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転生魔法少女は悪名「白い(ビキニの)悪魔」を払拭したい  作者: 安田座


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倒し方

 


 ミラ様は、レーバルト大陸に到着した。魔法少女が存在する可能性に心当たりのある場所だ。ここまで正味五日は飛行しただろう。

 陸地に入りその最初に見えた町の手前に降り立った。ここからは変身を解除して徒歩で向かう。

 心当たりと言っても、以前に、この町へ一度来訪した際にある噂を聞いたことがある程度ではあった。

 ただ、その噂以前に気になることが発生していた。地上へ降りる際に感じた違和感だ。

「おかしいのぉ、人がおらん。

 仕方が無い。

 ……ゲットチェンジタイプツー」

 人が全く見えなかったのだ。 そして変身して再び上空へ。

「降りるときには、人の気配が無いのを確認していたが、あっさりと降りられた。

 もしや……」

 町を見回してみる。

「お、おらん……人が、誰も……」

 高度を少し上げて今度は見回しながら移動する。

「やはりおらんのか……いったい何があった……ん?」

 かなり離れた場所にある一軒の煙突から煙が登っているのを見つけた。

 周囲を警戒しつつその家の傍に降りて中の気配を探る。変身は解除している。

 しかし、探るほども無かった様に大きな音がした。金属で金属を叩く音。 町の鍛冶屋でよく聞いていた音だ。

「鍛冶屋……か?」

 近くの窓から中を覗いてみる。居た、男が作業している。何かを造っているのだろう。

「どうぞ、人間でしたらお入りください」

 男が、手を止めてからそう声をかけて来た。 気付いているのだ。

「ふむ、ではお邪魔するぞ」

 扉の開いた入口に回ってから中に入った。

 作業をしている三十前後と思われる男の顔は疲労感が凄まじかった。

「おばあさん、無事だったのかと聞きたいが、見かけない顔だね」

 疲労感はあっても年寄りにやさしく応じる姿勢は、とても真面目な印象を受けた。

「ああ、たまたま立ち寄った旅行者とでも思ってくれ。

 この町はいったいどうなっておる?」

「数日前に全滅しました。 生き残りは俺だけです」

 あっさりと答えた内容は壮絶だった。

「なんじゃと?」

「化け物にやられました。

 だから、あなたは早くこの町を立ち去った方がいい」

「いや、詳しく教えて欲しい。

 もしかすると、わしの探してる情報の一つかもしれん」

「ほう。

 では、化け物をご覧になったことは?」

「すまんが無い。 同じものかは知らんが確実に居るのはわかるんじゃがな」

「少し休憩します。

 こちらへ。この中は暑いでしょう」

 男は、部屋の隅にあった子供用と思われる小さな椅子を持って外へ出る。

「ありがたい」

 ミラ様も男に従い外へ出た。

「そちらへおかけください」

 木陰となっている大きめの木の下に置くと、座るように促した。

「気を使わせてすまんの」

「いえ、立話でする内容でもございませんので」

 そういうと自分は、近くの芝生の上に胡坐を掻いた。

「では、話してくれるか」

「はい。

 先日、町はずれの洞窟に化け物が突然現れました。

 その近くで鉱石を掘っていた者達がまずやられました。

 逃げ伸びた者が衛兵に知らせると、討伐隊がでたようです。 しかし、町へ向かっていたそいつと鉢合わせ、壊滅。

 ただその時間の間に、王が城に町の者全員を避難させた。結果的にそれが最悪の結果となったとも言えるのですが。

 町の外へ逃げる選択肢はもう間に合わなかったのです。

 城壁などやつにとっては何の障害にもならなかった。 そして侵入すると一網打尽です」

「移動してくる……だと?」

「ええ、人が走るより早く。

 途中、悲鳴などが聞こえだし事態が飲み込めたときに、俺は戦いました。

 全く歯が立たなかった」

「どうやって助かった」

「信じてもらえないでしょうけど、俺には空を飛ぶ能力がある。誰にも見せたことは無いし話した事もない。でも、もういいや。

 だから、飛んで逃げただけです」

「お主か、お主なのか、わしの探し人」

「え? その反応、まさか?」

 飛行を疑問に思わず疑う言葉も返されなかったのだ。

「そうじゃな。

 わしも言おう、わしは魔法少女じゃ」

「なんと、俺は……俺は、神様の導きってやつを初めて味わった気がします。

 このタイミングで、魔法少女が目の前に現れてくれるなんて。

 ……お察しの様に俺は魔法少年です」

「神の導きはあの神の力じゃ無いがな」

「ええ、そうですね。

 では、話を少し変えます。

 あいつは触れた神力を消すのです。

 SWハヤマサが、身を挺して俺を庇って消された時、咄嗟に空へ逃げた。だから生き延びられた。

 あの時、戦わずに、一人でも救う方に動いて居れば……うっ……」

 惨劇を思い出したのだろう、少し下を向き涙を流す。

「少しこちらの話を入れておこうか」

「……お願いします」

「わしは、まだ直接関わってはおらんが……」

 ミラ様は自分の知っている状況を話した。

「確かに似たような敵ですね」

「一緒に戦ってくれる者を探しにこの町に来た。

 以前に気になる噂を聞いたことがあったのでな」

「一度だけ、魔獣を退治したことがあります。 こっそりやったので正体はバレて無いですが、その事実は残りましたから」

「どうじゃ、頼めないか?」

「構いませんよ。 もう、一人になってしまいましたし、目的も無いですから」

「おお」

「ただし、生き残れたらですが」

「まさか、一人で挑むつもりなのか?」

「ええ、戦います。 復讐ではないですよ魔法少年ですからね、あんなものを人の世に放っておけないだけ……いや、やっぱり復讐だな。 妻と娘を殺されましたので」

「十日、いや一週間ほど待てぬか?

 火力のあるやつを先によこす。わしは片道五日はかかるが、やつらなら二三日で来れるはずじゃ」

「やつの動向が読めません。 移動されたら、被害が出るまで見つけられないかもしれない。

 移動を始めるまでなら待ってもいいですが、俺もいずれ寝てしまいますので……」

「見失う可能性か……、

 勝算があるのかの?」

「もちろんです。

 それにあなたにも少し力を貸していただけないでしょうか? 危険ならすぐに逃げてもらってかまいませんので」

「承知した。

 そして、必ずお主を連れて帰ろう」

「ありがとうございます。

 では、あと二時間ほど母屋の方で休んでいてください。ある物全て自由に使っていただいて構いませんので」

「お主は?」

「今、刀を打っています。神力武器では中まで届かない、普通の武器では強度が持たなかった。強度がさほど変わらなくとも切断速度の違う刀ならと。

 俺は鍛冶屋です。 刃物は包丁くらいは作りますが、武器を作るなんてのは初めてです。

 それでも、古い記憶を元に作っています。 自分用を作ってもらうときに手伝ったことがあるんです」

「お主、沖田か?

 ほとんど存在しない魔法少年で刀と言えば他に該当者を知らぬ」

「え?

 そういえば、自己紹介もしていませんでしたね。

 その通りですが、あなたは俺の会ったことがある方でしょうか?」

「忘れられて無ければな。 キャサリンでわかるか?」

「はい、もちろんです。

 神ととても仲のよかったお嬢さんだ。 楽しそうに話をしてるのをよく拝見しました」

「あれは、暇つぶしをしてただけじゃよ。 わしはド田舎に暮らしとったから娯楽が無さ過ぎてな」

「俺は、単独行動専門でしたので、神の部屋で見かける魔法少女はあなたばかりでした」

「だとすると、やはり神様のお導きかもしれんの」

「そう信じてみれば、さらに勝てそうな気がします」

「では、わしで手伝えることがあれば呼ぶといい、遠慮なくな」

 ミラは、椅子から降りると母屋と思われる方へ向かった。

「大丈夫です。

 おかげさまで気力が戻ってきました。

 変身……」



 三時間後、町はずれの洞窟前。

「では、アリスフォームをお願いできますか」

「もちろんじゃ

 ……ゲットチェンジタイプスリー」

 エプロンドレスに似たミラの衣装は確かにアリスの名前にピッタリなイメージだろう。

 そして、年齢は十二三歳くらいに見える。

「やはり、その姿はあなたに一番似合うように設計されていますね」

 沖田は、背中に背負ってきた大きな刀を地面に突き立てた。

「そんなのは知らんよ、しかも顔は変わっとる」

「では、変身、ダンダラ」

 沖田は、抑揚なく変身の言葉を並べた。

 沖田の姿は新選組の隊服をモチーフにされたデザインの衣装に変わる。鉢金が一部透明化されているがさほど違和感は無い。 合わせて、年齢が十五六の少年へと変わっていた。

「美剣士とはよく言った物じゃな」

「俺には必要のない賛美です、それに顔は変わっています」

「お互い様じゃな。

 さて、ゴッドパワー、

 ゴッドボデー、

 ゴッドスピードっと。

 これでよいか?」

「はい、ありがとうございます。 ご存じないと思いますが、強化魔法があるのはそのフォームまでなのです。

 だから、それを含めてあなたに会えたこと。 俺には最適でした」

 沖田は、突き刺していた刀を手に取り、肩に載せる様に持ち直す。

 少し小さくなった体にはなおも巨大に見える刀、鞘までは作っている時間は無かったのだ。

「それは確かに知らなかったぞ」

「個別の力を上げて、強化が不要になったからです」

「なるほどの」



 そして洞窟の入口に近づく。

 洞窟は半径五メートルほどの口を開けている。

 二人は、ゆっくりと中へ入る。

 二十メートルほど進んだところで奥に何か動く気配が見えた。

「まだ居てくれたか」

 沖田が小さくつぶやいた。

「おい、あの位置から何か感じてたとかではなかったのか?」

「まさか? 刀を作るのを優先したのです。武器も無ければ本末転倒ですからね」

「そりゃそうじゃが。

 それにしても巨大な刀じゃな。 わしの知ってるのとかなり違うわい」

「このくらいで無いとだめなんです。

 戦ってみればわかります。 戻りましょう、戦うのは外です」



「たいへん申し訳ないのですが、最初の誘導をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「おびき出しじゃな、大丈夫じゃ。

 ……ゲットチェンジタイプツー。

 ゴッドルガー、セット」

 ルガーという短銃に似たデザインだが、手の大きさに合うサイズに縮小されておりおもちゃにしか見えない。

「なるほど。

 皆さんで強化魔法を掛け合って、そのルガーの弾は相当強化されていたと聞きます」

「そうじゃな、残念ながら一人ではただの豆鉄砲じゃ」

「では、おびき出した後は、適当に遠隔攻撃をお願いします。

 そして、もし俺が負けそうな時は放って逃げてください。

 その時は、願わくば、いつか、他の魔法少女の方々で決着を付けてください」

「承知じゃ。 じゃが、今回で終わらせよ」

「もちろんそのつもりです。

 なぜなら、前回届かなかった俺の力も、あなたのくれた強化魔法とこの刀によって必ず届く。

 さらに、あなたの穿つ小さな穴は少しでも確立をあげてくれることでしょう」

「そこまで持ち上げんでよい。

 では、呼んでくるよ」

「お気を付けて」

「お主もな」



 一分後。

「来るぞ~……沖田?」

 ミラが洞窟を飛び出て来た。

 そこに沖田の姿は無かった。

 化け物が、飛び出してきた。

 その頭上より、高速で落下したものがあった。

 その巨大な刀は、化け物のまとう人の山から一人の人間の首を斬り離していた。

 化け物は、黒く丸い物が中心にあり、その周囲を二十人ほどの人間が取り巻いていて、さらにそれを何かの力が覆っているのだ。

 覆っているものは魔法少年少女には見えている様で、魔導士の力にやはり酷似しているのだ。

 首が斬られた者の体は、不要になったのか黒い靄に包まれるようにして消えた。化け物が吸収したのだ。

 化け物の移動が止まった。

 そして何かの攻撃が沖田に向かう。

「変身、ダンダラ」

 地面に着地した沖田はすぐさま再変身して距離を取る。

 体ごと敵にあたることで刃を届かせる戦法は、一撃を与えた際に神力装備の一部を消滅させられるのだ。

「沖田っ」

 ミラ様が、沖田の横に並ぶ。状態の確認だ。

「俺たちの攻撃は全く通じないわけじゃないんです。

 最初の戦いのとき、超人兵士も複数いました。

 彼らにはあれが見えませんので戦い様も無いのですが、それでも力任せに削るのを見ているうちにわかったのです」

「おい、あの人間は?

 わしには、生きて、苦しんでる様に見えるぞ?」

「その通りです。

 ですが、あれを全部剝がさないと、本体には届かない。

 覆ってる力はその生かした人間を操って出させているのです。

 しかも即死させないとあっという間に修復します」

「なんてことだ……そうか、あれは、魔導士ということか」

「でも、やるしかない。

 弱体化として必須ですが、何よりも解放してあげたい」

「承知した」

「これを続けます。俺の変身神力の続く限り」

 そこから、ヒットアンドアウェイの戦いが続いた。

 そして、一時間ほどして全ての人間を剥がしきった。

「中は見えたが、そこそこ深い、届くのか?」

 ミラ様が確認する。

「ええ、最後の力をぶつけます。

 おそらく、あれ自身の再生能力も高い」

「ちょっと待て……ゴッドルガー、モードスリー、セット」

 ミラ様の銃の大きさがトリガーとグリップ以外巨大化する。

「それは?」

「わしの全力の一撃じゃよ」

「それあるなら、最初に教えてくださいよ」

「いや、だって、敵も作戦もよくわかってなかったし」

「では、どこかに当ててください。

 そこに俺も合わせます」

「真ん中に当ててやるよ。

 準備せぇ」

「いつでも」

 沖田は刀を捨てた。

「ゴッドショットじゃ」

 大きめの銃口から出た神力の弾丸は、銃口よりも大きく見えた。

 そして化け物に当たり、見えない力にこれまでよりも遥かに大きな穴を穿った。

 沖田は駆けだしていた。

「これなら必ず届く、最初に弾かれたこの技が。

 ゴッドブレード、モードファイブ、セット。

 では、行かせていただきます

 ゴーーッド、ブーーッレイクッ」

 神力の剣は、巨大な光の柱となって化け物にぶつかる。

 ミラの開けた穴に入ったそのエネルギーは、対消滅しつつさらに奥まで突き抜けた。

 その光が核らしき部分を消し去ると、残った部分も霧散し化け物の姿は見えなくなった。

「おお~」

 ミラ様が歓声を上げた。

「終わりです。

 ちなみにですが、刀を造らなかった場合の別案だと。

 日に一発撃つのもやっとなこの全力攻撃を壁を取り払うまで数日続けていたでしょう。

 もし、途中で壁にするための人を探しに移動を始めたら、もう手はありませんでした。

 だから、刀を打っていた甲斐がありました」

「そこまで含めて神様の導きということにしておこう」

「ええ、勝てましたから」

「一つ聞いてもよいか?

 答えたくなければよい、ばばの興味本位の問いじゃ」

「なんでしょうか?」

「見えていた者に家族は居たのじゃな?」

「一撃目に斬った。 あれは俺の妻です」

「助ける方法はわからなかったのじゃな」

「ええ。

 まずは家に戻って休みましょう。

 その後に、そちらのお手伝いに向かいます」

 沖田は、立ち上がるとミラ様を背負った。

「すまんの」

 それなりの老齢での戦いは疲労もひとしおなのだ。

「あんなのが他にも居るのなら、今倒したやつは本当の仇では無い。 全て倒したい。

 だから、他の町も気になりますが、まずは他の方々と合流を優先することに同感です」

「ああ、皆で全て消し去ろう」

「それから、俺が小舟を持って飛びますよ。途中それで休憩しながら行きましょう」

「重ね重ねすまんの」

「何をおっしゃいますか。

 俺は、返せないほどの恩を受けました。

 お互いさまとおっしゃるかもしれませんが、そうさせてもらわないと俺が納得できない」

「了解じゃ。好きにせぇ。

 何か変わるわけでも無いなら、好きに納得してくれればいい」

「ありがとうございます」


 この後、沖田が隣町の町長宛にこの町の状況を知らせる手紙を置きに行き。

 準備を済ませると、戻るべく飛行に移った。 しかし、速度の関係で、沖田が船だけでなくミラ様も背負ってとなったのは仕方が無いだろう。

「すまんの~」




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