油断大敵
《ハク視点》
ミラさんがドライアードツールが届く範囲に来る様誘いをかけても、やはりあの人達は近寄って来ません。近寄って来ないだけではなく、その間に色々な場所から矢が飛んできて、馬車が徐々に矢だらけになってしまいました。
馬を射殺せば私たちは逃げられなくなると思いますが、それはして来ないです。多分ですが自分達で使うか何処かへ売り飛ばすのでしょうね。このまま負ける事があれば、私達も馬と一緒に売り飛ばされる事もあると思います・・・。私はハガネさんのものなので、売られる訳にはいかないです!
弓持ちが居るであろう林に向かい、自然回復出来るであろう分の魔力を使い、WSを矢が飛んできた方向へレナさんとタイミングをずらして撃ち込んでみる。
でも何の反応もないです・・・。それどころかほんの少しの間で移動しているのか、全然別の場所からまた矢が飛んできます。私達の直ぐ傍にディムさんが居てくれているお陰で、まがり間違っても私達へ矢が刺さる事はないでしょう。それぐらいにはディムさんの事も信じています。
「ミラさん、このままだとジリ貧だと思います。それに早くハガネさんの所にいかなきゃ!」
「この状況でもハガネの心配とはぶれないねぇ。それでこそハクだと思う。良し、勝負に出るからフォロー頼むよ!ディム、合わせてね」
「はい!」
ミラさんがそう言うと何をするのかなぁと思ったら、どうも全員でトレジャーハンターに向かって突っ込む様です。いえいえ、自暴自棄になったのではありません。先頭ミラさん、レナさん、私、ディムさんで一塊に突っ込みます。
近づいてしまえば私もドライアードツールが使えますし、後方はディムさんが守ってくれるので安心です。でもその分他のプレインズウォーカー2人も襲ってくるでしょうから、先にその人達の足止めですかね。
弓使いに関しては一先ずディムさんに任せて、短剣3人を先に倒す算段です。上手くやらなきゃ。
ミラさんとディムさんの足をこれ以上引っ張る訳にはいきません。
全員でトレジャーハンターへ向かって行くと、あちらも私達の意図に気が付いたみたいで、今まで遠巻きに囲んでたのに3人ともこちらへ向かってきます。単純に数の上では戦える人が2人しか居ないこちらが不利ですが、私のドライアードツールがさく裂しますよっ!
ミラさんがわき目も降らずにトレジャーハンターへ突っ込んでる間に、私はプレインズウォーカー1にドライアードツールをかけます。運が良かったのか、相手の魔力防御が低かったのか無事に決まってくれました。
レナさんはけん制の為にプレインズウォーカー2にWSを撃ってくれます。もちろん中々命中はしてくれませんが、避ける為に少しバランスを崩す事が出来た様です。その隙をついて、ミラさんはトレジャーハンターの懐へ潜り込みます。多分、今日一番の速い動きでした。
どうもトレジャーハンターからしたら想定外の速さだった様で、苦し紛れに足元に来たミラさんに向かって短剣を振り下ろしてます。が、そんなものを受けるミラさんじゃありません。僅かに身体を捻り短剣を躱すと、その勢いのまま足元で短剣を操りあっと言う間にアキレス腱を両足とも切断した様です。
苦悶の表情を浮かべながらトレジャーハンターは前方へ倒れ込みました。その時には既にミラさんが立ち上がり、敵の首元へ短剣を振り下ろし刺していました。流石です!
でも向こうもやられっぱなしではなく、今まで一本しかなかった矢が2本同時にミラさん目掛けて飛んできた様です。様ですと言うのも、私には見えていなかったからです。でもディムさんがキッチリ飛んできた矢を二本とも、二刀流で切り落しミラさんを守ってくれました。良くあんなのが見えるなぁと感心してしまいます。
その時レナさんがけん制してくれていたプレインズウォーカー2が、止めを刺す為にしゃがみ込んでいたミラさんの所へ駆け込んで来た。
「ミラさんっ!」
私の声が届くより前にミラさんは、前に倒れ込みながら短剣を躱し背後へ短剣を突き立てていました。
その攻撃はプレインズウォーカー2の胸部へ深く突き刺さり、口から血を吐き出し崩れ落ちていく時にミラさんは一度短剣を抜き、再度喉元を突き刺しました。あれはもう絶命してますね。やはりミラさんは強いです!
そう思ってミラさんを見ていたら、またディムさんが矢を二本切り払う音が聞こえました。ディムさんも流石です!この2人が揃ってやられるなんて、やっぱり考えられませんね。
「くっ・・・」
何故かミラさんの苦しそうな声が聞こえました。なんでだろうと思ってミラさんを見ると、脇腹に矢が貫通してました。うそっ何で!矢は確かにディムさんが切り落としたはずなのにっ!!
私は慌ててしまい、ミラさんへ近づきヒールをかけようとしました。
「ダメだよ、ハクさんっ!矢を抜いてからじゃないと!」
そうです。危ないところでした。レナさんから注意を受けて、身体に異物がある状態でヒールなんかしてしまったら、その異物を取り除く時に回復してしまった肉なんかが邪魔をして、取り除く時の激痛は凄まじいと聞いた事があります。なので本来は異物を取り除き、それから回復させないとです。
本当に死んでしまいそうな時なんかなら、そんな事は気にせずに一先ずヒールをかけてしまいますけどね。今はそんな事はないと思うので、ミラさんが矢を抜くのを待ちましょう。それにしてももう1人弓使いが居たんですね・・・。今のチャンスにこれ以上撃ち込んでこなかったという事は、3人以上はいないでしょう。
自分の役目を忘れミラさんに気を取られてしまった為、私はドライアードツールを忘れていました。
さっきまではドライアードツールに縫い留められていたプレインズウォーカー1が、私の方へ走って来ていました。私の方へと来たと言うより、後数歩の位置に既に居ました。これはまずいです・・・。杖を振り回してもいいですが、ミラさんとあんなに戦える人に私ごときがそんな事をしても意味がありません。
私は杖を前に突き出し身を縮めて、出来る限りの防御姿勢をとりました。
ハガネさん・・・早く迎えに行きますからねっ!




