武神とはこういうものなのか
改めてセラを見ると、咳き込んでおり生きているのが確認出来る。
先ほど鎧の隙間から、短剣で腹部を刺されてなかったか?何故血も出ていないんだ。
ワニは、ワニはどうなった?先ほど投げ飛ばされたワニを見ると、木に寄りかかりながらいつもの曖昧な笑みを浮かべていた。思ったより元気そうである。
ハクを見れば困惑した様な表情でこちらを見ており、俺と目が合うと心配した表情に変わった。
そうか、俺だけ血だらけなのか。拘束を解く為地面に向かいオーラバーンを放ち、自分事吹き飛ばしたから仕方がないのだが、ああでもしないと抜けられなかった。
改めて襲い掛かってきた人物を見る。フードを目深に被りその表情は窺えない。というか、あの恰好では視界も悪く、接近戦を行うには大分不利だと思うが、俺とワニとセラを軽くあしらったのか。何者なんだ?
「いや~すまなかったね。思いの外、君たちが元気一杯だったから、こちらもつい力が入ってしまった」
そういうとフードを頭から外し、その顔が見える。
エルフだな。エルフの男だった。正確な年齢を判断するのは長寿のエルフだから難しいが、少なくてもワニやセラより大分年上だろう。人間でいえば40~50歳位に見えた。
中年と呼ばれる年齢のはずだが、おっさんという感じではなく、ナイスミドルと言う言葉がピッタリだ。
声の感じから全く敵意を感じないので、俺も警戒を解く。
「ええと・・・この襲撃にはどういった意図が?先ほど迄は凄い殺気を感じていましたが、今は全く感じられません。貴方が敵とは思えないのですが」
「それはこれから説明するよ。取り合えず、ご自分に回復魔法をかけては?」
そう言われたらあちこち痛くなってきた。自分でヒールをしようとしたら、駆け寄ってきたハクが俺にかけてくれた。
「ハガネさん、大丈夫ですか?もっとヒールしますか?」
「いや、大丈夫だよ。ありがとう、ハク。セラとワニにもかけてやってくれ」
そう伝えるとこちらへ来ていたセラとワニにもヒールをかける為、ハクはGHを唱えてくれた。俺にも一緒にかかった為、痛みがほぼなくなった。
「いや~死んだかと思ったぞ。刺されたのに何故か生きていた。私もまだまだだな。それにしてもハガネとワニが接近戦でやられるとは思ってもみなかった。そちらの御仁は何者なのだ?」
「こちらの方はPKでも盗賊でもないです。何をしているのですか・・・・・・父上」
えっ!ワニが父上って言ったぞ!それってワニの武術の師匠で、武神みたいな人かっ!!
そりゃあ俺もボロ負けするはずだ・・・。
「そういう事だ。息子から手紙は来るが、全然故郷へ帰って来ないからな。ちょっとこちら方面へ来る用事があり、ついでに息子の顔を見に来た訳だ」
「何故息子の顔を見に来て、その息子を放り投げているのでしょうか・・・。それと護衛やお供の馬車などはどちらに?」
何故に息子の顔を見に来てそのPTを全滅させているのか分からなかったので、ご本人に直接聞いてみた。
エルフの国はここからかなり遠いので、馬車や供回り、護衛など居るはずなのだがそんな気配は感じなかった。相当遠くにおいてきたのかな。
「お供とか馬車とかはいないよ。1人の方が気楽だし移動も早いからね。これでも若い頃は世界を見て回ったものだよ。君たちを攻撃したのは息子の手紙で色々と聞いていたからね。実際どうなのかなと思って、試させてもらったよ。息子の成長も気になったし。まぁ悪くはなかったかな。息子も殺気を感じ取った瞬間にはこちらの力量を感じ取り、姿を見る前からUEを使っていたから最低ラインには成長したかな。ハガネさんも実力はまだまだなれど、突然の出来事に対して適切な対処をしていたのと、仲間を絶対に守ると言う気概は良かった。そちらのエルフのお嬢さんは一太刀に全てをかけて斬りこんできたし、ヒューマンのお嬢さんも自分に出来る事を判断し常に身構えていたからね。レベル差を肌で感じ取りWSやドライアードツールを使ったりせず、仲間を信じて耐えていたからね。息子の仲間が良い人達で良かったよ」
なるほど・・・いや、なるほどなのか?言っている事は理解出来るが、だからと言って普通襲わないだろ。この人は武神とか呼ばれる前に、ただの戦闘狂じゃないのか。
「もちろんお嬢さん達を傷つける気はなかったし、この短剣も木だからね。男連中は別にちょっと位傷ついても良いだろうとは思ってたけど、まさか自分に魔法を撃って傷だらけになってでも立ち上がろうとするとは思ってなかったよ。悪かったね、ハガネさん。それと私にかすり傷とは言え与えるとはやるね!この数年は息子と手合わせをしていなかったし、久々に触れられてびっくりしたよ。2人とも中々やるねぇ」
やるねぇ。じゃないよ!ただお試しで遊びたかったのと、やっぱりただの戦闘狂じゃないか。
この親に何十年もしごかれたのなら、ワニがあそこ迄強くなってるのは分かる気がするなぁ・・・。
でもあれほど強いワニでさえ、この数年で成長出来てるって事はまだまだな俺ならば、もっと成長出来るはずだ。そう思って今後も精進していこう。
「理由はまぁ・・・分かりました。今日は皆休みの日なので、この後ワニと食事でもされますか?」
「ふむ、それも魅力的な提案だけど、ミラさん、ジャンヌさんって人もそちらのクランにはいるんだよね」
「はい、おりますが。何か御用がありますか?」
何故あの2人を?共通点と言えば対人戦が好きって事かと思うけど、何か関係でもあるのかな。
「じゃあ、もし良ければその2人も手合わせさせてくれないかい?もう国では私と手合わせしてくれる人が居なくてね。街道に出てくる盗賊やPKじゃ楽しくないし。あ、出来れば私の正体は内緒で頼むよ」
このおっさ・・・ワニの父親は当たり前の様に戦闘狂だな。普通に考えたらあの2人が勝つ事は難しいだろうけど、出来れば今後の為にも経験を積ませてあげたい。
2人の了承ももらわずに申し訳ないが、頼む事にしよう。
「分かりました。ではドール城下町にいるので、こちらに連れてきますね」
「悪いね。私はこの辺りにいるから、旨い事話してフルエンチャントで来てもらえる様にお願いするよ」
そうか・・・うちのクラメンは把握済か。きっと誰がどの程度腕前かも想像がついているのだろう。
でもフルエンチャントなら、ミラならあるいは一撃いけるんじゃないだろうか?セラはハクを守りながらだったし、攻め一辺倒ならば・・・。
少しワクワクしてしまっている自分の事を、やっぱり俺もおかしいなと思いながら町へ戻って呼んでくる事にした。
もし少しでも面白いと思って頂けたら、↓の☆をクリックしてもらえたら嬉しいです!
ブックマーク迄してもらえたら・・・幸せになります!




