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対人戦は楽しいな

「何でハガネさんは私達を外へ連れ出したんです?今日はお休みって言っていたのに、急に摸擬戦ですか」


「私は別に構わないよ。摸擬戦はいつやっても良いしね!」



 ジャンヌが訝しげに思いながらもついて来てくれる。ミラは別に構わない様だ。



「はーさん、何で私まで?全然良いけど、摸擬戦に誘うなんて珍しいね」


「私も普段呼ばれる事なんてないから、なんか変な感じ。ハクさん、セラさん、ワニさんとお出かけしていたんじゃないの?」


 一緒にディムとユイも探して呼んできた。どうせならフルエンチャント+歌と踊りも入れてもらいたい。



「ちょっと面白い人がいてね。是非今後の為にもジャンヌとミラには戦って欲しくてさ」



 町から出て、先ほどの森迄戻ってきた。ハク、セラ、ワニはのんびりと休憩していた。



「じゃあハクとユイで2人にエンチャントを。終わったらセラとディムはフルで歌踊りをお願い」


「え、誰もいないけど、誰と戦うの?ハガネさん達とじゃないんだ」


「誰でもいいよ~。バフ系を全てかけるって事はそうとう強い相手なんだね。ちょっと楽しみになってきた!」


「2人とも最初から全力でやってみて。遠慮はいらないから」



 程なくして2人に全てのエンチャントが入り、セラとディムも歌踊りを入れてくれた。


 さぁ・・・これならあの武神を驚かす事も出来るんじゃないか?あっちはエンチャントが何も無い訳だし。ヘイストだけだって、あると無いとじゃ雲泥の差だ。



 2人は道の真ん中で身構えると、上から音も無く人影が落ちてきた。


 まずはミラを狙った様だが、ミラは直ぐに反応し前方へ飛び込む。



「え・・・・・・あり得ない位ヤバい殺気なんだけど。本気でいかせてもらうよ。ジャンヌ、合わせて!」


「はい!!」



 一瞬で相手の実力を感じ取り、ミラ達の油断はなくなった。あの人わざと殺気出して反応させてるな。



 ジャンヌが盾を構えて前へ出て走り込み、その後ろをミラが追従する。


 相手から見たら、ミラはほぼ見えてない様な状況だ。ジャンヌがシールドスタンを使い制圧しようとする。


 

 だが、勢いよく放ったシールドスタンは、武神の前に突き出した手によりあっさり止められてしまう。分かりにくいがキッチリ見切って下がりつつ受けたのだろう。この距離で見ているから何とか分かるが、ジャンヌは何故衝撃もなく受けられたか分からないだろうな。


 ジャンヌが放つと同時にミラがジャンヌを飛び越え、空中から真下へ向かい短剣を放つ。


 見えない位置から飛び出して、死角の真上からの攻撃だ。しかもシールドスタンを受けたと同時位だったので、普通なら反応出来ずに喰らうと思う。普通ならね。



 と言うか・・・ミラさん、その攻撃が直撃していたら、クラメンの父親死んでいるからね?本気で行くとは言っていたが、遠慮が一切ないな。でも問題にもされてない様だ。



 真上から突き刺してきた短剣を僅かに身体の軸をずらすだけで、見もせずに躱してしまう。躱しながらシールドスタンを受けた逆手で短剣を持っているミラの手を掴みながら捻じり上げ、持っていたミラの短剣を背後から首元へあてがう。



「元気で思い切りの良い攻撃だ。でも、これでおしまい」



 ミラを無力化し、言葉をかける。今ので普通なら殺されている。それが分かったのかミラは動きを止めた。



 ただ、ジャンヌはシールドスタンを放った後、ミラの攻撃の結果を見る事なく盾を手放し、両手で剣を持ち捕まっているミラの脇腹をかすめる様に突きを放つ。


 ジャンヌ・・・それも普通死んじゃう様な攻撃だからね。うちの子達は普段の摸擬戦から俺やワニに対して容赦ないから、知らない人とやる時も遠慮がない。良い事ではあるのだが、物騒極まりないな。



 しかし見えてないはずだが、武神は先ほどと同じく身体を少しだけずらし苦も無く避けてしまった。


 ミラを手放し、全力で突いた勢いで重心が前方へ傾いたジャンヌの手を掴み、そのまま軽く投げ落としてしまった。


 地面へうつぶせに倒れ込んだ瞬間には、上から首元へミラの短剣を当てていた。



「気迫の籠った良い一撃だ。こちらのお嬢さんも良いね」



 そう言うと、スッと立ち上がりミラへ短剣を返す。この人どれだけ強いんだ・・・。


 

 身体的にももちろん強いのだろうが、フルエンチャントをしたジャンヌとミラをこれほどあっさり。しかも怪我もさせずに制圧するとは、どれほど差があるのだろう。



 最近2人はかなり強くなっている。経験の差もあり、まだ何とか俺が勝てているが正直俺との差はそこ迄はない。


 2人ともあっけにとられた表情をしており、周りで見ていたディムとユイもびっくりしている。



「はーさん、あの人は誰?あの2人があんなにあっさりやられるのを初めて見たんだけど」



 ディムの驚きももっともだ。俺だって驚いている。



「あの人はワニの父親だよ。噂に違わぬ強さで、俺とワニとセラもさっきあっさりとやられちゃったよ」


「え、3人も負けてるの!!そんな強い人がいるんだ。怪我はないの?」


「大丈夫だよ、ユイ。手加減されているからね・・・」



 情けない限りである。唯一怪我をした俺は、自爆だしな。ちょっと悔しいから、今一度挑戦させてもらおう。



「今一度、立ち合いをしてもらっても宜しいですか」


「もちろんだとも。その心意気や良し」



 俺はエンチャントは貰わず、素の状態で挑む事にした。多分身体能力だけ上げた所で話にならない。


 師匠と戦った時の事を思い出す。前世の記憶はどんどん無くなっていっているが、武術関連は何故か残っているんだよな。


 戦ったと言っても、こちらは本気で向こうは稽古をつけてくれていただけだけど。ついぞ勝てる事はなかったなぁ。



 そんな事を思い出しつつ、身体から余計な力を抜く。力んだ所で実力が遥かに上の相手に通用しないのを知っている。



 腰を少し落とし左手を前に構えて、右手は身体の近くに。構える事でこちらのする事を読まれてしまうので、本来なら自然体が良いとは思うのだがそれでは色々と追いつかないだろう。


 身構えると言う言葉の通り、何かあっても直ぐに効率良く動く為の構えだ。それをしても勝てる気はしないが。


 

 武神は自然体だ。まぁそうですよね。完全な格下相手に構えるメリットは無いだろう。



 それでも・・・試してみる価値はあると思う。



 今後も自分より強い相手と戦う事など、嫌と言う程あるはずだから。



「では・・・参ります」



 俺はすり足で徐々に間合いをつぶす為に前へ出た。

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