人形なのに可愛くない
木人形のターゲットを出来る限り俺に固定したいので、まずはFAを俺が行わせて頂く。取り合えず杖を取り出し組み立て横に構え、踏み込みと同時に親の横っ面を思いっきり引っ叩く。親は攻撃を受け、壁へ叩きつけられた。
その途端に子が4匹俺に群がってくる。死んだりしてないが、親の仇の様に勢いよくくるなぁ。やっぱりこいつら背が小さすぎて、攻撃を捌きにくい。包丁の様な刃物を皆持っているので、それを脛に目掛けて斬りつけてくる。
杖を地面に突き立て受け止めるが、小さい癖にパワーが強いから厄介だ。本来俺は力が強い方ではないので基本魔物の攻撃は受け流すのだが、無理とは言わないが脛辺りを突き刺されたり横なぎに斬られると受け流しがし辛く、単純に受け止めるだけになってしまう。
一方向からならまだしも、4匹も来ると辛いな。最初の攻撃を受け止め、少しだけでも受け流しその勢いのまま後方にいる子の顔面に杖を突き立てる。子も1匹壁の方へすっ飛びいい音をさせながら叩きつけられている。これで一応子と親のヘイトは俺に来ているはずだ。
「ギンナル、ラナはドライアードツールとスリープを。リリはスタンアタックを頼む」
俺の日頃の行いが良かったのか、3人に頼んだ行動阻害魔法とスキルが綺麗に全て入った。これは助かる。これで子の3匹は少しの間は無視出来る。その間に親に攻撃し、出来る限りヘイトが他の皆へとばない様にしなくては。
最初に壁へ叩きつけられていた親が、俺の足元へ駆け寄ってくる。子よりは少し大きい為、基本的に攻撃は腹~太もも辺りを狙って繰り出される。この高さなら、まだ受け流しも容易に出来る。別にこいつら刃物を扱う技術がたけている訳ではなく、単純に力任せに振り回してきているだけだからな。
駆け寄ってきた親は、俺の腹辺りを真っすぐ突き刺してくる。これ直撃したら勢い的に即死するんじゃないかね。少なくても刺された後に自分へすぐヒールが可能な程、弱い攻撃ではないと思う。
刺されたくない俺は真っすぐ突き出された包丁へ対し、頭上から杖を振り払う様に下ろして身体の軸をずらし捌く。親は突き刺した勢いのまま俺の横を通り過ぎる。
身体を回転させ勢いをつけ、親の横っ面へ再度杖を撃ち込み壁へ弾き飛ばす。今度は壁に近かったので、そのまま追撃を仕掛ける。
身体の前面から壁へ突っ込んでいるので、人間でいえば延髄の辺りへ杖を回転させねじ込む。人間ならこれだけで死にそうなものだが、いまいち効いているのかわかり辛い。ノーダメージって事はなさそうだが。
突き込んだ杖を引いて再度ねじ込もうとしていたが、自由に動ける子の1匹がいつの間にか足元へ来ていた。気がついて良かった。こいつは俺のアキレス腱を切ろうと小さな包丁を横なぎにふるってきた。片足を持ち上げ包丁を躱し、即座に地面へ踏み込む。
地面と足の裏の間にきっちり包丁を挟み込み、どうせなら手元から奪ってしまいたがったが強い力で握りしめており包丁を落とす事は叶わなかった。海水がある為踏み抜く勢いを邪魔してくれているのもあると思うが、こいつら力強すぎだろう。
仕方がないので包丁を踏みつけたまま相手が動けない内に、顔面を同じく逆足で踏みつける。これで首の骨でも折れて終わってくれれば良いのに、力が強いだけじゃなく頑丈でもある。オーラバーンを頭を挟み込んで放とうとしたのだが、残念ながらそうは上手くいかなかった。
脇腹が急に熱くなり何かと思ったら、壁にめり込んでいたはずの親の木人形が、俺の脇腹を斬りつけて横を通り抜けていった。
痛い・・・痛みが遅れてやってきた。直にヒールをしたいところだが、足元の子が暴れ出している。斬られた事もありバランスを崩してしまい、子が俺の足元から抜け出していった。親の横に並び俺と1対2で向き合う。
俺はちらっと他のメンバーの方を見た。子が3匹いたはずだが今は既に後1匹になっている。順調に倒せている様で何よりだ。だが、まだ直ぐにはこちらに来ては貰えなさそうだ。目の前の親と子の2匹は自分で何とかするしかないかな。
2匹同時にこちらへ向かってくる。あの包丁と怪力で2ヶ所も突き刺されたらひとたまりもない。杖を頭上で回転させてから低い位置で横なぎに払う。親側から攻撃を打ち込み、親を吹き飛ばしつつ子も巻き込んでおいた。
同時にも交互にも攻撃は受けたくないからな。まずは数を減らす為にも、体力が少ないであろう子から狙っていく。壁にぶつかり地面の海水に浸っている子の方へ走り、短い脚を掴み持ち上げる。走り込んだ勢いのまま足を掴んだまま前方へ回転し、壁へ思いっ切り叩きつけた。
これで死んでくれたら楽だったのだが、まだ消えてはくれない。叩きつけ地面に落ちる前に一歩踏み込み、肩口からぶつかり壁と挟み込む。少し身体を離し再度踏み込み両手を広げて人形の中心へ打ち込んだ。大事な踏み込みが海水に邪魔されて甘いせいか、若干威力が弱い気がしたが問題はなかった様だ。
木人形の子は全体的にヒビが入っていき、砕けて光となって消えていった。
漸く1匹を1人で倒せたけど、かなりしんどいぞ、これは。如何せん時間が掛かり過ぎている。
そのかかった時間、攻撃に意識を割いてる間に背後から脇腹を親の包丁で刺された。多少は避けれたので、腹のど真ん中から包丁が生えてこないで済んだものの、これ致命傷に近いんじゃ・・・。
反撃しなければ追加攻撃を受けるだけなので、刺されたまま身体を捻り木人形の頭へ肘を入れる。俺の攻撃は効いた様だが、こちらの方がよっぽど効いている。脇腹の肉が余計にえぐれたのか、激痛が走る事となった。
やせ我慢をして包丁を持った手を掴み、その手を捻り上げて落とそうとした。本来なら小手返しの様な技を使ったので痛がりながら手を離してくれそうなものだが、こいつにはあまり効果が薄かった様だ。効果が無い様な攻撃をすると言う事は、向こうへ再度攻撃の機会を与えてしまう事になる。
脇腹へ刺さったまま、今度は壁に押し付けられた。壁にぶつかっている顔よりも、えぐられている脇腹が痛い。これ、抜かせてもらわないと辛い。
壁に押し付けられたまま両手を後ろに突き出し、木人形の頭を挟み込むように手を開く。痛みを我慢し僅かな詠唱を唱えオーラバーンを発動する。こういう時に詠唱が短いのはありがたいもんだね。
無事に木人形の頭部へオーラバーンを命中させる事が出来、脇腹に刺さった包丁と共に後方へと倒れ込んでいった。
倒れるだけで、まだ死んではくれないのか・・・。もう少しだけ頑張る事にするか。




