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ザケンは何処へ

 ボロボロにされて逃げ帰ってから、何とかこの場に戻って来れた。


 準備や討伐メンバー募集で時間はかかったが、俺達が出てきて以来ここには誰も入ってないはずなので、ザケンの被害は増えていないだろう。


 海を渡って町に来たという報告も受けていないので、それを信じればザケンはここにまだいるはずだ。



 ザケンがこのダンジョン内部で他の魔物等にやられるとは思えないし、万が一そんな事があったら即撤退はやむなしだ。


 なので、そろそろ遭遇してもおかしくはないのだが、中に入って1日進み野営をし、さらに半日進んでいるが、まだ遭遇していない。

 


 この洞窟の最奥は何処まで進めば辿り着けるんだか・・・。このままだと帰りが遅くなってしまう。予備日は設けているし、食料や消耗品等も多めに持ち込んでいるからその点は大丈夫だが、緊張した状態を2日以上も保てていられるだろうか。


 普段の戦闘なら兎も角、明らかに自分よりも強く死ぬ可能性が高いレイドボス討伐だ。緊張の度合いも非常に強いものになっている。


 だから正直出て来るなら早くして欲しい。出て来ないなら、レアドロップだけ大量に落として死んでいて欲しい。そんな訳はないけども。



 さらに半日進み、既に2日経っている。以前と違ってここまでの道のりは粗方覚えていた為、進みが早かった。交代で見張りをたてて、仮眠をとり少しだけでも緊張をほぐしている。


 それはまだ良いのだが、以前ザケンと戦った場所はくるぶし位まで海水が溜まっていたが、今この辺りはひざ下ぐらい迄海水がある。


 高々数センチの差だが、俺の様に近接戦をする人間には非常に辛い。



 もちろん物理近接アタッカーのミラ達など、影響が多き過ぎる。ワニ達弓PTでも、固定砲台になってその場から動かずに弓を放つならまだしも、通常では距離を一定に保ち逃げながら撃つのが正解だ。


 神回避のワニといっても、流石にこの状況では厳しいものがあるだろう。武神なら上半身の回避行動だけで何とかしそうで怖いが。



 ゾンビや木人形・・・と言うか、ここで木人形が出てくると親は兎も角、俺達の太もも位の身長の子は水をかき分けてこっちへ向かってくる。


 良くあれで前が見えて、動きが遅くなってるとは言え肩口迄海水があるのに、戦闘が出来るものだと感心する。ゾンビはほぼ影響なく動いてくるし、そもそものパワーが違うからなのかねぇ。



 ザケンは水面から少し浮いて動いていたのだが、あれはどういう原理なのだろう。


 地面からくるぶしまでの高さまでだけ常に浮いているとかなら、この状況が少しは向こうにも影響が出てくれると思う。移動する時に無音ではなく海水をかき分ける音がするとか。


 ただ、単純に地面と認識される場所より数センチ常に浮いているって事だと、こちらだけが圧倒的に不利になり、ただでさえザケンの方が圧倒的に強いのに厳しい状況に追い込まれてしまう。



 相手に影響が多少出るとしても、この場で戦うのは無しだな。まぁ無しと言ったところで、ザケンがじゃあ場所を移すか。などと、男気が溢れるセリフを言ってくれる事はないだろう。


 最初の作戦通り、メイン盾PTが引き受けている間に、周辺魔物狩りPTと補助PT1が良い場所を探してくれる事を願っておこう。



 

 そのまま休憩が終わり中へ入って3日目。ひざ下以上に海水が増える事はなかったが、減る事もない。


 早く普通の足場の場所に出たいのだが、多少下っている感覚があるので水が減る事はないかな・・・。



 休憩していた場所の様に、少しは海水から露出している岩場もあるのだが、あんな狭い所で動かずにザケンの攻撃を受けるのは難しい。


 セラなら厳しい条件に楽しんで戦いそうだが、今回そんな余裕はないからな。この足場の悪い海水の中で戦う事を前提にしておくしかないか。




 足元が悪いとはいえ、先頭の2PTがゾンビと木人形を倒してくれているので、意外と良いペースで進めている。


 後方もスタンアタックPTと補助PT2が警戒、対応をしてくれているので今の所問題は起きていない。


 リリに溺れちゃわない?と聞いたら、そんなに背は低くないです!!と怒られた。問題と言えばそのぐらいだ。



 

 さらに半日ほど進むも、まだザケンの姿は見えない。


 ただ・・・魔物との遭遇頻度が非常に高くなってきた。早く進みたい事もあり、前方2PTだけではなく、ワニの弓PTにも殲滅を手伝ってもらっているぐらいだ。


 これはかなりザケンに近づいているんじゃないだろうか。


 足場は変わらず悪いまま。ミラとリースには遭遇してセラがヘイトを取ったら即先行して、少しでも良い場所を見つけてくれと伝えているが、中々難しいだろうな。



 探しに行くという事は、周辺魔物狩りPTと補助PT1の2PTだけで先に進む事になる為、雑魚の魔物を倒すだけでも一苦労だろう。中々進めない時はミラとリースの2名だけ先行するとは言っていたが、かなり危険だ。


 それでもあの2名はやってくれるとの事。このままこの様な場所で戦ったら、全滅の可能性が高くなってしまうから、俺も強くは止められなかった。


 誰も死なせたく無いと言っておきながら、女性2名だけで先行させるとは我ながら酷い話だ。


 万が一があった時は、あの世でブロー系の技でも甘んじて受けると伝えておいた。




 しかし出て来ないな・・・。さらに数時間進んでもザケンは出て来ない。


 もしかして、あの時期だけ出現し、他の時期には出て来ないとか?そんな話は何処からも出て来なかったけど、そもそも情報自体がほぼ皆無なのでそんな事があっても可笑しくはない。



 だけどこの世界に来て、そんなにこちらに都合がよく甘かった事はない。


 基本的に希望的観測は捨てるべきだと学んできた。


 緊張が続き、疲労が溜まり、もしかしたら戦わなくて・・・死ななくて済むんじゃないかと安堵したところでどうせ出てくるんでしょ。知っているんだよ、俺は。



 その度に死にかけ、と言うか実際死んでもいるけど、こちらに都合よくは中々いかない。


 多少なりとも足元の海水が減ったりとか、そういった都合の良い事は起きていない。ただ、永遠歩き魔物を倒し続けて、疲労が溜まってきているだけで明るい情報はない。


 そんなもんだろうよ。



 ただ、うちのクラン員は兎も角、冒険者ギルドや酒場で勧誘した人達はそろそろ限界かもしれない。


 いつまでたってもゾンビと木人形しか出て来ず、それを倒しながらバシャバシャと進むだけの時間。


 緊張感を保ち、集中するのもそろそろ限界と思われる。



「―――ハガネっ!!」



 その時ミラの叫び声が前方から聞こえた。普段の落ち着いた雰囲気とは異なる声だった。もはやその一言だけで十分だった。



「全員作戦通りに!セラ頼んだぞ!!」


「わかった!任せておけ!!」



 セラが猛然と前方へ駆け出す。それとは逆に先行していた周辺魔物狩りPTと補助PT1が、水音も気にせずわき目もふらずにこっちへ走ってくるのが分かる。



「ワニ、スタン準備!ギンナル前方へ!」



 さて・・・さんざん待たされたからな。お前が嫌になるまで付き合ってもらうからな、ザケン。

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