スキルと魔力
「ジャンヌとスカーレットもシールドスタンだけじゃなく、攻撃の捌きも頼む」
不利な状況という事もあり、徐々にセラが攻撃を受ける場面が増えてきた。流石に全てを受け流して躱すのは難しい。動きやすい場所ならまだしも足元には海水があり、ダンジョン内は薄暗い。
あの状況下で高所から降り注いでくる剣戟を耐え忍んでいるだけでも大したものだ。
2人に攻撃の捌きの手伝いを頼んだが、ザケンと対峙しているのはセラだけではない。すぐ傍にはスタンアタック部隊の1~2名が常にいる。そこにジャンヌとスカーレットまで混ざったら動き辛くて仕方が無い。
手伝うのも常にではなく、セラが後退して不利な体勢になったら前に出て変わり受けたり、振り下ろしてくるサーベルが良くない角度でセラに迫って来る時に前に出て盾で受けてもらっている。
だが、根本的に力はザケンの方が強いので、真面に受けると身体が少し浮き、後方に飛ばされてしまっている。
それでも連携がしっかりとれている為、補助の役割はこなしてくれているな。
まだミラとリースは戻ってこない。このまま3人で耐え忍んでもらうのか、少しでも移動しつつ攻撃を受ける回数を減らすのか迷うところだ。
「はーさん、付近のゾンビと木人形は狩り終わったよ!!」
「分かった!WIZPTは魔力半分ぐらい迄ザケンに全力攻撃を。弓PTはスタンショットをメインにしつつ、通常攻撃でザケンにダメージを蓄積させてくれ。補助PT2はその間湧いてきた雑魚を頼んだ」
ディムから良いタイミングで声がかかり、WIZPTと弓PTがザケンへの攻撃へ移行する。
攻撃は最大の防御と言うが、少しでもダメージを与えて防がせ、ザケンの攻撃の手を緩めたい。
しかし、魔法と矢を受けスタンアタックを喰らいながらも、動ける様になれば即座にセラへ攻撃を放ってくる。
本当にちゃんとHPを削る事が出来ているのか不安になるな。でも無敵の魔物など居る訳がないし、もしそうであったなら、人類は全滅してしまう。
そう思うのだが、この激しい攻撃がスタン系のスキル以外、ほぼ効いている様には見えない。
WIZの攻撃魔法は、俺の全力で行って欲しいと伝えた指示通り、かなり激しいものになっている。
にも拘わらず、ザケンに怯む様な様子は見受けられない。味方と違って海面から浮いている為、遠距離の良い的なのだが、本当に効いているのかこれは。
レナとエルダーのヒーラー2人で、3人の盾職にヒールをしているが、受けるだけでも相当な不可がかかっていると思われる為、ヒールの回数も増えて来る。このままだとヒーラーの魔力が先に枯れてしまいそうだ。
他のPTにいるヒーラーは基本的にリチャージへ魔力をまわしている。アタッカーの魔力が尽きたら、攻撃魔法とスタン系のスキルが止まってしまう。魔力の回復を続けざるを得ない。
もちろんいざという時はヒールを手伝ってもらうが、今は攻撃を優先し少しでもザケンにダメージを蓄積させておきたい。
「WIZPT攻撃一旦中止して!少し距離をおいて魔力の回復を行って!」
WIZPTのリーダーであるリカからメンバーへ指示が飛ぶ。あっと言う間にWIZPTは半分近くの魔力を使い、ザケンへの攻撃を仕掛けてくれた。ヒーラーには少しでも休憩してもらい、リチャージの頻度を減らしヒールの魔力を残してもらう。
「スタンアタックPTもスキル使用者は入れ替わるです!下がって通常攻撃で周辺の魔物を攻撃し、数を減らしてくださいです!」
スタンアタックPTも魔力が減った者はリリの指示で後方へ下がり、ただ座っているだけではなく周辺魔物狩りPTが居ない分、補助PT2と協力し雑魚を倒してくれている。
「弓PTはスキル使用を一旦控えて、一定の距離を保ち休憩しつつザケンへ攻撃してください」
ワニの指示で弓PTが通常攻撃のみに切り替わる。周辺魔物もしっかり狩ってくれており、討伐PT全体としては大助かりである。
「ハガネっ!場所の移動指示はまだか!」
セラからの切羽詰まった様な声が届いてきた。火を見るよりも明らかではあるのだが、スタン系のスキルが止まると、ザケンの攻撃が激しくなってしまう。
3人でザケンの攻撃を受けていると言っても、基本的にはセラがずっと攻撃を受け続けている。
流石に装備品の鎧にも、目立つような傷がふえており予備があるとはいえ好ましくない。今回はスミス職もいるので、セラが落ち着いてきたら少し後方へ下がってもらい、そちらで装備品の修繕も行ってもらわないとだ。
壊れる度に破棄をして着替えていたのでは、防具がいくつあっても足りない。物資は有限ですからね。
「補助PT2!まだゾンビと木人形が湧いてきた!弓PTと協力し、雑魚の魔物駆除を優先でお願いします!」
周辺に出てくるゾンビと木人形の湧くペースが、想定よりも早く周辺魔物狩りPTと補助PT1が居ない現状では、殲滅がおいついていない。このままだとセラ達がザケンの攻撃を捌きつつ、雑魚の攻撃まで気にしないといけなくなってしまう。
そんな事になればザケンの攻撃がセラ達にクリティカルヒットしてしまう場面が出てくるだろう。
その時は直ぐに立て直せず、受け手がいなくなったザケンが縦横無尽に動き、俺を含めた紙防御の人員がどんどん数をへらしてしまう。
そうならない為にも、雑魚は優先的に狩ってもらい少しでも盾職達を楽にしたい。
「ハガネさん、私の魔力が3割を切ります。少しエルダーさんに任せて休憩します。すみませんが、補助をお願いしますね」
こちらも想定より早くレナの魔力が減ってしまった。エルダー1人ではヒールが追いつかなくなってしまうので、俺も指揮をしつつ回復要員として仕事をする。
ヒールが必要なのはセラだけではなく、受けを手伝ってくれている2人にもだ。
上手く分散してくれているので、ヒールが間に合わない事は今の所ないが、このままじゃジリ貧だ。
「セラ、少しずつでいいから、ミラとリースが向かった方向へザケンを誘導してくれ。全体的に奥に移動しつつ、現状の維持を!」
ミラ達が良い場所を見つけて戻って来た時に、少しでも条件のいい場所へ早く移動出来る様に、今の内から全体を動かしておく。
「分かった!移動しつつになるとどうしても被弾も増えるから、回復は頼んだ!」
セラが攻撃を捌きつつじわじわと奥へ移動していく。流石に慣れているだけあって、無駄が少ないな。
このまま大人しく討伐されてくれたら楽で嬉しいのだが、そんな事を考えても仕方が無いと思いつつセラへのヒールを継続した。




