新狩場は慎重に
「いいぞ、リリミア!」
「はいです!」
中に入って早々魔物が出現した。その上、少し進んで行く度に魔物が出てくる。エンカウント率が高いこと。前衛のスカーレットとリリミアが連携を確認しつつ進んでいる。
ここにいる魔物は所謂ゾンビだな。海賊風のゾンビと兵士風のゾンビ。それと冒険者風のゾンビが出てきている。間違いなく元々生きていて、この中で朽ち果てた元人間達だな。
ドール城下町から向かった冒険者達とそれを助けようと次から次へと送り込んだ兵士達のなれの果てだ。こんな手前でも死んだ者が多かったんだな。元々が強ければ、ゾンビになっても強いのが普通らしいが、1匹1匹が非常に強い。2~3匹位迄ならそこ迄ダメージを受けずに何とかなってるが、集団で出てくると厳しいな。
ラナはテンプルナイトなので聖属性のスキルがあり、基本対アンデットには有効な職業だ。それでもダメージを少しずつ受けるので、俺のヒールの出番もある。魔物のレベル帯は俺らと同じではなく、少し上に感じる。多分ここへ入った冒険者達はLv60前後がほとんどなのだろう。
うちのクランみたいに、適正レベルで狩りを行う人は少なく、少しレベルの低い狩場に行くのがこの世界では当然だからだ。一度死んだら生き帰れないのだから、そうなる事も必然だとは思う。俺達が少しおかしいのだ。
レベル帯が上とは言え人型の魔物オンリーなので、技で受け流し攻撃する事が可能な為スカーレットも何とかなっているんだな。獣型の魔物は物理的な力が強く、大体が俊敏なものが多い。そう考えると狩るのであれば、人型の方がまだいいな。とはいえ、獣型と違い理性を無くしている癖に、人型は技も使ってくるから安心は出来ないが。
素手の魔物もいるが、武器を拾って使う知能はあるらしく、剣や盾等の武器を使う奴もいる。それでもスカーレットよりは技術が拙いのでまだ行けそうだな。もう少し潜ってみよう。
リリミアのスポイルは順調で良い素材がバシバシ手に入っている。これなら帰りの船代は問題なさそうだな。まだ半日しか潜ってないのに、カバンがどんどん膨らんでいく。経験値もかなり良さそうだ。明らかに格上魔物なので、安全確保が出来たら是非悪魔の島へまた狩りに来よう。
もし2PTフルでの狩りなら余裕過ぎる程だが、その時はきっとセラが間を空けず魔物を引いて来てくれるから、退屈はしなくて済みそうだ。
順調に進めていたが、この状況では追加の兵士達迄もが死んでゾンビになった理由が分からないな。集団戦なら普段から訓練している兵士の方が冒険者よりは上だろう。単体~3匹位なら格上だとしても兵士が負けるとは思えない。そんな事を考えてると、兵士がゾンビになった理由であろう魔物が現れた。
「ハガネ・・・・・・何か来るぞ。今までのゾンビより嫌な感じがする」
「何が来るんです?あ―――私より小さいのが沢山!」
前衛のスカーレットとリリミアが今までと違う魔物の接近に気が付く。
「ハガネさん、ドライアードツールかけますか?」
「いや、あれは多分家族タイプの魔物だ。スカーレットがヘイトを完全に取る迄は待ちましょう。ラナ、ヘイトが安定したらスリーピングクラウドを」
「分かったわ、あの数で来られたら流石にスカーレットもヤバいわよね」
親っぽいのが1体、子であろうさらに小さいのが4体、全部で5体いる。見た目は木で出来た人形の様だ。おかっぱ頭の髪はあるが、顔が一切ないので恐怖心を煽ってくるな。前世なら心霊特集が組まれてる事だろう。
スカーレットがまず子にヘイトをかけ、子の1体にギンナルがドライアードツールをかける。レジストされずに無事に決まった様だ。魔法防御はそこ迄でもないのかな。その後さらに親にヘイトを入れる。一斉に子がスカーレットへ群がる。
「寝てなさい!!」
ラナが全体睡眠魔法を使う。上手く決まったな、これなら大丈夫だろう。子を一体ずつ倒していく。その間もヘイトが盾以外に行かない様にスカーレットは小まめにヘイトをかける。
「ぐっ・・・こいつ攻撃が重い。それにどの攻撃も低いから受け流し辛い」
魔物の身長が親で俺の腹位、子が太もも位の高さだ。飛び上がって手持ちの包丁?みたいなので斬りかかるか、そのままこちらの脛辺りを狙って斬りつけている。確かに防ぎにくいだろうな。見た目以上に力もあるみたいだし、やっかいではあるな。槍持ちが基本の兵士には厳しい相手かもしれない。
俺達はリカのスリーピングクラウドとギンナルのドライアードツールのお陰で1体ずつ戦えているから良いが、そういった魔法が無いと厳しい戦いになりそうだ。
一体に一撃ずつラナが火魔法を放つ。それで魔物の体力を削った上でスカーレットとリリミアの物理攻撃を入れている。それでも1体倒すのにそれなりの時間が必要だ。その上、ラナとギンナルの行動阻害魔法が切れる度にかけ直しているので、1回の戦闘で結構な魔力を消費している。
最初に遭遇してから既に3家族目かな・・・ちょっと休憩を入れないと厳しい。アンデットなら俺も手伝えたのだが、この人形はどうも悪魔タイプの様だった。お菊人形的な奴なら、レイスじゃないのかね。WSなら撃ち込んでいるが、ラナの魔法に比べた微々たるもんだしなぁ。そんな事を考えていたら、背後からゾンビがやって来た。ちょっと時間を稼ごう。
「背後のは俺がやるから、人形達を頼むよ」
「無理するでないぞ、ハガネ」
ラナが不安そうに声をかけてくる。人形達ならともかく、人型1体なら何とでもなるだろう。俺は1人後ろを向き、ゾンビと対峙した。
良い正月は過ごせておりますでしょうか。
明日からは2日に1回の更新へ戻ります。




