皆の考えを聞いてみる
一先ず聞いている限りでは討伐を行う方向で考えている人ばかりだった。人の事は言えないけど、皆命を惜しまないな・・・。ラナとスカーレット以外のメンバーはオルフェン討伐を経験しているし、怖さは重々承知していると思うのだが。
「そういえば・・・・・・ギルドの応接室で話した後に、また用事があってギルドへ行ったのですが、そこで興味深い話しを聞く事が出来ました。あ、1人で行くのは危ないと思ったので、ちゃんとハンナとジャンヌさんに着いて来てもらいましたので、ご安心を。それで・・・聞けた話しなのですが悪魔の島にいる船長の話しで、ザケンと言う名前だそうです。その昔悪魔の島を根城にしていた海賊団が居て、その首領の名前がザケンと言う人物だったとの事です。ギルドがハガネさんの話を聞いた後に、一生懸命文献をあさって漸く見つけた情報だってギルドマスターが話してくれました」
「ザケンね・・・覚えておこう。ありがとうね、レナ。因みにだけど魔物としての特性とか、弱点とかも聞いてたりするのかな?」
「いえ、残念ですが分かったのは名前だけと言ってました。今まで討伐した記録も遭遇した記録も発見は出来なかったそうで、もしかしたらここ最近になる迄は存在すらしてなかったんじゃないかって。何が原因かは分かりませんけど、レイドボスとして急遽現れ犠牲者を沢山生み出したみたいです」
なんてはた迷惑な。オルフェンもそうだけど、あんなに強い魔物が急に現れたりしたら、そりゃ犠牲者も大量に出る事になるだろう。どの冒険者も命は失いたくないから、適正狩場より少しレベルの低い狩場へ行くのが冒険者の常識になっている。
少し強い魔物と戦い、経験値や報酬が美味い!なんて言ってるのはうちのクラン位だろう。安全に狩れるはずの狩場で、けた違いに強い魔物が急に出てくるなんて厳しすぎる。
「私としてはドール城下町の人達には申し訳ないのですが、クランや参加者から犠牲者を出す位なら、討伐は控えるべきかと思います。ハンナはどう思う?」
「レナの言う事は分かるけど、ハガネさんなら何とかしちゃうんじゃないかなって。だから、ハガネさんがやる気ならそれに私は付き合うよ」
慎重なレナらしい回答だ。そもそも人を癒す事が仕事の聖職者であるビショップはこういうものだろう。レイドボスとタイマンはりたいビショップなど存在する訳がないのだ。ハンナは中立・・・かな。俺次第って事らしい。
「私は・・・レイドボスと戦う事になったら、どうしても色々思い出しちゃうなぁ・・・・・・。今回私はレイドボス―――ザケンに会ってないけど、胞子の海で最初に遭遇した時の恐怖を思い出すと積極的にはなれないかな」
「確かにあの時は、私とセラさんもUD使って何とか凌ごうとしたけれど、圧倒的に強かったから厳しかったな。生き残れたのはハガネさんとワニさんが引き付けてくれたからだと思ってるよ。でも・・・あんな思いをする人を、これ以上出したくないって気持ちもあるから討伐はしたいかな。悪魔の島を閉鎖しちゃえば関係ないかもだけど、ザケンがあの島から出て来ないなんて保障もないし」
ユイはやはりミイの事を思い出してしまった様だ。当たり前だよな・・・。唯一の肉親である姉を目の前で亡くしたのだ。忘れられる事ではないのは十分に理解出来る。
同じくオルフェンと相対して、盾役も出来る職業でありながら目の前で仲間を殺された恐怖は、何よりも大きい事だったのだろう。それでも他の被害者を出さない為に何とかしたいという気持ちは、ディムらしいとも思う。
「皆さんはどうですか?」
「はい、ワニ様。私達3人はワニ様と共に」
「イルの言う通りです」
「お供致します」
ワニがイル、ベーシュ、クロウに聞くと3人は当然の如くと答えた。あの3人はワニを好きなのもあるだろうけど、いつの間にか崇拝対象になってないか?まぁ愛の形は人それぞれだから良いけど、故郷に帰った時に婚約者のダークエルフとドワっ娘に何言われても知らんぞ。
冒険者になる事を許容したら3人も婚約者が増えて帰郷する訳だ。俺みたいに怒られれば良いんだ。いつもそういった面で俺にだけ町の人達含めて当たりが強いから、そろそろワニにも経験して欲しい。
「ワニはどうだ?今回はオルフェンの時みたいには大人数での討伐ともいかないし、あの狭い洞窟だから弓だけではなく短剣での戦いも増えると思う。さっきリースも言っていたけど、ワニなら避けられそうだから問題ないかもだけどね」
「いえいえ。ハガネさんがその目で捉えられない攻撃を、私が避ける事は・・・どうでしょうね。でも、きっとハガネさんも集中した時なら避けちゃうんじゃないですか?私は貴方と居れば、今までした事の無い経験が得られると思って冒険を共にしています。ですので、今回の件も私はもちろんご一緒させて頂きますよ」
いや~・・・ワニなら避けている気がするけどな。怖いもの知らずって訳じゃないのに、一緒に来てくれようとするのは純粋に喜ばしい事だ。結構長い付き合いになってきたけど、今後とも冒険を共にしたいものだな。
「はーさんはきっと倒したいと思ってるんだよね?赤の他人はどうでも良くて、身内だけ守れれば良いっていつも言ってるけど、きっともうドール城下町の人達や渡し船の人とか、助けたいって思っちゃってるんじゃない?私は正直レイドボス討伐とか興味ないし、ただ生活する為になら悪魔の島から離れた国の狩場に行けば良いと思ってるよ。でも、はーさんが行きたいって言えばここにいる全員は喜んで着いて行くんじゃないかな。もちろん私もね」
「その通りです!ハガネさんがやると言う事は出来ると言う事です!もちろんハガネさんは皆さんの考えを全部無視したりしないので、意思は尊重してくれますがきっとリカさんの言う様になるかなと思ってます。私は何処であろうと何であろうとハガネさんの隣にいます!」
ハク・・・俺に対しての考えと信頼度がやっぱりおかしいぞ・・・。まぁ気持ちはもちろん嬉しいから喜んではいるけども。俺が極悪人で悪さばっかりする様になったら、流石に止めてくれるかな。いや、ハクならそのまま行動を共にしそうで怖いな。ちゃんと真っ当に生きていこう。
リカは現実的でもあるけれど、俺の事を変わらず尊重してくれているな。言ってる事もその通りだし。いつもは軽い感じなのに、たまにこうやって真面目な事を言われるとドキっとするな。
皆の意見は出尽くした。後は俺が決めて、冒険者ギルドへ伝えるだけだ。




