休む間もなく報告会
あれから船に乗り、全員でドール城下町へ戻る事にした。船に乗ったところ船長(魔物ではない)に俺達が生きていた事を大分喜ばれた。僅かな時間しか接してなかったのに、随分と好意的に思ってくれていたんだな。
悪魔の島に狩りへ向かう冒険者が居なくなっている状況で、その原因を取り除けるかも知れない冒険者だから重宝されているのかな?このまま狩りに行く人が居なくなったら、この渡し舟の人達は職を失う事になってしまう。それは避けたいところなのだろう。
上手くすれば俺達が狩りに行けなくなっている現状を打破して、また船に乗る冒険者が増えればこの人達は助かるだろうなぁ。悪い人達ではないので、出来れば協力をしたいところだがあいつを倒せるものなのか・・・。
船を降りドール港からドール城下町迄の道のりは、今までの事が嘘だったかのように一度も襲われず町へ戻る事が出来た。女性ばかりとはいえ俺たちのクランが総勢19名、そこに助けに来てくれた冒険者と城の兵士までいる団体だから、流石に盗賊達も襲ってこなかった様だ。
それに最初に悪魔の島へ行く時に大分倒したし、ハク達が往復する時にはPKPTも倒しているから流石に簡単に襲える相手ではないって事を理解してくれたかな。賢明な判断だと思う。
ドール城下町へ戻り助けに来てくれた冒険者と兵士にお礼を告げ、そのまま冒険者ギルドへ向かう事にした。町中でまた襲われても面倒なので、PTは分けずに全員で町中を歩いた。ここでもやはり誰にも襲われずに済み、すぐにギルドへ到着出来た。
ギルドへ到着すると、事務の得意そうな眼鏡兄さんが出迎えてくれた。30代中頃ぐらいかな?顔は若いが頭を見ると白髪が混じっている。大分苦労しているのかねぇ。もしかしたら、ここ最近の悪魔の島での件が影響している可能性が高そうだな。
「おかえりなさい、ドール城下町ギルドへ。ギルドマスターである私も心からお待ちしておりました。今回調査依頼を受けて頂いた悪魔の島の件では、タマ伯爵に大変苦労をおかけし申し訳御座いません。調査の話は一度軽くそちらにいらっしゃるレナさんから聞いてはおりますが、改めて伺わせて頂いて宜しいでしょうか。全員は入れませんが応接室の準備をしてありますので、そちらに来て頂けると助かります。お待ちの方は、併設の酒場で休憩なさってください。費用はギルドが負担致しますので」
おぉ・・・随分と丁寧な出迎えと良い待遇での受け入れだな。途中で報告をしてくれていたのは、やはりレナだったか。そのお陰もあるのか、ギルドマスターが非常に低姿勢で接してくる。まだこういった対応には慣れていないが、一応伯爵なんだし多少は慣れていかないとだ。
聞けば応接室には4~5名は入れるとの事なので、ギルドマスターと話す場に誰を連れて行こうかな。
今までであれば、誰か行きたい人~?と聞いたりしていたのだが、基本そんな事をすれば揉める。セラやミラ辺りは隙あらば摸擬戦を行おうとするので、全体に確認するのはやめておこう。俺が勝手に決めた時の方が揉め事は少ない。何故かうちのクランは民主主義ではないのだ。
じゃあ俺の絶対王政かと言えばそれも違う。どう考えても何かあった時は、女性陣の方が圧倒的に強い。何故かそういった時には普段は絶対王政みたいなのに、俺の人権は何処かへ消し飛んでいる。ただ説教されるとかだけならまだしも、実際に俺の命の危険まであるのでとても笑えない状況になる。
と、言う理由がある為、俺が勝手にメンバーを決めてしまおう。
ギルド系の事ならまず元職員である、皆が憧れる冒険者ギルド受付嬢だったレナとハンナ。こういった交渉事や大人な対応に向いているギンナル。まぁこの3人が居れば良いかな?とは思う。ただ、適材適所とは言え、またハクを連れていかないなんて選択は俺には出来ない。
別にギンナルが嫌いとかはではなく、ハクはギンナルの事が好きではあるのだが、同じ職業のプロフィットとして片方しか俺が連れて行かないと、自分の存在を物凄く否定し落ち込んでしまうのが、先日分かった事だ。その為、交渉事が得意な訳ではないがハクも連れて行こう。応接室に入れる人数的には丁度いいから問題ないだろう。
「ハク、レナ、ハンナ、ギンナルは一緒に応接室へ来てくれるかな。他の皆は疲れているだろうし、酒場でゆっくりしていてくれ。決して・・・・・・揉め事を起こしたりしない様にね」
俺はセラ、ミラ、ジャンヌを順番に見て釘を刺して置く事を忘れない。勿論絡まれたら我慢などせず殺ってしまえば良いとは思っている。ただ、わざわざこちら側から絡んだりするのは、今は控えて欲しいのが本音だ。正直まだ体調が宜しくなっていない。
「流石に場はわきまえているから安心して話をしてきてくれ」
「そう・・・?じゃあ安心して行ってくるよ。ワニ頼むね」
「ええ、分かりました」
ワニが居ればまず負ける事はないが、実際乱闘でも始まったら皆が危なくならない限り、離れた所で苦笑いしてそうだが、頼りにはしているよ。ちゃんと諫めてくれるともっと嬉しいけども・・・。
「すみません、マスター。お待たせしました。悪魔の島での事をご報告致します」
「畏まりました。では2Fへ。君たちも来てくれ」
近くに居た受付嬢2人も誘い、皆で2Fへ上がっていく。そうか・・・ギルドマスターになれば受付嬢と仲良くなり放題か。異世界物の定番であるギルドの受付嬢。うちのクランにも幸いな事に2人いるが、別にもっと居ても良いよな。ギルドの顔である存在だけに、見目麗しいのは間違いない。
そんな不穏な事を考えていたら、目の前を歩いていたハクが急に立ち止まりこちらへ振り向いた。
「ハガネさん・・・・・・・・・ちょっとお話する為に、別の部屋を借りますか」
「いえ、ハクさん、とんでも御座いません。報告の義務を果たしに行きましょう。仕事中ですから、余計な事は考えずに行きましょう。そうしましょう」
何故こういった事がすぐばれるのか・・・。ハクの目のハイライトが消え、微笑?を浮かべて抑揚のない声で恐ろしい事を告げて来る。今は絶対に別室で2人きりにはなりたくない。少し斬られる位なら、自分でヒールも出来るが、この調子だと身体を貫かれてオーラバーンをぶち込まれるか、ドライアードツールを喰らい、遠距離から永遠にWSを撃ち込まれる未来しか見えない。
俺の事を信頼してくれているのは分かるけど、もはや俺が死なないと思っているのか最近は愛情表現が大分過激になってきている。今は十分満ち足りているので遠慮させて頂きます。
さ、早いところ応接室へ入って、皆でお喋りしようかな。




