孤独な闘い
どうにか木人形1家族を倒し終える事が出来た。出来たと言って良いだろうか・・・・・・左手は手首と肘の辺りで折れ、右足は膝裏から包丁を貫通させられほぼまともに動かない状態になっている。
他にも細かい傷は沢山あるが、そんなのは大したことではない。ヒーラーの代名詞であるビショップという職業なのだから、自分でヒールをすれば良いだけなのだ。では何故痛いのを我慢しながらヒールを自分にかけないのか。
それは木人形を倒している間に、追加でゾンビが3匹来ているからだ。先ほど2匹でもダメージを受けていたのに、身体が動かない状態で3匹に襲われぶっ飛ばされたところだ。普段なら喰らわないと思うが、ただのタックルの直撃を受け、先ほどの木人形の様に壁へ叩きつけられ、海水へ一度沈んだ。
一瞬意識が飛んでいたものの、海水に顔がつき息が出来なかったお陰?で意識を取り戻した。下手をしたらあのまま溺れていたかもしれん。こんなところで溺死などしたくはない。動かない身体を無理やり動かして立ち上がったが、しっかりと追撃が来た。
またしても突っ込んで来たので動く足を使い横に避け、壁に激突したゾンビへDUを立て続けにぶち込む。魔力がどんどん減っていき、この後にヒールが出来なくなるが早く倒して頭数を減らさないと、ヒールを使う前に殺されてしまう。
魔力を使い切る勢いで連射したお陰もあり、ゾンビの1匹目は倒す事が出来た。これは流石にしんどいぞ。後2匹がまだいるのに、魔力は大分減って自分の怪我はそのままだ。この状態で素手で戦うのは結構厳しいな。
そんな事を考えている間にも、お次のゾンビが群がってくる。俺も随分と人気者になったものだな。ひっきりなしにこちらへやってくるので、少しうんざりしてきた。だが皆を守る為にも、もうひと踏ん張り頑張ってみようじゃないか。
顔面に向けて腕を振り回してくるので、少しかがんで避ける。ほぼ片足なので動きは悪いが、この位なら避けられるな。頭上を腕が通過したタイミングで身体を入れ、通り過ぎた腕を押して足を引っかける。ゾンビは盛大に転び、水しぶきを上げた。
海水に浸って寝転がっているゾンビの背中へ杖を突き刺す。杖を引っこ抜き、ゾンビの身体に空いた穴へ無事な右手を突っ込みWSを放つ。MPが少ないから、オーラバーンももう厳しいんだよね。
魔法が発動するとゾンビは反動で痙攣するもまだ死なない。続けて詠唱してWSを撃ち込むと、漸く死んでくれて光になって消えていった。良し良し、このペースなら後1匹何とかいけるだろ。
あ・・・・・・。
油断していた訳ではないのだが、そりゃあしゃがんで魔法を2発も撃っていたら、恰好の的ですよね。駆け寄ってきた残りのゾンビに脇腹を蹴り上げられ呼吸が止まる。身体が上方へ飛ばされ、ゆっくりと落下しだす。
天井にはぶつからなかったが、3メートル位は打ち上がったんじゃないかな。受け身も取れずに地面に打ち付けられる。海水のお陰で直接岩肌にぶつからなかったのは幸いか。痛みに耐えて右手をつき顔を持ち上げる。顔を上げないと溺死間違い無しだから、必死にもなる。
何も考えずに顔を水面から出したのが良くなかったのか、今度は顔面を蹴り飛ばされる。全く容赦ないゾンビだな。口から血をまき散らし、今度は壁に叩きつけられてから落下する。
やばいやばい。このままだとゾンビに蹴り殺される。何とか起き上がりゾンビ側へ向き直った頃には、もう目の前にゾンビが居て蹴り足を振りかぶっていた。このまま受けると死ぬ気がする。
身体を無理やり横へ倒しながら避け、蹴り足の踵に右手を添えて持ち上げる。バランスを崩したタイミングで、しゃがんだまま回転し左足を突き出して軸足を刈る。踏ん張ってる右足が鬼の様に痛いが我慢だ。
痛みを我慢して放った甲斐もあり、ゾンビは後頭部から倒れていった。すかさず近寄り右手でアイアンクローを仕掛ける。俺の握力では頭を握りつぶす事など出来ないので、詠唱を始める。WSを撃ち込みながら、地面へ後頭部を打ち付ける。まだ生きていた為、頭を押さえたまま顎へ膝を入れる。それから今一度WSを撃ち込んだところでゾンビは死んでくれた。
いやー・・・・・・もはや瀕死ですね。流石に息も絶え絶えになり、壁に寄りかかってへたり込む。腰から下が海水に浸かっており身体が冷えて困るのだが、今はちょっと立ち上がれないかな。まずは魔力回復をして自分にヒールをかけて、それから立ち上がろう。
瞑想の為に目をつぶって呼吸を整える。
静かだ・・・今まで死にかけながら戦っていたのが噓の様に、辺りは静まり返っている。少しだけ波立つ水面が壁面に当たる音位しか今は聞こえてこない。・・・・・・いや、嫌な音が聞こえてきた。
遠くの方からバシャ・・バシャ・・・と水をかき分けて進む音が聞こえてくる。遠くではあるのだが、明らかにこちらへ近づいて来ているのが良く分かる。ワニ達救出班なら良いのだが、この不規則な足運びはゾンビだろう。それと1匹じゃない。また3匹はいるだろ、これ。
もう少し休憩をしたかったが、静かに目を開ける。壁にもたれかかったまま立ち上がり、回復した魔力でノーマルヒールを自分へかける。まだGHをかけられる程の魔力は回復出来ていない。ノーマルヒールをかけたので、多少は身体が動くようになってくれた。
骨折していた左手の手首と肘は何となく動かせるようにはなった。刺された右足の膝裏も少しだけ踏ん張れる様にはなった。先ほど蹴り上げられて4~5本折れたであろう肋骨も、1~2本位は直ったんじゃないかな。
うむ、全然ダメだなこれは。この状態では正直再度戦いたくなどないが、致し方無し。
今一度身構え、ゾンビが現れるのを待つことにした。待ってる間に少しは魔力も回復するでしょ。そうしたら今一度ヒールをかけて、それから戦えばもう1度位はこの場所を死守出来るだろう。
3匹のゾンビが来るのは良いんだけどせめて同時に襲い掛かって来ないで、順番に並んで襲ってくれれば良いのだが、そんな事を考えてくれるゾンビなどいない。お陰様で良い修練になりそうだな。死ななければだけど。
水をかき分ける音が、直ぐそこの曲がり角迄やってきた。余計な事を考えるのを止め、今一度自分へヒールをかけ気持ちを研ぎ澄ませて待つ事にした。




