孤独な闘いの終わり
あれからずっと戦い続けている。正確には次の魔物が現れる迄、僅かながらに休憩している時間はあるもののヒールは全く追いついていない。殲滅速度を上げる為にも魔力を回復させたらDUを使う様にしている為、自分へのヒールが出来ない状況だ。
毎回現れるゾンビが1匹以上で、素手だけで倒すのには時間が掛かり過ぎてしまう。俺の持っていた唯一の武器である杖はとっくにゾンビにへし折られ、今や水の底で砕け散っている。受け流せていれば折れる事も無いのだろうが、どんどん身体がきつくなってきた為、ただ受け止める事も増えてしまった。
力の差が激しいので受け止める度に壁へ吹っ飛ばされていたけど、直撃を受けるよりはましだろう。ミスリルの杖なのでそんな簡単に折れたりするものではないが、馬鹿力の木人形達が包丁で何度も斬りつけてくるのが良くなかったんだろうな。また町へ帰れたら購入しなきゃだ。
一度など木人形家族に思いっきり足を切られ切断されるところだった。皮一枚でも繋がってくれていて良かったのと、1家族の最後の一匹にやられてその後暫く魔物が出て来なかったから魔力を回復する事が出来、GHを使えたから良かったがもう少しで足を失うところだった。多分そうなった時はその後の戦闘で死んでいるだろうから、足が無くなった事など気にも出来ないだろうけど。
また暫く間が空いて、瞑想する時間が出来た。ただ、この状態を誰かが通りがかって見つけたら、死体だと思うだろうな。装備はボロボロで血だらけだし、表情に覇気などないし。下手したらゾンビになる前に・・・と、止めを刺されるかもしれん。
大分長く休めているので、一度魔力を全快させよう。何度も魔力枯渇の状態になり気持ち悪くてしょうがない。完全に回復したらヒールをして、一度身体を海水で良いから拭っておこう。
いつの間にか意識を失っていた。良くこんな状況で寝れるものだと自分でも感心する。実際は寝ていたというより、ほぼ気絶かな。こんなに血を流しておきながら、意識を戻せただけでも大したものだと自分を褒めたい。襲われてなくて良かった。
どの位の時間が経ったのかはっきりとはしないが、どうやら魔力はほぼ全快になった様だ。これで傷とかは全部治せるか。身体の痛みが消えるだけでも、多少は動きが改善すると思う。まだ耐え忍ばないとダメそうだし、何とか引き続きやってみよう。
俺は立ち上がり・・・・・・足元がふらつき海水へダイブした。全く受け身も取れずに顔面から突っ込んだものだから、口と鼻の中にもろに海水が入り顔を上げてから暫く咳き込んでいた。
やっぱりもはや限界が近いのか。いや、限界などとうに超えているのかな。ワニ達が来るまで耐え忍ぶと決めたが、後何匹ゾンビを倒せるのか。木人形の家族が来た時に対処が出来るのか不安になる。
アンデットであるゾンビだけなら攻撃魔法が使えるけど、木人形を素手で倒せる程動けそうにはないな。動けそうになくてもやらなければ仲間が死ぬので、もちろんやりますけども。
再度転びたくないので、今度は壁に寄りかかりながら立ち上がる。
壁を伝いながら、袋小路入口の方へ歩き出す。これじゃまともに戦えそうにないけど、後は気合と根性だな。
この選択しが正しいのか間違っているのか、後々誰かが判断してくれるだろう。
入口付近迄たどり着き、呼吸を整える。もはやヒールせずに攻撃魔法に魔力を回そう。既に1匹ではないゾンビの足音が聞こえてきている。今は皆で生き残る事だけを考えよう。
おぉ・・・ゾンビの姿が見えてきたと思ったら・・・5匹もいるじゃないですか。この厳しい世界とはいえ、ここ迄頑張った分のご褒美でも欲しい位なのだけどそんなものはなさそうだな。俺が死ぬ前にあいつらを全滅させるイメージが湧かないな。
あ、そういえば魔力が回復してるんだった。ゾンビだけならあの魔法で何とか回避出来るかな?あいつらはウロウロしているから、最悪またすぐ襲われる可能性もあるけど試してみよう。
壁を伝いながら、入口外で待ち受ける。魔力を循環させ、ゾンビ共が近くに来たタイミングで頭上へ放出する。
「レクイエム!」
別に叫ばなくても良いんだけど、気持ちの問題だ。5匹同時にかかってくれないと、この後困るからな。その気合が功を奏したのか、余計な声を上げたせいなのか4匹は反転し来た道を戻っていった。4匹も効いてくれて良かった!けど、1匹残ったか・・・。
ごっそり魔力を使い、魔法を使った甲斐はあったが、1匹は何とかするしかない。リンクされても困るので、俺はずりずりと袋小路の方へ後退する。
結構急いで下がってるつもりだったが、ゾンビの方が俺より足が速いな。もはや目と鼻の先にゾンビがいる。この位離れていれば、さっきの奴らとはリンクしないはずだ。ここで迎え撃とう。
ふらつく足元を誤魔化しながら、半身に構える。
ゾンビが思いっきり振りかぶって、頭上から腕を振り下ろしてくる。半歩前に出て相手の横へ踏み込み、上段受けをし相手の腕を滑らす様に受け流し、逆手で側方から腹部へ腰を落とし正拳突きを放つ。良い感じで入ってくれたものの、相手はゾンビだ。これだけで腹を抱えて蹲ってくれたりはしない。
受け流した腕を使い顎へ突き上げる様に掌底を打つ。そのまま身体を捻じりつつ、膝裏へ下段蹴りを入れる。ゾンビが背後へ倒れ込んでいるので、足を開き、再度腰を落として顔面へ鉄槌を落とす。これで何とか死んでくれると嬉しいのだが。
しかしそうも上手くはいかなかった。身体がボロボロの為、攻撃が弱かったのかゾンビはきっちり元気だった。仰向けに海水へ沈んだまま、俺の右足を掴んできた。足首が万力で締めあげれられている様な力で掴まれ、海水へ引きずり込まれる。
後頭部を守り海水へ叩きつけられたが、まだ意識ははっきりしている。取り合えず、ゾンビの手をはがさなければ。そう思ったのだが、ゾンビは俺の足を掴んだまま立ち上がった。
逆さまの状態で何をされるかは想像したくないな。急いで詠唱を始めて身体を起こし、顔へ向けWSを放つ。本当ならDUを使いたいが、ちょっと近すぎる。俺迄巻き込まれてしまう。俺はまだ幸いな事にアンデットではない為、100%のダメージは受けないだろうけど被害が0にはならない。
けん制して手を離させれば良いだけだしな。
しかし、あり得ない事が起きた。いや、別に絶対無いという事ではないが、このタイミングのこの距離でゾンビがWSを頭を傾け避けたのだ。噓でしょ、今までそんな事する奴なんていなかったのに!
驚きと共に身体が少し硬直してしまった。このタイミングを狙っていたかの様に、ゾンビは掴んだ腕を振り上げた。当然掴まれてる俺は、上方へ振り上げられる。そのまま力の限り地面へ叩きつけられた。受け身も何もなく喰らったせいで、肺の中の空気が全て出て行ってしまう。その上海水が口へ入ってきて非常に苦しい。後、痛い。
苦しむ俺を待ってはくれず、今度は横へ向けて腕をふりぬく。壁が近くなかったら良かったんだけど、すぐそこは壁だった。当然の如く再度叩きつけられる。今度はクッションになる海水もなく、岩壁へ直接だ。後頭部も打ち付けてしまい、温かいものが後頭部から出てきている。
振り回すのが気に入ったのか、今度は逆側の壁に向けて放り投げられた。人間をここ迄軽々とぶん投げるとは凄い力だな。関心しながらも、少しでも衝撃を減らす為身体を丸めておく。まぁ気休めだったが。
岩壁にぶつかりそのまま地面へ落下。正直もう起き上がりたくないぐらいだが、死にたくもないので起き上がるとゾンビに腹部を蹴り飛ばされ、入口の方へすっ飛んでいった。
手をつき身体を起こし、むせ返っていると口から大量の血が出てくる。内臓の何処かもやられたな。流石に厳しい状況に追い込まれてしまったと反省するが、もはや立ち上がれる状況では無くなってしまった。




