな顔をしてはいるが、ジャンヌは元気いっぱい返事を返してくれる。俺とレナが絶対に死なせないから、もう少しだけ頼んだぞ。
「周辺魔物狩りPTは通常通りゾンビ排除を。補助2PTは引き続きフォローを。WIZPTは魔力が1/3になる迄は攻撃を維持。弓PTはスタンショットを控えて攻撃を続行。スタンアタックPTは引き続きザケンへのスタンを!」
セラ1人がやられたから全滅しました。では話にならない。ジャンヌとスカーレットだってそこら辺の盾職とは比べられない位は強いのだ。今いる人員で何とかするのがレイドボス討伐の主催をさせてもらってる俺の仕事だ。
諦めるのはまだ早い。
「残されてる時間は少ない。このエンチャントが切れる頃には坂道へ避難する。ただ、その前に出来れば倒しきってしまいたい。皆、もう少し付き合ってくれ!」
「おぉ!!」
再びザケンへの激しい攻撃が始まる。大した時間もかからずに・・・・・・ザケンの浮遊サーベルが3本同時に動く様になってしまった。想像はしていたが、やはりHPが削られていくと攻撃の仕様が変わるのだろう。
ジャンヌにはあらかじめその可能性を伝えていたので、今現状でも何とか2本の足で立ちザケンの攻撃を受け続けてくれている。
ただ、分かっていたから全部を受け流せるものでもない。浮遊サーベルに腕や足を貫かれる様になってしまった。
貫かれるたびにレナと俺からのヒールが飛ぶので、物理的に身体に空いた穴は直ぐに塞がっているが、痛みが無い訳じゃないし、血も戻らない。それでもジャンヌは耐えてくれている。
少しすると4本の浮遊サーベルが攻撃を始めた。そうなってくるともはやジャンヌでも受けられていない。
浮遊サーベルが攻撃を行い突き刺す度に、ジャンヌの身体から血が噴き出し貫通したサーベルが背後にいる俺に見える。
本来ならスカーレットは何かあった時にすぐにタゲをとり、そのタイミングで坂道へ避難をしたかったのだが、そんな事も言ってられない。このままではジャンヌが死んでしまう。
「スカーレット、補助を頼む!」
「任された!」
スカーレットがジャンヌと並び立つ。浮遊サーベルの数発を受け持ってくれる事により、ジャンヌの被弾が明らかに減った。だが、レナと俺の消費魔力は跳ね上がった。これじゃ直ぐに魔力が枯れる。
「弓PTのリチャージと周辺魔物狩りPTのリチャージを俺達に回してくれ。2PTは済まないが通常攻撃メインで残り魔力が3割を切らない様に調整を」
このままじゃジリ貧だ。まだ日は落ちていない。この後はどうするべきなんだ。




