後悔と反省
「ハガネさん、死んだらダメだよっ!!グレーターバトルヒール!」
「これからザケン討伐へ行くんでしょ!グレーターヒール!」
はっ・・・レナとユイの声に反応し目を開けると、俺に2人からヒールがかけられていた。なんで俺は回復魔法をしてもらってるんだ?
そういえば、身体中が痛い気がする・・・。気がするんじゃなくて、全身ズタボロじゃないか。
装備品ではなく一般の服とはいえ、何があったらこんなにボロボロに・・・。
「はーさん、はーさん!しっかりして・・・。なんで酒場に行って、瀕死になっちゃってるの!」
ディムの声も聞こえたかと思ったら、膝枕をされていた。とても素敵な感触である。頭が幸せだ。
「ディム・・・こんなに人の多いところで積極的だね。とっても嬉しいよ」
「こんなに人の多いところで、何で戦ってたのっ!皆もどうしちゃったの!」
ディムが混乱しているが、俺も非常に混乱している・・・。何してたんだっけかな。
・・・そうか。ドライアドツールをハクとギンナルから受けて、身動き取れないしリリがスタンアタックを使って、木の椅子の足?棒状のもので振りかぶっていたっけかな。
うん、リリのスタンアタックが身動きが取れない俺に命中してさらに動けなくなり、その後リカの雷魔法が直撃したんだ。
幸いな事に魔法攻撃のクリティカルは出ず、意識が飛びそうになっていたけど何とか耐えられたんだ。魔法防御力が高くて良かったなと・・・。
でもその後にラナの炎魔法が飛んできて、それも見事に命中。しかも顔に。火傷の痛みを味わっていると、リリに同じく木の棒を使って、ジャンヌがパワーストライクを俺の脳天へぶち込んできたんだ。
やりすぎじゃない?良く生きているな、俺も。
その後にドライアドツールが切れ、スタンアタックの効果から解放されて逃げようとしたんだ。
そうしたら待ち構えていた戦乙女のPTと女性9名PTが行く手を遮り、集団で襲われたんだ・・・。
しっかりと思い出したけど、地獄じゃないか。
そんな事を思い返していると、ハクがディムのそばへ来て事情を説明していた。
それを聞いたディムはスッと立ち上がり、当然俺の頭は膝の上から外れ床へ後頭部を打ち付ける。
「はーさん・・・またそんな事をしてたんだね。ダンスオブウォーリア、ダンスオブフューリ、ダンスオブミスティック、ダンスオブコンセントレーション!」
何故かディムは物理攻撃力向上、物理攻撃速度向上、魔法攻撃力向上、魔法詠唱速度向上の踊りを踊る。
待て待て、流石にこの状況でそんな物騒な踊りを踊らないでほしい。いつもの優しいディムはどこへいったのだ。
「いいね、ディム!魔力を全力で高めて、しっかりと決めてみせるよ!はーさんには天罰が必要だからねっ!」
リカがどんどん魔力を高めていく。その横ではラナが無言でリカに同じく魔力を高めていた。
ファイター系の戦乙女達は出来る自己エンチャントをかけ、力を強めていっている。
あれ、これ積んでないかな。遠くの方でセラが物理攻撃のクリティカル率を上げる、ソングオブハンターを歌っているのが聞こえてきている。
折角レナとユイに回復してもらったのに、これじゃ一瞬で死ぬ事になりそうだ。
俺はまだこんなところで死ぬ訳にはいかない!ザケン討伐をしなくてはなんだ!
「皆、落ち着いてくれ。これからレイドボス討伐に行くのに、曲りなりにも主催者を討ち取ってどうするんだ!心を1つにして、強敵に立ち向かっていこうじゃないか!!」
熱い気持ちで皆に向けて叫んでみるも、大声で叫んでいるのに何故か誰もが反応をしてくれていない。
この距離で声が届いていないはずはないんだが・・・ダメかな。
「ハガネ・・・どうせなら1対1で戦って、ちゃんと討ち取りたかったが、どうやらそれは叶わないみたいだな。本意ではないが、このままいかせてもらおう」
セラがどこぞの武士みたいに、俺に対して怖い事を言ってくる。
「姫様、好機です。一気にいきましょう!!」
スカーレットがラナを煽る様な事を言いながら、足を開き近くで身構えていた。
うむ・・・この人生も悪くなかった。記憶は薄れてしまったが、この世界に転生した事は今でも覚えている。大好きな女性達に囲まれて過ごし、最後の時もこうして囲まれている。いい人生だったと言ってもいいんじゃないだろうか。
そういえば、何度か死んでも最寄りの教会で生き返ったが、血盟員にやられた時もちゃんと生き返れるのだろうか。
実際どうなるのかはこの後で分かりそうだが、そうなった時は皆の記憶はどうなるんだろう。
普通に考えて死んだはずの俺が、最寄りの教会からひょっこり出てきたどう思うんだか。
俺は生き残ることを再度諦め、再び目を閉じようとした。
その時、止めてくれる常識人の声が聞こえてきた。
「はい、皆さん!ここ迄にしてくださいねっ!!これ以上続けるのなら、もうヒールなんてかけてあげませんからね!」
「そうですよ。ハガネさんが悪かったのは十二分に伝わりましたけど、今これ以上戦うのはダメですからね」
レナとユイから俺が生き残れるかもしれない、素晴らしい意見が出てきた。いいぞ、もっと言うんだ!
「ハガネさん・・・私だって怒ってない訳じゃないですからね。その辺の女性をナンパした事は万死にあたいしますから。後で覚えておいてくださいね」
「そうだよ、ハガネさん。私達だって怒っているんです。今はこの場を収めるけども、後で・・・お話合いをしましょうね」
再びレナとユイから暖かい言葉をかけられるが、これは心から怒っている時の声だな・・・。
別にナンパをしたのではなく、戦力増強のためだけに・・・戦力増強の為だけにここで声をかけただけなのに、とても納得してくれそうにはなかった。
でも、2人の呼びかけは周囲の人たちを落ち着かせる事には成功し、改めて感謝する。
常日頃色々な事を考えて、慎重な行動をとっていたはずだが、何処からどうにもならなくなってしまったのやら・・・。
何はともあれ、ハク達の怒りが少しずつだけど収まっていく事は、俺にとって非常に重要な案件である。皆ありがとう!
でも—――まさかここまでやられるとは思ってもみなかった。皆の俺に対する好感度は非常に高いと思って良さそうだ。
今後は同じことを起こさない様に、十分過ぎる程には配慮をしっかりとしていこう。
生き延びれた幸せを噛みしめなら、俺は1人で心に誓っていた。




