風評被害
まずはドワっ娘が1名参加意思を示してくれた。非常にありがたい。こういった勧誘方法だと、誰か1人でも声を上げてくれれば、その後も自然と上手くいくもんだ。
最初の1人が一番声を上げ辛いからな。1人が行くと言ってくれれば、他の人はその流れにのる事が出来る。このまま何名か確保したいな。
「今、1名の新たなメンバーが加わりました!勇敢なこちらの方に、是非拍手をお願い致します!さぁ、我こそはという方、どんどんこちらへ来てください!」
拍手をされたドワっ子は非常に恥ずかしそうではあるが、少し嬉しそうでもある。
この人数の中で注目され、拍手をされる・・・褒められるという機会はそこまであるものではない。
ドワっ娘の少し誇らしげな顔を周りの人は見ている。まるで今名乗り出る事が正しい行いで、そうするべきだと思ってしまう事だと感じる人もいるのではないだろうか。
別に俺はだます気はないが、参加する事に二の足を踏んでいる人の背中を少し押したいだけだ。
レベル、装備が足りておらず自分に自信がない人、大人数で行う狩りに参加した事が無い人、参加してみたいとは思っても、中々自ら申し込む事が出来ない人など、そういった方々がこの場でなら申し込めるかもしれない。
なので俺はその空気をつくっただけで、決して怪しい勧誘の場を作った訳じゃない。
「あのー・・・Aランク冒険者のハガネさんですよね。ハガネさんのクランに入ると自動的に婚約者になって、子供が出来るというのは本当ですか?私はまだ冒険を続けていきたいので、子供が出来てしまうのは困るのですが、レイドボス討伐には行ってみたいんです。何とかレイドボス討伐が終わる迄は、子供は待ってもらえますか?」
見目麗しいエルフの女性が近づいてきたかと思ったら、とんでも無い事を言ってきた。
なんだそれは。そんなクラン有る訳がないでしょ。もしかして、またそんな噂が流れているのかな・・・。そういうのもあって、参加者が増えないんじゃないかな。
でもそれなら、今既に参加している女性というのは・・・その話を聞いた上で来たのなら危険極まりない。
俺は嬉しいかもだが、そんな話がもし婚約者達に伝わったら・・・殺される。
「私もその話は聞きました。友人が既に討伐PTに参加しているのですが、親にも伝えた上で参加したって言ってましたよ。親としては伯爵の嫁になり、孫まで生まれてくるなら言う事はないって」
可愛らしいヒューマンメイジの方も、恐ろしい事を言う。既に討伐メンバーには、その話を聞いたうえで入ってしまっている人が居るのか・・・。
親も止めてあげて!孫見たさに自分の娘を送り込むもんじゃないぞ。
「いえ・・・確かにうちのクランには私の婚約者達が居ますが、クラメン全員が婚約者ではないですよ。それに今回のレイドボス討伐は、クラメンに参加させてとかではないので。あくまでザケンを倒す為に集まって頂く形になりますので。誤解がなくなると非常に助かります」
これは完全に風評被害じゃないだろうか。確かにうちのクランの女性の大多数が婚約者にはなっているが、全員ではない。それに誰とも子供など出来てはいない。
根も葉もない噂・・・とまでは否定が出来ないところではあるが、噂の全て真実ではないので否定させてもらおう。
「でもこの間もハーレムメンバーを侍らせて、酒場を独占していたよな」
「見た見た。羨ましいとは思ったが、公衆の面前であれはちょっとなぁ・・・」
男2人がろくでもない事を言う。確かに事実ではあるのだが、今は黙っていて欲しい。
「子供が出来ないなら私も参加してみたいです!」
「それなら私も!」
後数名が集まらなかったのは俺のせいですか・・・。それは何と言うか申し訳御座いません・・・。
「私は結婚出来るなら参加したいと思ったんですけど、希望すれば良いんですか?」
「私もそっちを希望するよ。強くて金を持っていて悪くない話だし」
ダークエルフのお姉さん2人がとんでもない事を言う。別にここは婚活パーティー会場じゃないから、そういったのはご遠慮願いたい。
そう思ってると2人が近づいてきて、俺の両サイドへくっついてくる。
ほう・・・非常に積極的な方々で、思わず笑顔になっちゃうね。
「女が多いなら俺達にもそういう機会が出来るかもしれねぇなぁ。いっちょ参加してみるか」
「確かにそれもいいな。俺ももう25だし、ここらで嫁探しでもするかね」
だから婚活パーティーじゃないって。女性が沢山参加しているなら、確かに男性陣にもチャンスは増えると思うが、命がかかっている婚活パーティーなど俺は嫌だぞ。
「因みに・・・今晩とかは空いてます?出来れば討伐に行く前に、そういった関係になってしまいたいんですけど」
「それは良いね。私もそうしよう」
ヒューマンメイジとヒューマンファイターの人達ものってきてしまった。飲み過ぎじゃないですかね。
いつの間にか俺の周りには女性達がべったりとくっついており、幸せ空間になっている。
なんだなんだ。急なモテ機の到来か!そんな事をしている場合じゃないけど、今までこんな事は経験していない。
クラメンを増やす良い機会と思って、少しこの後お話合いでも・・・・・・。
そんなろくでもない事を考えていると、男性陣たちが目を反らしだした。
なんだ?急に。先ほど迄は俺も誰かに声をかけようかなとか言っていたのに、急に下を向きだしたな。
ん・・・・・・両サイドにお姉さんたちがくっついていて、幸せ空間だったのに急に寒気がしだしたぞ。
「ハガネさん・・・・・・何をしているんですか」
「少し目を離すとすぐこれなんだから・・・はーさん覚悟は出来ているよね」
「ハガネさんはモテモテです!婚約者さんがいっぱい増えちゃっているです!」
「ハガネさんね、私もちょっとフォロー出来ないからね。と言うか、ハクさんを手伝うからね」
ハク、リカ、リリミア、ギンナルが後ろから声をかけてきた。寒気の正体を理解する事が出来たが、理解したくはなかった。
「別にこの人は貴方達だけのものじゃないでしょ?だって嬉しそうにしていたし」
「そうだよねぇ、結構乗り気だったよね?」
俺の近くにいた女性が事実無根ではないものの、言って欲しくない事を口にする。
やめてやめて。確かに喜んでしまっていたけど、今それを言わないで。
「ミラ、ブロー系スキルの準備して」
「リース・・・かなり怖い顔になっているけど、大丈夫なの?ま、私も手伝うよ」
リースが・・・怖いっ!あれ、いつもの美しい顔はどこいったの!感情が抜け落ちて、声も平坦なんですけど。ミラもちょっと怒っているな・・・珍しい気がするけど当然なのか。
「ふむ・・・地獄を見せてやれ」
「ハッ!ラナ姫様!」
ラナが物騒な事を言い、スカーレットが良い返事をしている。
その後も次々と婚約者達が周囲を取り囲んでいき、遠巻きに見ていた男たちは外へ出て行った。
俺も外へ出たい所だが、討伐参加希望の女性達に掴まれており、逃げ出す事は叶わない。
生き残れたら、ザケン討伐へ行こう。今日はここ迄だ・・・。




