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初の海水浴?

年末~年始迄毎日投降致します。皆様、良いお年を。

 酒場での晩飯を終えたあと、宿に戻ってようやく腰を落ち着けた。今回は思いのほか疲れが溜まっていたらしく、風呂にも入らずそのままベッドにダイブ。寝る前に「ちょっとだけ飲みに出ようかな」とか、一瞬だけ頭をよぎったけれど、あえなく気力がログアウトしていた。

 まあ、最後に酒場に繰り出したのがいつだったかも思い出せないし……たぶん、四ヶ月以上前のことだ。あの頃の自分は、きっと元気だったんだろうな。遠い目。


 疲れ切っていたのは俺だけじゃない。他のメンバーもそれぞれの宿部屋に引きこもり、朝まで静かに英気を養っていたらしい。なんせ途中で野営中に盗賊だの魔物だのに襲われて、気が抜けない旅だったからな。そういう意味では、今回泊まった宿は上出来だ。朝起きた時、ちゃんと「朝がきた」って感じがするのは、良い宿の証拠。


 とはいえ――やっぱり、この人数での旅は無謀だったな、と布団の中で天井を見つめながら反省した。


 馬車二台にテントに食料、消耗品。移動中の水やら、着替えやら、宿泊費やらを全部18人分……あまりの出費に、財布が干からびる音が聞こえそうだった。盗賊どもが落としていった金品を回収して多少は足しになったが、あれはほんと誤差。

 いまや手持ちは風前の灯火。というか、朝食はなんとかなるけど、昼以降のメニューが白紙なんだよね。さすがに「じゃあみんなで断食しようか」なんて提案する勇気はない。


 加えて今晩の宿代? あるわけがない。野宿すればいいじゃないか、と思ったアナタ。そういうのは初期村でソロだった頃限定の話だ。この人数でやるもんじゃない。見た目がもう、旅芸人一座か移動傭兵団だからな。


 ちなみに、これでも節約はしていた方である。ここまでの移動中は馬車の中とテントで寝泊まりしていたし、昨日もハクたちに頼んで使わない装備品や野営道具を売ってきてもらった。あれこれ工夫してはいるんだ、いちおう。とはいえ、そろそろ真剣に「無限収納袋」的な、都合の良すぎるアイテムが欲しくなってきた。どこかに落ちてないかな。たとえば――神殿の地下とかに。


 ……まあ、そんな夢見てる場合じゃない。


 長旅が終わって、まだ一泊しかしていないが、のんびりしている余裕はない。今日からは狩場へ向かって稼がないと、リアルに詰む。仮にも「伯爵」とか呼ばれてて、高ランク冒険者の端くれなのに、こんなにも金がないのって、どうなんだ。人としてどうなんだ。


 だがこれは計画的な資金運用の結果でもある。最初からあまり多くの所持金を持ってくるつもりはなかった。なにせこの街、金持ちを狙った詐欺やら泥棒やら、話には事欠かない。力づくで奪われることはそうそうないだろうが、絡め手で巻き上げられる危険性はある。あるいは普通に落とす。無くす。人間だもの。


 というわけで、残金ギリギリまで抑えてきた結果がこれである。節約万歳。


 さて、ドール城下町から我々が向かう狩場――“悪魔の島”と呼ばれる場所までは、徒歩でちょうど一日とのこと。馬車が不要なのはありがたい。体力的にも、金銭的にも。


 朝に出発して、翌日のお昼前には到着するらしい。今のうちに装備や構成を確認しておいて、今回は本格的な攻略ではなく“お試し”ってことで様子見の探索だ。魔物の種類や、どのくらいの消耗品が必要になるかも見ておきたい。とはいえ、完全な観光気分で行けるほど優雅ではないので、そこそこ稼ぎは狙っていく。


 ご飯のためにも。


 そんなわけで、朝食をとって身支度を整え、一同は宿を出発。18人での大行軍なので、町中で誰かに絡まれることもなく、すんなりと城門まで到着できた。ありがたい反面、ちょっと物足りない気がする。いや、ここで乱闘になったら衛兵が出てくるだろうし、そんな修羅場にならない方が良いのだけど。うん、良いのだけど……。


 門を出ると、整備された一本道が海へと続いていた。道はよく踏みならされており、雑草も少なく、通行人の数も多いのか、魔物の気配はまるでない。視線を上げれば、遥か先に海の輝きがぼんやりと浮かんで見える。


 ――ああ、そういえばこの辺、海産物が名物だったんだっけ。


 ここに来るまでずっと内陸を旅していたから、魚介類なんて全然口にしていなかったな。前に港町で食べた刺身や焼き魚の味が、ふと舌の奥に蘇ってきて、思わず唾を飲み込む。あの頃は、前世のグルメ環境がどれほど恵まれていたかなんて、思いもよらなかったよ……。


 そして、話は唐突に核心へと至る。


 これから向かう悪魔の島――そう、島。つまり、海に囲まれている。


 海といえば、そう。水着である!!!


 ……が、そう簡単にはいかない。海には魔物がいる。下手に泳げば襲われて、リアルにお陀仏だ。この世界は、水着でキャッキャうふふする余裕があるほど甘くない。


 ちなみに、漁師はどうやって漁をしているのかというと――正解は「冒険者を雇って魔物を退けながら魚を獲る」だ。つまり、漁にも戦力が必要。おのずと経費もかさむ。だから魚は高級品。高いのに、希少価値もあってすぐ売れる。海の男たちの命がけの漁が支えているのだ。


 ……うん、水着の妄想はこの辺にしておこう。


 肝心の“悪魔の島”についてだが、ギルドからの事前情報によると、そこはアンデッド系の魔物が大量に出るらしい。


 ついに、ビショップ様の見せ場である。


 俺が普段使ってる攻撃魔法は、初期の風属性呪文・ウィンドストライク(WS)と、光魔法のオーラバーンくらいだ。ラナやリカみたいにバリバリ攻撃魔法を連打するスタイルじゃないから、普段はもっぱら回復と支援がメイン。


 しかし今回は違う。


 アンデッド相手には、ビショップの本領が発揮される。聖属性のホーリーウェポン(HW)で味方の武器にエンチャントをかけ、物理攻撃を強化。そのうえで、自らもディスプラトアンデッド(DU)を唱え、前線に立って殴れるビショップへとクラスチェンジするのだ。


 ……ただし、魔法の射程は短いし、調子に乗って連発してMPを枯らした結果、いざという時にヒールが撃てません! なんて事態になったら、PTからの信用は地の底に落ちる。戦う前に、信頼まで枯らされるのはごめんだ。


 ということで、ご利用は計画的に。

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