再び悪魔の島へ
討伐PTの編成、消耗品等の準備が終わり、ギルドマスターと近衛騎士団長に見送られてドール城下町を出発した。
盛大な見送りとは言えないが、王様以外の一番偉い人達に見送られる形となった。
この討伐を成功させて欲しいと言う気持ちが、ひしひしと伝わっていた。
別に討伐を成功させる事が出来るのは、この世界で俺だけだっ!とかは思っていない。だが、別のレイドボスとは言え討伐成功し、今やこの国で数少ない高レベルの冒険者を引き連れ討伐に赴くのだ。どうしたって期待を込めるだろう。
隣町の貴族であり、Aランク冒険者を呼んで費用をかけて準備し、全滅などされたらドール城下町の面目丸つぶれは間違いない。
実際狩場が1つ使えなくなっているだけでも、国にとっては損害だ。何とか討伐して欲しいのだろう。
万が一にも討伐失敗した場合だが、ザケンが悪魔の島から出て来なければそれでいい。ザイオース城下町以外の近隣国に声をかけ、恥を忍んで助けてもらえばいいだけだ。
もちろん費用がまた掛かり、国の運営としては厳しい状況になるだろうけど、放置は出来ないし。
最悪なのは討伐に行きザケンを刺激して、そのまま悪魔の島から出て来て、こちらの本土を荒らしまわる場合だ。
刺激をしなければ引きこもっていてくれると確約は出来ないが、出てきたら討伐失敗のせいと言われても仕方が無い。
本土にあんなのが出てきて、何の準備もしていない村や町を襲いだしたら・・・他の町が気が付かない内に、1つの集落はすぐ滅んでしまう。
この世界に遠距離で使える便利な通信手段など無い。1つの町が滅んでそれに国が気が付き、騎士団を派遣したとしても、偶々ザケンに追いつけるとは限らない。
全国民に注意喚起をするにしても、国王から町長等に一斉に手紙を配る事になるだろうが、届くのには時間がかかる。
そもそも手紙がちゃんと届く保証などないのだ。商人や冒険者に配達を頼むのだが、街道には魔物も盗賊も出る。大事な手紙とかは関係なく、襲われて死んでしまう。
もちろんそんな事は国も重々承知の上なので、こういった事態になった場合は同じ文章を同じ場所へ3~5通は出すだろう。それが届いて町等が防衛を固めて・・・間に合う町もあるだろう。
ただ、元々囲いと門がしっかりとある城下町ならまだしも、俺の最初にいた始まりの村など背の低い柵しかなかったからな。
あんなものじゃ足止めにすらならない。そういった村は滅んでしまう事になる。
村や町の距離は離れている為、ザケンに滅ぼされたとしても誰も気が付けない。気が付くとしたら、誰かが訪ねた時ぐらいだ。ひっそりと誰にも知られず全滅するなど考えたくもない。
そういった事にならない様に、俺の様な冒険者達がいるのだ。まだ会った事はないが他にもAランク冒険者がいるはずだ。俺達が死んだとしても、その人達が今回の件を糧に討伐してくれると信じよう。
死ぬ気などさらさらないが、絶対勝って生き延びれると過信はとても出来ない。
今後の為にも補助PTには情報を残してもらい、最悪逃げ出す様に伝えて持ち帰ってもらおう。
ドール城下町を立ちドール港へ向かう。
毎度出てきていた盗賊達も、流石に襲ってこないな。この人数、このメンツに向かってくる様な気概のある盗賊がいるならば、是非ザケン討伐に勧誘したいぐらいだ。
まぁ盗賊狩りもしたし、ほとんど周辺には残ってないと思うけど。
討伐PTは、最高で14人乗りぐらいの馬車に各11~13名ずつ程乗り込み5台。それと消耗品や食料品を積んだ馬車が3台、合計で8台もの馬車が連なって街道を進んでいる。
消耗品や食料品を積んでいる馬車は、帰りにはザケンから出たレアドロップ品を山ほど積んで帰る予定だ。
討伐が成功するのかと、レアドロップがちゃんと出るのか。それはまだわからないけどね。
途中の野営地で一泊する為に、馬車を止める。ただ人数が多すぎて、大分広がって陣取っているので全員の顔が見える事はない。
出来る限りコミュニケーションをとり、後々の連携に繋げていきたい。信頼関係を少しでもつくれれば、ギリギリの状況になった時、お互いを助ける事も出来るだろうから。
思い思いの場所で食事をしている集団へ、一声ずつかけていく。
少なくてもこの討伐へ参加してもらった事の感謝と、必ず全員で生きて帰りましょうと言うのを伝えて周り、自分のクランメンバーの場所へ戻ってきた。
「ハガネさん、お疲れ様です。明日からも大変ですし、もうお休みになった方がいいんじゃ?」
「ありがとう、ハク。ただもうちょっと起きていたいかな。少し皆とも話したいし」
ハクの気遣いがありがたい。だけど、明日全員生き残れるか分からない以上、少し皆と話をしたいと思っていた。
焚火を囲みながら、少しだけ皆と話す事にした。
「皆、いつもありがとう。今回の件も非常に危険な事を理解した上で参加をしてくれ、感謝しているよ。俺にどこまでの事が出来るのかは分からないけど、皆を死なせたくない。全体への指揮もそうだけど、ヒーラーとして皆が死ぬことがない様に、しっかりと癒していくね」
大した事も言えず、皆に感謝だけを伝えるとセラが反応した。
「安心しろハガネ。私がザケンを引き付ける。私が死なない様にハガネが癒す。それで誰も死なない。私が万が一戦線を離脱しても、ジャンヌとスカーレットが居る。死ぬことなど無い」
セラが頼もしい事を言ってくれる。オルフェンの時の事があるので、絶対ヘイトを取り続けられるとはセラも考えてはいないだろうけど、誰も死なせない。と言う気持ちは誰よりも強いのかもしれない。
「セラさんが守ってくれて、はーさんが癒してくれるなら安心だね♪私もWIZPTを守りつつ、頑張って踊っちゃうよ!」
「ディムに守ってもらえるなら、私達は安心してザケンに魔法を撃ち込めるね、ラナ」
「うむ。我の魔法を全力で打ち込めば、ザケンなど直ぐに倒せる。全力でやらせてもらおう」
リカとラナも心強い言葉をくれるが、ザケンがそんなに簡単に倒せない事はラナが一番知っている。直接戦って、手も足も出ずに命からがら逃げのびたのだから。
それでも心を折らずにこの討伐へ参加してくれている。
「私がドライアードツールを決めて、リリがスタンアタックを決めちゃえば大丈夫だよ!」
「ですです!ギンナルさんはあのザケンにドライアードツールを決めた実績があるです!私のスタンアタックもバッチリ決まったです!」
ラナに同じく直接ザケンと対峙した2人も負けじとアピールしてくる。
うちの女性陣は本当に強いな。




