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油断は禁物

 昨日あれだけ飲んでいた為、目覚めは当然宜しくなかった。頭はガンガンするし、普通に気持ち悪い。


 そんな具合だし、今日は1日休みの為ずっと寝ていても良いのだが、それではもったいない。

 

 折角だから何処かへ出かけたいし、ギルドへ顔を出して新しい情報が無いか聞いて来よう。ただギルドへ行く前に少し散歩でもしてくるかな。もうちょっとマシな状態になってから顔を出す事にしよう。



 1人で行くとまた怒られてしまうので、誰かいるかなと宿の食堂へ降りた所、ハク、セラ、それとワニがいた。


 ワニがイル達と一緒に居ないのは珍しいな。



「おはよう。今日は一緒じゃないんだ?」


「ええ。今日は3人で買い物に行ってくるとの事でした。あの3人が一緒にいるなら、安心出来ます」



 なるほど。女性だけでの買い物か。



「ハクとセラだけが一緒にいるのも久しぶりな気がする。良かった4人で散歩でもしないか」


「お、良いな!修行か!摸擬戦だな。今回こそは2人に勝ってみせるぞ!」


「いや、セラ・・・散歩だって言ってるでしょ」



 どこをどう聞いたら摸擬戦になるんだか。



「もちろん喜んでお供します。このメンバーで出かける事なんて・・・いつぶりでしょうね」



 ハクの言う通り、初期PTの頃ぶりだろうか。あの時はアリアもいたけどね・・・。厳密に言うとワニと別れてから、セラが仲間になってるのだが。



「よし、じゃあ町の外へ行こうか。ドール港以外の方面にはまだ行ってなかったし」



 そう伝えて身支度を整え、城下町の門をくぐって行った。



 まだ出た事の無い西の門を抜けると、草原の中に細い街道があり、その先は森になっていた。


 エルフであるセラとワニは森で育っているだろうし、散歩には悪くない。4人で道を進み森の中へ進む事にした。



「いや~久しぶりに森に入ると、やはり良いな!」


「そうですね。故郷を思い出します」



 やっぱりセラ、ワニは懐かしさもあり喜んでくれたみたいだ。



「私は森に入るとハガネさんと出会った時の事を思い出します。あの時はびっくりしましたけど・・・」


「ああ、あの時は助かったよ。ありがとうね、ハク」



 そう。俺が森でソロをして死にかけている時に、ハクに助けてもらっている。あの時は狩場も知らないし、まさかあんなに大量のゴブリンとオオカミが出てくるとは思ってなかったからな。懐かしい。



 暫し皆で他愛の無い話をしながら散歩をしていると、ワニが急に立ち止まった。



「ん、どうしたんだ、ワニ?」


「・・・・・・」



 顔つきが変わった。何だ、周りを見渡すが魔物や盗賊の類は見当たらない。



UE(アルティメットイベイジョン)!!」



 なっ!何があったのか分からないが、ワニがUEを使う状況なのか。かなりヤバいぞ。



「ハク!木を背にして、セラへフルエンチャ。セラはハクを守れ。UD(アルティメットディフェンス)を使う準備も!」



 2人とも何の事だが分からないままでも、しっかりと直ぐに動いてくれる。流石だな。


 俺も木を背にして、いつでも動ける様に身構える。



 ワニは街道のど真ん中で自然体だ。その時、上空から人影が落ちてきた。ローブを纏い、頭にはフードを目深にかぶっている為顔は見えないが、魔物ではなく人の様だ。


 その右手には短剣があり、ワニの首元を狙い落下しながら振り下ろしていた。



 ワニはそちらを見る事もなく、身体を少しずらして短剣を躱した。当然だ。UE中のワニに攻撃を当てるなど、どれだけ苦労する事か。


 その人影は短剣を躱された事を気にする様子も無く、地面に足がつくと同時に沈みこみ、今度は足を狙ってきた。当然の如くワニは片足を上げ避け、その足で蹴りに行く。


 これで終わったかと思いきや、人影は顔を狙った蹴りを軽く避け、軸足を刈りにいった。


 

 UEを使っているワニの軸足に、人影の蹴りが入る。ワニはバランスを崩して倒れそうになるが、片手をつき側転の要領で回る。が、地面に着いた手を逆足で刈り取られ、ワニは地面へ背をついた。


 すぐさま立ち上がろうとするも、人影の動きが早い。高い所から流れ落ちる水の様に、淀みなく余計な力みなくそうするのが当たり前かの様に動き続けている。


 短剣を顔に向かって振り下ろし、それをワニが頭をずらし避ける。ダメだ、見ている場合じゃない。



「セラ、そっちへ来ると思ったら、即UDだ。ハクは動くな!」



 まずいまずい。まさかUEを使ったワニを、ああも簡単に抑える事が出来る相手がいるなど想像していなかった。俺が助けに入ってもどうかと思うが、あのままではワニが殺される。



 俺はWS(ウィンドストライク)を放ち、人影はこちらを見もせず当然の様に避ける。もちろん俺もあの相手に当たるとは思ってない。僅かでも時間を稼ぎその間に距離をつぶす。


 ワニに馬乗りになりながらWSを避けたが、その隙にワニが下から抜け出し立ち上がる。



「UEの効果が切れました。ここからは2人でいきましょう」


「ああ」



 あれだけやられたのに冷静さを保っているのは流石だ。2対1とはなったが、どうにも勝てる気がしない。だが、負ける訳にはいかない。俺達の後ろにはハクとセラがいるのだ。


 浮足立った気持ちを落ち着かせる為に息吹を使う。何故か人影は攻めて来ず待ってくれている様にも感じる。



「いくぞっ!」



 人影が初めて言葉を発した。真正面から堂々と弓から放たれた矢の様な速さで、低い姿勢になり突っ込んでくる。


 俺とワニの間へわざわざ入って来て止まり、そこで殴りつけてくる。なぜ素手?



 考える間も無く俺は何とか攻撃を捌き反撃をするが、さらっと流されてしまう。単発では当たる気がしない為、俺は連撃を使う。



「おぉぉぉっ!!」



 出来る限り攻撃を途切れさせない様に放つが、特に問題は無いと言わんばかりに攻撃が受け流される。それだけでも驚きではあるのだが、ワニも同時に攻撃をしていてこれだ。こんな奴がいたのか。


 明らかに俺達よりも強い。が、強いから諦めるなんて選択肢はない。俺は出来る限りの技を使い、ワニの攻撃の合間を縫ってオーラバーンを放つも、手を反らされて外されてしまう。



「魔法を使うタイミングは悪くないが、隙が出来てるぞ」



 放った後の僅かな硬直時間に、的確に拳を捻じりこんできた。俺は水月に拳を受け、うずくまってしまう。そんなに力を入れた感じはしなかったが、何でこんなに威力が強いんだ。まるで前世の師匠の様だ。



 ただ、俺が攻撃を受けている間に、ワニが放った手刀が人影の顔をかすめる。


 フードで表情全ては見えないが、口元に笑みを浮かべたのが分かった。


 その時人物の周りに気が満ちる。これって・・・UEを使ったのか!



 その後のワニの攻撃はことごとく空を切り、攻撃の手を取られ木に向かいワニは投げつけられてしまう。


 ワニが接近戦で負けたっ!しかも2人がかりなのに。



 何とか立ち上がり、気持ちを入れ替える。



 こいつは死んでも殺す。


 で、なければハクとセラが死ぬ。




 ゆっくりとこちらへ向かってくる人影へ改めて対峙する。


 自然な動作でまた水月を狙ってくるが、避けも受けもしない。俺も同時にバラ手で目を狙う。



 俺の腹には深々と拳が刺さり、相手は目の下が少し赤くなったぐらいだ。相手は一歩分後ろへ下がる。


 初めて少し驚いた様な気配を感じた。息苦しいが膝をつく訳にいかない。俺はそのまま前に出る。



 ふらっと前方へ倒れ込み、胴回し回転蹴りを上から落とす。これが当たるとは思っていないので、相手が避けると同時に下になった手で足を掴む。


 が、掴もうとした迄は良いが、向こうから蹴りを顔に放ってくる。本来は足を刈る技なのだが、反応が早すぎる。足を掴もうとした逆手で蹴りを反らすも、肩口に当たり後方へ蹴り飛ばされる。



 

 今の攻防の間にUEは切れてくれた様だが、攻撃を当てられるものなのか。



 蹴り飛ばされたまま後方へ回転しすぐさま立ち上がり、反撃を―――思った時には既に背後にいた。



「そろそろ終わらせようか」



 声がすると同時に背後へ肩口から体当たりを行う。首元にいつの間にかあてがわれていた短剣を避けつつ攻撃をと思ったのだが、何故か脇腹へ短剣が突き刺さっていた。


 あの瞬間に持ち替えていたのか。俺は自ら刃に身体を入れてしまった。



「ハガネさんっ!!セラさんお願いっ!」


「おぉ!!」



 ダメだセラ。こちらへ来てはいけない。逃げろと声をかけたいが、声を出す事が出来ない。


 地面へ倒れ込んでいる時に駆け込んでくるセラが見える。


 セラは上段から本気の斬り込みを行うも素手で裁かれてしまい、同時に短剣が鎧の隙間から腹部へ刺さる。




 なんてことを・・・・・・・・・・・。



 俺は腹部を刺された事も忘れ、いつの間にか起き上がり人影へ駆け寄っていた。



 人影が虚を突かれたのか、一瞬だけ動きが止まる。懐へ入り込み、顔と下腹部を同時に狙い山突きを放つ。


 虚をつけたはずなのだが、片方ずつ捌かれて反らされ、そのまま手を掴まれ真下へ身体ごと落される。顔へ放つ為に手の中へ貯めた魔力で足へWSを撃つが、それすらも避けられ手を踏みつけ抑え込まれる。


 俺は肩を外し身体を少しずらし、外れた肩を使い逆立ち状態になり激痛に構わず蹴りを放つ。


 脇腹を少しかすめる事は出来たが、直撃させる事は叶わない。



 オーラバーンを地面に放ち、自分を吹き飛ばす。拘束から外れ立ち上がり、人影に向かい動き出す。もはや血だらけだがどうでも良い。こいつに一撃入れてハクを逃がす。



「待った、待った!そっちのお嬢さんは死んでない!これ以上はやめておきなさい」



 人影が言う様に、セラを見ると死んでしまった訳ではなかった。


 立ち上がってはいないが、血も出ていない。


 え、どういう事?

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