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回避職の強さと脆さ

 事前にセラにヘイトを弱めてもらい、ワニに攻撃をしてもらって多分今ヘイト値としてはフラットな状態になったはずだ。


 ワニがブロー系のスキルを使い、セラからタゲを奪った時点で攻撃を控え、ミラとリースにもブロー系のスキルを使ってもらい、この3人のヘイト値をほぼほぼ同じにしてもらった。


 数値としてはっきり目に見えている訳じゃないけど、今までの経験からそれを読み違える人はここにはいない。


 こうしてヘイト値を前衛・・・・・・特に回避職でフラットにしておくことが回避盾としては安全策になる。



 重装備の盾職であれば、受け損なって数発喰らったところで戦闘不能にはなり辛い。


 オルフェンやザケン相手であればその限りではなく、盾職といえど一撃死は十分にあり得るのでセラ達の様に、遥かに格上相手でも戦える技量は必要になってくるが。



 話が少しそれてしまったが、回避職の場合は普通の魔物ですら1~2発良いのをもらったら、戦闘不能になってしまう。俺程ではないにせよ、軽装備も紙防御だからなぁ。


 ザケンの攻撃だと盾職ですら一撃死があり得るのに、回避職で一撃を喰らう訳にはいかない。万が一受けたとしても他の人がすぐにタゲを引き受けなければならない。


 その時に盾職であればヘイトがあるので比較的速やかにタゲを奪えるが、回避職にはそういったスキルはない。普段であればタゲを外すスキルを使えば良い話だが、受けが続けられない状況でタゲ外しのトリック等のスキルを使う余裕があるかは微妙なところだ。



 なので、回避受けを行うのであれば複数名で行うのが望ましい。万が一メインの回避受けが被弾した場合、多少の攻撃でヘイトを稼ぎすぐにタゲを奪える様に攻撃を調整して行う必要がある。


 被弾した回避受けから直ぐにタゲを奪い、出来ればその場から離れ安全な状況をつくり、そこへヒーラーを呼んで回復してもらうのがベターだろう。


 ヘイトをかけてない状況でヒーラーが何も考えずにヒールをかけると魔物はヒーラーに来てしまう。そうなったら普通は即死し、PTは壊滅・・・・・・と、最悪の流れになってしまうからな。



 ただ、そこは頭のおかしいヒーラーとの定評がある俺の場合、タゲがこっちに来ても数分は死なずに受けられると信じたい。ので、回避受けが被弾した場合は即ヒールを行い、何ならタゲを俺に移してしまう予定だ。


 死ぬと迷惑がかかるので、積極的にタゲを奪う様な事はしない様にするけどね。


 前置きが長くなったけど、メイン受けをワニ、サブ受けをミラとリースに任せ、ヒーラーを俺が行い時間を稼いでみようと思う。





 ワニがまずはヘイトを稼ぎ、ザケンのサーベル攻撃を避ける。


 上段から振り下ろされたそれを、ワニは表情一つ変えずに足を僅かに引き身体を傾ける事で避ける。降り下ろしたサーベルを跳ね上げ横なぎに放ってくるが、またしても僅かに身体を引き最低限の動きで再度避ける。


 その後もその光景が続いて行く。ワニが攻撃を喰らわない限り、ワニが攻撃を入れない限りミラとリースも手出しはしない。3人とも回避受けとして成り立つ位には熟練の回避職だが、やはりワニが頭1つ分抜けているのは確かだ。出来ればこのままワニ1人で受け、捌き続けてくれているのが理想かな。



 そうなってくれれば俺もヒールをしたりしないのでタゲは跳ねず、他の皆もゆっくりと休憩が出来るだろう。


 ワニが早々と攻撃を喰らう所は想像がつかないからな。とは言え、背後に浮遊するサーベルまでも使ってきたら流石に分からないが。


 それと・・・当たり前だがゾンビと木人形が湧いてくる。やっぱり甘くないな。




 雑魚狩りメンバーを少し残して入れ替え、また休憩を回す。って作戦を最初は立てていたんだが、やはり俺達以外は一斉に休憩してもらう事にした。そちらの方がザケンを引き付ける時間は短くなる。


 じゃあ、ゾンビとかはどうするのか。簡単だ。湧いてきた付近からザケンを連れて離れ、魔物の索敵範囲から外れれば良いんだ。こちらは4人しかないので、そういった移動もスムーズに行う事が出来る。少人数の強みだな。


 まぁ周辺の魔物が近寄って来だしたら、1匹ずつ個別に倒すしかないけど。

  


 移動しながらワニは攻撃を避けつつ、たまに短剣でも攻撃を入れてくれている。その攻撃で討伐しようって事ではなく、ずっと避け続けているだけだと、ザケンが別の人を狙う可能性もあるからな。


 その調整を上手い事やってくれているのだ。だが、そろそろ魔物の密度が上がって来た。



 湧いてきた雑魚を放置している為、段々と居場所がなくなって来る。これはそろそろ排除する方向に動かないとダメだな。


 木人形は1人では手に余る場合が予測されるので、ゾンビをちまちま減らしていこう。


 この3人なら1対1でやられる事はないだろうが、油断は出来ない。攻撃が単調とは言え力と耐久力はこちらの数倍だ。事故が起きない様にミラとリースの2人で1匹ずつ倒してもらい、その間俺はどちらにもヒールがかけられる場所にいよう。



「ミラ、リース。あちらの方向にいるゾンビ3匹を頼んだ。ワニは徐々にそちらへ移動してくれ」



 2人は指示を伝えるや否や迷いも見せずにゾンビへ駆けていく。信頼されているのを実感すると共に、その信頼を裏切る事が無い様に、発言には注意していこう。


 ゾンビを駆除してくれている間も、ワニはザケンの攻撃を捌き続けている。ただ、最初の頃は完全に避けていたのだが、段々と短剣も使いながらの捌きになってきた。


 ザケンがワニの動きを学習し、より避け辛い方向にサーベルを振るう様になった事が分かる。



 短剣で真面に受けたとしても、ザケンとの単純な力の差は歴然としている為、絶対に受ける事は出来ない。早くゾンビを排除して、動ける範囲を広めてもらわないとだな。


 


 それは俺達だけでザケンを引き付け、10分程が経っただろうか。その頃にはザケンに明確な変化が現れた。


 ただ避け辛い方向を斬りつけてくるだけではなく、まさかのフェイント迄使う様になってきた。


 それを初見で避けるワニも流石だが、今のは危なかった。ずっと避け続けている為、流石にワニも体力が落ちてきている。これはそろそろまずいかもしれない。



 

 そんな中、恐れていた事が始まった。ザケンの背後に浮遊しているサーベルが動き出したのだ。


 刃先が全てザケンの前方に向き、ワニに対して狙いを定めている。それだけで危険な空気を感じ取ったのか、ワニから声がかかる。



「ハガネさん、UE(アルティメットイベイジョン)を使いますよ」



 ワニはザケンを見据えたままそう言い、緊張感を高めていった。

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