第九話:スコットくん
この回は飛ばし推奨です。
本編にあまり影響ないと思うので。
もしも、もっと話が進んでから、どうしても気になったら読む程度で……。
僕の名前は……。
女生徒達「あ、スコットくんだ」
そう、僕の名前は、スコットくん……スコット。
この学園では……、
女生徒達「あの人、面白いよね」
面白い人と呼ばれている……ちっがっうう~。
女生徒達「パット見はかっこいいんだけど、あのいやらしい目だけはちょっとね……」
そうそう、カッコよくていやらしい目の……んん?、もういいや。
僕は、学力も体力も学年の満点トップの超優良生徒、奇跡の天才児と呼ばれている、だ。
おっと、訂正しておこう、学力において、算術だけは彼女にトップをいつも譲っている。
算術の試験では一問だけ意図的に間違うのだ。
なぜ、そんなことをするかって?
彼女の学力は全体的に優秀でどれもトップテンに入る実力があるが、算術においてのみは、この僕と肩を並べる存在なのである。
ん? それは理由じゃないって、確かに。
まず、彼女とは誰か?だが、元カルタード南王国王女セビルさんだ~。
僕は、こよなく彼女を愛している。そして大ファンでもある。
小学年から同級生だが同じクラスには未だになったことが無い。それでも、ずっと彼女の美しい顔が大好きだったのだ。
あ、でだ。 そんな彼女が、試験後に顔を合わせた際に、少しだけ得意そうに、
『また私の勝ちねっ』ぽいそぶりをするのだ。
そんな彼女を見られるなら、オール満点なぞ、捨てる価値のあることがよくわかるだろう。
まぁ、見られるのは僕だけだから、わからんかもな。
彼女が、算術にはかなりの思い入れがあるだろうと感じたのが、”ぱい”について講演した時だ。
円や玉については、計算に3くらい使えばなんとなくそれっぽい答えが出るよね?
そんなだった算術会に、3.14という中途半端な数字を持ち込む提案をしたのだ。最終的には、もっと細かくてもいいし、結局3でもいいよみたいな?だっけ。
しかもなんと、それをなぜかパイというから大変だ。もう、胸に目が行……。
僕は、その講演会には、もちろん早朝から一番目に並んで待ち、最前列の席を確保したのさ。
講演が始まると、舞台上で講演台と黒板をいきいきと動き回る彼女の制服姿がすばらしかった。
僕の目は彼女の顔とひらひらのスカートとそこから延びる長い脚、もちろんパイじゃなくて胸にも釘付けだった。いや、僕だけでなく、皆、パイという言葉が出るたびに視線が胸に行ってたはずだ。違うの?
ということで、彼女が何を話していたかはほとんど頭に入っていなかった。
そんな時、隣の席の誰かさんが手に持っていたメモ取りようの鉛筆を落としたのだ。
紳士な僕は、すっと体を前に倒しそれを拾い上げようとした。
その瞬間、頭によぎった。ここで舞台の方に視線を向けられれば、幸せな景色が見られるのでは無いかと?
だが、紳士な僕がそんなことができるはずもなく、も無く、彼女と目が合っていた。
スカートをそれとなく押さえる彼女の顔は、今にも泣きそうだった。
他の女子なら、ゴッツラ虫を見ている様な目をするのが当然だろうに。
実際、角度的に絶対何も見えないのを確認した様なものだったが、深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいているというのを期待していた僕は、彼女の思いがけない表情に予想外の満足感を得てしまっていた。
……その日は、帰ってからパイについて復習した。
話がそれたけど、そんな一生懸命な姿を見て算術でのお近づきを狙った姑息な……周到な作戦なのだ。
他には、彼女が養護施設の手伝いをしているのを知っている。だから、たまに覗きに行ったり行かなかったり。
で、不思議なことに、彼女の迷いのない行動と手際のよさは本職では無いかと思ってしまうほどなのだが、元王女がなんで?といつも考えてしまう。
子供が好きなのもよくわかる、とても優しい顔をするのだ。僕には絶対にしてはくれないだろうから、それを見られるのもありがたい。
実際、学園でも下級生の面倒見はよいのだが、なかなかそこまでの表情はしないのだ。
さて、子供相手と言えばアクシデントは付きものである。 無防備であるがゆえ、それは必然の様に起こるのだ。特に学校帰りは制服だから尚更だ。
ふふ、そうだ、これまでそういう場面に何度か遭遇できたのさ。僕が神に感謝することがあるとすれば、そういう時しか無いだろう。
ということで、子供に優しい彼女が大好きだと言いたいのである。
しかし、ここに来てとんでもない情報が舞い込んで来た。なんと、彼女の婚約が破棄されたというのだ。
彼女の婚約者は、東国の英雄グレッドという、老若男女問わず大人気の男だった。もちろん僕も肖像画カードを何枚も持っている。
彼女は超人であることもあり、直接付き合いたいなんて男もいないのもあるが、それ以前に敵うはずのない男がずっと立ちはだかっていたのだ。
人の不幸に漬け込むのも卑怯だが、千載一遇のチャンスがめぐって来たのかもしれないなんて、舞い上がってしまうのもまた仕方のないことでは無いだろうか。
それなのに、昨日の昼食時に、ついいろいろと言ってしまったんだ。 たぶん、酷い言葉を並べてたんだと思うけど、全く覚えて無い。どうしてああなってしまったんだろう。
その時、彼女は少し涙を浮かべていたと思う、食堂を出ていく後ろ姿を見て我に返った僕は、しばらく動くことも出来なかった。
だから、今日、彼女が食堂に来たら、絶対に謝ると決めている。 許してもらう為でなく、謝るべき事をしたのだから。
……今日は、来なかった。
それから、夏季休暇まで合うことも無かった。
そんな折りアレンが合宿とやらに誘ってくれた。 謝るチャンスをくれたのだ。 先輩、一生ついていきますぜ。
次回、第十話:復讐…………(たぶん、嘘予告
吹き荒れる戦乱の中、見たこともない爆乳がスコットくんを襲う。
果たして、死に直面したスコットくんは、生き残ることができるのか?!
復讐じゃなくて復習するは、我にあり……なのか。
え?次、水着回やるんなら、こんな僕の話なんて挟まずにとっとやればいいのに。いや、そっちやってください。お願いします。
ん? 爆乳が襲う? 僕を? なんで?
そこから死って、なんかとても幸せそうな感じしかしなくもない……。