帝国遠征
敵拠点、指揮官用個室。今は、バーストルが利用している。
据付のデスクで何かを書いていると、扉をノックする者が居た。
「入りなさい」
「治療ののちこちらへ行くように指示されました」
魔導士がゆっくりと入室する。負傷した片足はギブスと包帯で固定され、松葉杖での移動なのだ。
「ああ、そこに座りなさい」
据付のベッドの方を指さして指示する。
「バーストル様、あの、如何様にも罰はお受けいたします」
魔導士は、立ったままだ。
「罰とは?」
バーストルは、答えながらベッドへ座るように促す。
「わたくしの力が足らず。申し訳ございませんでした。
取り逃がしただけでなく、バーストル様に敗北を認めさせてしまいました」
魔導士は、頭を下げようとしてよろめいた。
「それで、わたしが君に罰を与えるために呼んだと?」
バーストルは咄嗟に支え、そのままベッドに座らせ、自分は椅子に戻る。
「は……い」
「そうか、そんな顔をされると確かに虐めてやりたくはなるのかもな。
だが、今回の件、お前が気にすることでは無い。全て俺の采配ミスだ、申し訳なかった。
あれの事をほとんど分かっていないのに、中途半端な作戦を実行してしまった。
とはいえ、それが目的でもあった。
そして、お前のおかげでそっちの目的は十分達成された。
あれの情報がいろいろと得られたのだ。 想定外の情報を含めてな。
言葉では負けと言ったが、成果としては勝利だよ」
「ですが……」
「それ以上言うのは、逆に俺が責められていると感じるぞ。
お前を負傷させてしまった事は、とてつもない後悔だからな」
「……あ……申し訳ありません」
「だからもう忘れろ。 それでいい。
それに、しばらくあれとは関わらない。
まともに倒そうとしたら、かなりの戦力が必要だ。
本国にまで攻めて来るようなら別だが、こちらで暴れられる分には痛くもかゆくもないからな。
これまでの様に港の修理や武器の輸送などを続けて、好きなように邪魔させればいい。 それで、人的被害は想定不要という安上がりだ」
「わかりました。
では、お呼びになられたのは何か御用でしょうか?」
「ああ、御用だ」
椅子から魔導士の前に移動し膝を付いて魔導士の頭を両手で押さえて顔を自分に向けた。
「は……い」
「さっき言ったが、俺が詫びるためだ。
……ロマリ、生きていてくれて良かった。
町など吹き飛ばされても、お前だけは連れて逃げるつもりだった。
俺は、魔導士を一人も死なせるつもりは無い」
詫びを告げると、軽く体を抱いた。
「……あの……」
魔導士の瞳から涙がこぼれていた。
「部屋に戻りなさい。
明日の朝、本国に戻る」
バーストルは、魔導士の体を放してから指示を伝えた。
「はい」
魔導士は小さく答え、うつむいたまま部屋を出て行った。
彼女に階級は特にないが将校扱いであるため自室をあてがわれている。
「前任者の魔導士に対する扱いが知れるな。
帝国の最強戦力を……いや、確かに自分よりも強い者達をどうやって指揮するか、俺のやり方も違うのかもしれん」
バーストルは机に戻り自問した。
彼は、魔導士部隊の隊長に先日着任したばかりであった。
SWカナデに情報共有の為、今日のでき事を説明した。 旅行の準備をしながらだけど。
「ふむ、かたや”イケメン将校&薄幸の美少女魔導士”VSかたや”おっさん&魔法痴女”の構図かぁ」
「ポイントそこかよ。
まぁ、あながち間違って無いかもだけど、おっさんは止めたげて」
「ははは、ほんと、隊長さん助かってよかったね」
「ええ、また、お話できるわ。
ただ、家族居ないって言ってたのが少し引っかかってるんだけどね。
娘さんが居たはず、イコールお嫁さんも居るじゃん?」
「離婚したのかもね。 あなたを説得するための嘘って線が強いかもだけど」
わたしもそう思ってます。
「きっと後者よね」
「ああ言う人好きよね」
「ええ、ああいうおじさま大好き」
「結婚してもらえば、独身って言ってるなら」
「そういう好きでは無いし、それにわたし、許嫁居るのに? あ、いや、もう居ないんだった」
「好きな方でいいけど。
話を逸らしたのよね。 ええと、さっきの話の二人を見て迷いでも出た?」
「ええ、少しね。
少女の危機に颯爽と現れて、さらにその身が危険だと判断すると、あっさりと撤退したのよ?」
「優しすぎるわね。
でも、それだけだと、重要でも無い戦闘を終わらせるきっかけにしただけで、ついでに部下へ飴を与えた様に見えなくもない」
「判断材料が見たものしか無いから解釈とか想像はどうとでもできるもんね。
帝国って、なんで戦争するんだろ」
「マイリスせんせに聞いた話だと、ラスボスは化け物っぽくなって、そこがなんか引っかかるんだけどね」
「そうね、周辺国全部に喧嘩売っていても、単純な侵略でも無さそうだから、そこに行きついてしまうわね」
「独裁者が悪魔の力を使って世界征服しようと企んでるみたいな」
「うわぁ、それだと本当の悪者ね。悪魔は今のとここっちだけど……。
とにかく、帝国に入れるらしいから、何かしら調べてみるよ。
あちらの魔法少女さんにも協力してもらえると思うし」
「そうだね。
じゃ、行ってらっしゃい、わたしのこともよろしく伝えておいてね」
「おまかせ~。
そして行ってきます」
東国の北端の岬で、SWパラムと合流し帝国に向けて上空を進んでいる。
念のため雲の上を飛行しているが、雲の切れ間から見える海がとても綺麗でずっと感動している。
海自体は、散歩がてらに眺めたりもしたが、海上まで出たのは今日が始めてだ。
飛行のために変身したのはウィンドフォームだ。飛ぶだけならどのフォームでもいいんだけど、いちおう風のフィールドで空気抵抗を減らせるのです。
SWについては魔法体なので、飛ぶときは実体を消しているからそういうのは関係無いのよ。同行者のために姿は見せてくれているのですが、お化けみたいな感じでしょうか。
「神様の部屋を経由できたらどこでもあっという間なのにね」
神様の都合で世界各地に派遣される時には、参加者を一旦神様の部屋に収集して、目的地付近に出現させるので、移動コストゼロだったのです。
「だよね~」
SWパラムも同意してくれるのは、やはり過去から同じなのだなぁと納得。
そのまま帝国領に入りいくつか町を越えて行くと、はっきりと違いがわかる大きさの町が見えた。
先を飛んでいるSWパラムがこちらを振り返って手で降りる合図をする。
いちおう人目が無いかを気にしつつ降下、町の中でも人気のない場所に着地すると、すぐに変身を解いた。
「今更だけど、これで大丈夫?」
町娘風ワンピースだけど、学生寮の近くのお店で急遽購入してきた。
変身状態でここまで来て、ふと帝国内で浮かないか気になったのです。
ちなみに、旅行の荷物は変身時に着衣と一緒にしまわれて居て、変身解除で現れる。 鞄は二つ、一つはSWにお願いする。 一人だけ大荷物も怪しいので。
着替えも入ってるので、それになら変更可能。
SWパラムも帝国内通貨はあまり所持していないらしいので、できれば衣装の調達は避けたい。
「よいと思いますよ。
じゃ、こうかな」
SWパラムは、着ていた衣装を少し変形してわたしの服に近くしてくれた。 ほんと彼女たちの能力は便利だわ。
「ありがとう」
「では、宿を探しつつ食事にしましょうか」
もちろんSWには食事は不要だ。食べることはできるが意味はない。
「そうですね。 わたしお腹すきましたわ」
二人は、上空から見えたそういうお店のありそうな場所を目指して歩き出した。
田舎者丸出しであちこち見回しながら歩いてると、突然横から男の人がぶつかってきた。
わたしはよろけながらも、そのまま走り去ろうとする男の腕を掴んでいた。
「待ちなさい」
「あっ放置でって、遅かったかぁ」
SWパラムの言葉はフェードアウトしていった。
「痛てて、放せこのあまっ」
と、拳をふるってきたが、あっさりとかわし足を払って地面に伏せさせた。そのまま押さえつける、普通の人間では微動だにできない。
「あなた何かしてきたのね?」
「うるさい、放しやがれ」
「すいませ~ん。
その人、捕まえててくださ~い」
通りの先から、女性の声が聞こえてきた。
「なるほど」
となんとなく察していると、衛兵達も駆けつけてきた。
「なんの騒ぎだ」
「この人に鞄を取られたの」
ちょうどたどり着いた女性が説明してくれた。
確かに男の傍らにそれらしい鞄が落ちている。
男は諦めたのか大人しく地に伏している。
「わかりました、連行して話を聞きます。
そちらの女性、もしかして超人部隊の方ですか?」
「あ、いや、そうかも?」
この体格差で容易に押さえ込めてる時点でそう思うかぁ。
「身分証を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」
みぶんしょう~?
「ごめんなさい、今日は持ってきてなくて」
「では、ご同行いただいてもよろしいですか?」
「行かないとだめですかね?
これからこの人とランチに行こうとしてたので……」
「あまりお時間は取らせませんので」
「もちろん行きますよ~」
SWパラムがあっさり決めた。
「あ、はい」
わたしも同意するしかない。
でも、大丈夫なの? 身分証が無いどころか住所すら無いじゃん。
(「たぶん、最初から疑われてる。
いざとなれば逃げるのみ」)
SWパラムが小声でそう伝えてくれた。
(「なるほど、確かにどうとでもなるか」)
そして、さっきの男の人とは別な部屋に案内された。部屋の外にSWパラムさんを残して一人だけです。
部屋の中では、偉そうで厳しそうな軍服のおじさん、たぶん尋問官が目の前に座り、武器を携えた兵士に取り囲まれています。あ、いちおう手枷をされてます。
それと着いてすぐにやんわりと持ち物検査と身体検査をされました。
「さて、あなた方の正式な所属を教えていただけますかな?」
尋問官は早速質問を始めた。自己紹介とか、まぁいらないよね。
「ちょ、超人部隊……です」
これくらいしか答えを思いつきません。
「それは俗称でしょう」
ああ、やっぱりそういう。
「すいません、野良の超人です」
もうこれでいいや。
「野良って、野良犬とかの野良ですか?」
まともに返すんかい。
その時、尋問官は、私たちの後方に控えていた者に目くばせした。
「あの、ごめんなさい。
ここで一番偉い人を呼んでいただけますか?」
「どういう意味でしょう?
この国に存在する超人は登録が必須です。
ゆえに、未登録の超人は、敵確定になります」
「敵だと確定したら?」
「それなりの扱いになります。
なお、この場の者を全て殺したとしてもこの超人対策部屋からは出られませんので御覚悟願います。
もちろん、お仲間の処遇も保証できません」
「じゃぁ、ええと、バーストルさんを呼んでください。知り合いなの」
「隊長の名前を知っているからと言っても無意味です」
「違うわ。 そうね、こう伝えて、
”港で会った美少女が会いに来た”って。
それくらいいいでしょ?
もし無視したら、あなたの首が飛ぶ程度じゃ済まないかもよ」
「いいでしょう。
それだけでも十分おもしろい情報です。
この後、もっといろいろ話していただくことになりますが、まずはその話に乗ってみましょう。
バーストル殿は、たまたま帰還中でもありますしね」
「では、お願いします」
たまたま……かぁ。
「誰だ?」
入室してきたバーストルさんの最初の言葉だ。
そりゃそうよね。この姿で会って無いもん。
「ロマリさんは元気ですか?」
ヒントその二だ。
「まさかと思うが、貴様、白い悪魔か?」
周囲の緊張感が一瞬にして増したのが分かる。あ、ビキニって言わないんだ。 そうよね、普通言う方も恥ずかしいでしょう。
「そうですね、肯定してもいいですけど、どうしましょうか?」
周りの人達を見回しながら余裕の表情で聞く。
「全員退出願おう。ここはわたしが引き受ける。
それから、ここでのことは見なかったことにする様に、わたしが皇帝に報告するまででいい」
すぐに、その場の全員が指示に従って部屋を出て行った。ほんとに偉いのね。
「何が狙いだ?」
「何もしてこなければ、大人しく去りますよ。 友人の家に行く途中に休憩に立ち寄っただけだから」
「手を出したら?」
「この町を焼き払います」
「民間人ごとにか?」
「もちろん、そうなりますね」
「人助けをしていたと聞いた。
また、矛盾していないか?」
「あの時、言いましたよね?
ただ大事な人を守りたいが理由だって」
ヒントその三。
「本当にあの時の白い悪魔ということか……。
その余裕も頷ける」
「そういうことです。
魔導士さんが何人居ても、わたしの火力は止められませんよ」
「なんてことだ。 帝国内部にこうも易々と入り込まれるとは」
「せっかくなので、ここに一晩泊めていただけます?
トイレとお風呂が付いてる部屋ならそこから出ないから。
この際、女性なら監視の人が一緒に居てもいいです。
お礼に明日の朝、出発するときにいいものを見せてあげますから」
「いくつか質問させてくれ」
バーストルさんは頭を抱えている。
「どうぞ」
「第一は、貴様は何者だ?と問いたいが、教えてくれんだろう。
だから聞く、なぜ、わたしを指名した」
「帝国で知ってるのあなたしかいないし、偉い人っぽいし、港の件を出せばそっちが会いたいかなって。 でも居ると知ってたわけじゃやないのよ、居なければ別な流れになったと思うけど。
さっきの人、穏便にことを進められそうな感じじゃなかったからね。
あと、別な国の友人の家に行くっていうのは本当、わたし空飛べるから。 そのついでに帝国がどういうところか見てみようと思って、そしたらちょっと目立っちゃって、こうなってます」
「なるほど、どこかの宿に居られるよりも、ここの方がましか、町を人質にされるとは」
「わたしも聞きたい、ううん、教えて欲しい。
帝国はなんで戦争をするのか?」
「隣国と敵対しているからだ」
「それじゃ、なんで敵対してるのよ?」
「今のが答えで不満なら、我らの敵国に聞いてみるがいい」
「ずるい」
「部屋を用意しよう。
二人で一部屋でかまわないな?」
「ええ、もちろん」
おお、要求してみるものね。
条件にほぼ合う部屋(バーストルさんの部屋)を用意してもらった。見張りも無し。 で、部屋主は別な部屋を使ったみたい。
そして、部屋では差支えない話をしつつ過ごして早めに寝た。
早朝、裏庭を通って外に出た。
少し進むと、誰も立ち入らなそうな森に入った。
居るのは、二人とバーストルさんのみだ。
「十日間は向こうに手を出さ無いで欲しい。
仲間は居るけど、わたしの居ない間にはちょっとね。その時は、絶対仕返しにくるから」
「私の一存では決められんが、警告と受け取ろう」
「……では、目にも見よ。
神力変装……ふぁいなる~ふぉ~むっ」
「白い……ビキニの悪魔」
「その呼び名、とっても恥ずかしいから、できれば、いや絶対止めて欲しい。
変身少女とかで手を打つわ。
だから、
神力変装……シャドォ、フォーム。
ほら、色々なれるんだから、白いビキニの、あっ」
シャドウフォーム、下は白のスカートだけど、胴も手も足もパール紫の鎧で、めっちゃ騎士のイメージでカッコよいのです。
インナーのレオタードだけが黒なんだけど、透明になっても見え無いとこだからまぁ大丈夫なのだ。
なのに、なぜかタイミングよく風が吹いた。 白いスカートが閃いた。
「なんで履いてないんだ?」
冷静に聞かれた。
「見られた」
しまった~。スカートを押さえつつ、バーストルの顔を覗き込む。
「見えた、だ」
顔をそむけつつ、言い訳をしているのかな。 条件反射で視線がそこに向いたのは、なんとなく理解してますけどね。
「神力変装ふぁぃなるふぉ~む」
素早く変身をし直した。
「貴様の格好には意図があるのかも知れんが、できれば止めて欲しいな。
うら若い女性が人前でしていい恰好では無い」
「いやいやいやいや、この格好に私自身の意図は無いのよ、仕方ないのよ設定なんだから。
シャドウの時は、一応後から下は付けるけど、他は装備の都合上無理がある場合が多いのっ」
「せっかく見せてもらって、いや、変身の話だぞ。
うむ、見せてもらって申し訳ないが、上層部へ呼称変更を進言する報告書への記載内容を組み立てられる気が全くしない。
悪いが白いビキニの悪魔のままで我慢してくれ」
「はい、こちらこそ御見苦しくてすいません。 今のを、記憶の奥にしまってくれるなら、もうそれでいいです。
では、さよなら」
双方早口でそう会話しながら、SWパラムを抱っこしてからすぐに飛び立った。
現実逃避をするように、わたしの脳裏には”はだかの王様”の話が浮かんだが、あれは本当に着ていないので関係なかった。
ちきしょう、恥ずかしかったよう。
初めての帝国遠征は、恥をさらしに立ち寄った記憶が主になった。後は別な悪名が付かないことを願う限りだった。信じてるよバーストル。
この間、ずっとSWパラムが終始笑いをこらえていたのは……まぁ、仕方ないよね。
帝国、皇帝の城、謁見の間。
皇帝の前にバーストルが跪き、その後方に二十人ほどが同様に跪いている。
「急ぎ、皇帝陛下へご報告すべきと思いましたので参上いたしました」
バーストルが顔を上げずに報告する。
「お前から直接というのも珍しいな。
しかも、将軍達にも同席願いたいという。
何があった?」
「白いビキニの悪魔が国内に現れました」
こんなとこでもビキニを付けたのはやはりこれが正式な呼称なのだろう。
「なんだと」
皇帝の顔は驚きの表情を浮かべ。 他の出席者がどよめく。
「事なきを得るため要求に従い宿を提供いたしました」
「それだけなのか?」
「はい。
言葉は交わしましたが、知人に会うために他国へ向かう途中でただ休憩に立ち寄ったとのこと、それ以上の情報は聞けておりません。
ただ、警告は受けました。
自分の不在中の十日間は手を出すなと、破れば町ごと消滅させると」
「なぜ、貴殿の所に?」
「北国港で戦った際に名前を覚えていたからと」
「ふむ、行先がどこの国かだな。
十日間不在の真偽もだが、町を消滅と来たか」
「皇帝」
控えていた将軍の一人が発言の意思を示した。
「話せ、マスラ」
「全ての敵国に一斉に攻撃をかけてあぶりだすべきかと思います。
その後、その国はつぶすしかないと具申します」
「あれが付いた国が動く前につぶすか。一国であればよいが、複数国がすでに同調していたとすれば……。
どう思うか、バーストル」
「先日の戦闘も、今回の件も、あれは戦争事態への関与はなるべく避けている様に思えました。
これまでの分析同様です。 空を舞い強力な遠隔攻撃のできる相手に超人では不利です。
魔導士がある程度有効な事はわかっておりますので、体勢を作って迎え撃つしかありません。
今は、寝た子を起こすことにならない様に慎重な動きが必要かと考えます」
「では、将軍を集めた理由は何でしょうか?」
別な将軍が聞く。
「姿を見せた以上狙いがあるのではと思っています。
各戦線に対して警戒する様連絡をお願いしたいのと、十日間、勝手な行動を控えた方がよろしいかと思いまして。
また、他の悪魔の動きに気付きがあれば情報共有をお願いしたかったのです」
「どうだ?」
皇帝が将軍達に問う。
全ての将軍に意見は無かった。
「なるほど、他の悪魔も移動している可能性がありますね」
別な将軍が納得する。
「十日後に何か起こるか否か……。
白い悪魔の件を踏まえて、各敵国の動きに注意せよ。
合わせて可能な限り情報を集めよ」
「はっ」
将軍たちが敬礼をした後その場を後にした。