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転生魔法少女は悪名「白い(ビキニの)悪魔」を払拭したい  作者: 安田座


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対魔導士

 


 第四次人質救出作戦は、敵の罠であった。 だけど今回は、なんか流れで西国の隊長との共闘になったのです。

 実は、敵側は二面作戦を展開してきたのだ。それは、わたしが片側にしか現れないことを確認するためなのかもしれない。

 だけど、それを逆に考えて、両方に行かないという形を作るつもりでした。いつも以上に隠れて補佐だけに徹するつもりだったのです。

 しかし、ついに魔導士が参戦して、その圧倒的強さに、兵士たちはあっという間に倒されて西国の隊長も窮地に陥ることとなってしまった。 そこでわたしは、つい助けに入ってしまった。

 恰好は見た目順当にウィンドフォームで、空気を操りかまいたちによる遠距離攻撃ができます。 主とする武器には双剣がありますが、魔導士相手にはリーチが無いと役に立たないかもしれない。

 なお、ウィンドフォームは鶯色のハイレグのレオタードが魔法少女達にものすごく不評だったのを覚えている。 このフォームの黒い部分は脇の下のラインでレオタードの下まである。つまりそこが透明で前後がどうやって繋がってるのか謎な衣装になっている。他のに比べれば可愛いもんである。はぁ~やれやれ。

「先日の侵入者とは魔力の大きさが全然違いますね。 でも、白い悪魔でも無いようですし」

 魔導士は、抑揚の無い小さな声でそう言った。若い女性の声だ。

 ローブとフード姿はイメージ通りだけど杖とかの武器類は持ってない様です。


 戦闘に入ると、やはり相性最悪で劣勢状態。

 それは、魔導士がバリアの様に使うフィールドが、かまいたちの様な攻撃では中まで通らない、そして武器は触れると溶けてしまうのだ。魔力要素が同系統か反対系統化で、同化対消滅する感じだろうか。

 それは攻撃に利用されても同じで、触れられると装甲が消える。 体は魔力では無いから問題は無いかというとそうでもなく、物理的なダメージはそれなりのを受けるというやっかいさ。

 装備が溶けきる前に再変身すれば元に戻せるが、一旦変身を解除するか別なフォームにならないと行けない制限で、一人何役だとバレてしまうのでしたくは無い。

 でも、背に腹は変えられないとやっぱりお馴染みファイナルフォームに変身、どのみちもう一方の作戦には対応できないからと開き直ったのもある。

「ゴッドキャノン、モードスリー、セット」

 すぐに武器を現出。

 倒れこむようにして、砲口が地面に接地したところで撃つ。その光線は、魔導士の足元を掬うように移動した。

 魔導士のバリアフィールドは、自分の足元を削らない様に地面から少しだけ隙間がある。構造物や地形に影響を与えたり、自分の進行に不具合が出て進めなくなる可能性もあるからだろう。

 光線は、そのわずかな隙間を付いて魔導士の足を削っていた。

「ぎゃっ……」

 魔導士は、小さな悲鳴を上げて地面に伏した。

 右足の先から血が溢れ出している。

「ごめんね、命までは取らないから、そのまま寝てて。

 行きましょう」

 結果を確認してから、隊長に声を掛ける。逃げるのだ。でもその時。

「待て」

 魔導士とわたしの間に割って入る様に、一人の高級士官らしい軍服姿の男が立っていた。

 腰に剣を二本挿しているのは、侍を思わせる。

「バーストルさま……」

 魔導士が、消えそうな声で、おそらくその者の名前を口にした。

「バー……ストルだと?」

 隊長が、苦しそうにその名を復唱する。

「知ってる人ですか?」

 つい聞き返してしまった。答えなくてもいいから大人しくしててと思ったけど間に合わず。

「帝国の騎士でも……最強クラスの超人だ。

 おい……ここは俺に任せて行け……皆を無事に連れて帰ってくれ、……たのむ。

 あいつは、二人がかりでも倒せん」

 隊長がよろよろと立ち上がる。

「魔導士でないなら……えっ」

 隊長より先に男に向かおうと一歩踏み出した時、わたしの肩にバーストルの剣がぶつかっていた。 その一撃の重さにわたしの体が地面に倒れこむ。

「ほう、わたしの剣が通らないのか。

 おっと」

 わたしへの感想を口にしつつ、隊長の槍をかわして距離をとる。

「何が起こったの?」

 起き上がりながら、誰に問うともなく疑問が出た。

「まともに戦ったら、いくらお前の装備が固くても持たないぞ。

 だから、行ってくれ。 逃げる時間くらいは稼いで見せる」

 隊長は、わたしを制して前に進み出ていた。

「貴様は、ガットだな。

 ついでにというのも失礼だが、討ち取らせてもらおうか」

 バーストルは、不敵に笑うと剣を構えなおした。

「しかし……」

 私は、共闘を願いたいのに、目の前に立つ巨漢に強い信念と覚悟の様なものを感じてそれ以上は言えなかった。

「お前は、あの時の娘だな。

 礼が言いたかった。 あの時、止めてくれてありがとうとな」

 隊長は振り向かず。なぜかそんな昔の話を持ち出す。

「あれは、わたしの勘違いで……」

「やはりお前だったのだな、歳はとらないのか」

「あ、ちがっ……じゃなくって……、

 ああ、そうじゃない。 あの時は邪魔してごめんなさい。

 でも、ここには、わたしが残りますから」

 かまをかけられてた。 でも、それはもうどうでもいい。 今は、この人を残して行きたくない。

「お前なら理解できるだろ?

 他の者達を優先しなければいけない理由が。

 それに、気にするな、俺には家族がいない」

「でも……」

「だから、今は行け。

 そして、次は勝て……」

「……はい」

 そう答えて、後方に控えていた救出すべき人々を誘導すべく先頭に出る。

 この作戦の失敗は今後に大きく影響するだろう。

 わたしが関わってしまった事でそれはさらに重くなっているのだ。

 それ以上に、わたしは何のために来たのか、人質を助けるとは、それが最優先だ。それを果たすために犠牲となった人達の想いも無駄に出来るはずは無い。 


 激突する音が後方に響く、それを無視して、救出した人達と共にできるだけ急いで離れた。

 だが、二百メートルほど進んだところで、

「魔法少女、止まりなさい」

 いきなりわたしの横に少女が現れ並走する。少女と言っても十代後半くらいだろうか。

「え?」

 今、魔法少女って言った?

「わたしは味方よ、わかるでしょ、魔法少女さん」

「あなたは誰かのソウルダブル?」

「ええ、そうよ、だからちょっと止まって。

 ここからはわたしが引き受けるわ。

 だから、あなたは戻っていいわよ。

 戻りたいでしょ?」

「あ……はいっ」

「いい? 負けそうなら、ちゃんと逃げるのよ。

 一人なら、それは簡単でしょ」

「ええ、まぁ」

「では、行って」

「皆さん、ここからはこの人に付いて行ってください。

 わたしは隊長さんを助けに戻りますので」

 咄嗟に皆に指示を伝えて消える様にその場を離れた。

 後は、うまくやってくれるはず。魔法少女のSWなら。

 この人に感謝を伝えるためにも絶対に勝って戻る。



 わたしは急いで先ほどの戦闘の場に戻った。

 そこを離れて、二、三分くらいは経っていただろうか。

 そして、地に伏している隊長を見た。 なぜだろう、このものすごく頭に血が上っていくという感覚。

「きさま~っ」

 勢いのまま隊長の前に立つ男に斬りかかる。 わたしの手にあるのは光子剣だ。

「む!?」

 男は、一瞬受けようとして出した剣を素早く引っ込めて後方に飛んだ。

「避けたの?」

 男の剣を消し飛ばしたつもりの光子剣は、勢いあまって地面を少し蒸発させただけだった。

「また、見たことのない武器を使う」

「ええ、理解した様だけど、そんな剣で受けられるものでは無いわよ」

 よかった、息はある。 威嚇しつつ隊長の状態を確認した。

 でも、すごい血が広がってる。 急がないと。

「ロマリ」

 男が口にしたのは魔導士の名前だったのか、何かの指示だろう。

「はぁ、はぁ、どうぞバーストル様……」

 出血の為か、息も絶え絶えの魔導士はそう答えながら見えている左手を男の方に伸ばす。

「そんな手が」

 わたしには、魔導士の手から延びる魔力が男を包みこむのが見えた。

 あれには代替神力は無効化される。

「先の戦闘を眺めさせてもらっていたからな。

 貴様の能力は、これで消滅できると考察した」

「なるほどね。

 では、ゴッドキャノン、モードファイブ、セット」

 光子剣を消して、次の武器を出す。

 頭上に現れた巨大砲塔、モードファイブ、大規模作戦ではほぼこれを使っていた。

 巨大隕石でさえ皆で撃てば消滅できるほどの威力。一人でも大陸の一部を消し去るくらいは不可能ではないはず。 この世界の代替魔力では多少減衰するかも知れないけど。

 そして、宙に浮く。 これで有意性がかなり上がるだろう。

「さらに珍妙な武器、そして、そこからでも攻撃ができると……」

「警告です。

 もう、仕方ないので、ここで引かねばこの地形ごと一掃します」

 はったりが通ってくれないと、ほんとに使う事になるかなぁ。

「貴様は、不殺が信条では無いのか?

 がっかりだ。 これまでの報告では人的被害は無く、そこから信念を持って戦うものだと敬畏を持っていたのだがな」

「そんなただの気まぐれを勝手に信念の様に言われましても。 案外あんた達も甘いのだと知れます。

 だって、死んで欲しくない人の命と比べられるものでもないでしょ。

 正義や道理なんかより、そっちが大事なの。

 誰も殺さずに済む良い方法があるのならそっちを選ぶけど、時間的に思いつかないのよ」

「その方への想いなのかな? 釣り合う歳でも無さそうだが」

「そんな返しが来るとは思ってなかったわよ。

 ただ、ちょっと違うわ、いや、ちょっとずれてるかな。

 この人が大事なのは間違いないけどね。

 だけど、さっき言った通り、ただわたしが大事な人を守りたいのよ」

 そうだ、この世界にはわたしが守るべきと定義された人類は存在しない。でも、守りたい人は居るのだ。

「なるほど、それならば概ね同意しよう。

 わたしもこの娘を救いに出てきてしまった立場だ。

 だから、貴様の虚勢に付き合ってやる。

 それでは、今回は、こちらの敗北としようか。

 とっとと、その男を連れて去るがいい。

 しかし、こうなるのであれば、止めをさしておくべきだったよ」

 生かして利用するつもりだったのでしょう。

「あなたも早くその子を治療に連れて行ってあげて」

 まさかここまで放置されるとは思ってなかった。かなりの流血が見える。死なないとは思うけど……。

「もちろんだ」

 男は、既に倒れている魔導士をお姫様抱っこしようとしていた。

 持ち上げる時に魔導士の頭が下がったからかローブのフードが外れた。 髪も流れて顔があらわになる、ものすごい美少女だった。ただ、なんとなく薄幸のって付けたくなる様な。

 いろいろと思うところはあったが、今は逃げに徹する。 こちらもお姫様抱っこだけど、体が大きすぎて手だけだとバランス悪いので、念のためフローティングシールドで囲んでから飛行に移った。

 ほんと、回復魔法があったらよかったのにとものすごく感じましたよ。

 回復魔法は以前は能力としてあったのだ。一時期にはナースフォームとかそれっぽいフォームもあったみたい。 だけど2000バージョンで廃止されたらしいです。

 魔法少女は、ほとんど傷を負うことは無いし、傷ついても神様自身が癒してくれるのです。

 だから、いちいちナースフォームに変身しなおす意味が無かったからみたい。

 そもそも、人間への救済はできないので、そういう使い方も想定されていなかったという。

 な~んて考えながら飛行していると、

「おい……」

 隊長は気が付いたらしく、薄目を開けると声をかけてきた。

 おぉ、気が付いたんだ。まぁよしよし。

「黙って寝ていなさい」

「お前は……なんなのだ?」

 瀕死でもそれが気になるのか~。

「あなたには関係ないわ。

 教えることは絶対に無いから、大人しく気を失ってなさい」

「では、皆は?」

「仲間が引き継いでくれたから、気にしないで」

 そう、SWは仲間、同時期に活動していなくても意思がずっと繋がった仲間。

「仲間?」

「それもこれ以上はノーコメント。

 あと、しゃべらないでって言ったわよ。

 今度何か言ったら、気絶させます」

 隊長はふっと笑って目を閉じた。

 そういえば、さっき、家族はいないって言ってたけど嘘よね。

 最初に会った時、娘さんがいたじゃない。

 あの時が嘘かも知れないけど、たぶんさっきの方が嘘なのでしょうね。わたしを行かせるための。


 すぐに避難者達が逃げ伸びた先で合流した。

 その後は、兵士の方々にお任せしてSWさんとその場を離れた。

「先日、あなたのSWさん魔導士に見つかってたでしょ、ちょうどこっちの調査に来てたら、偶然それを見かけたのよ。

 わたしはこの道長いから、そんなへましないけどね。

 あ、一応名前はパラムよ」

 SWパラムは、えっへんとポーズを取る。

 可愛い顔にポニーテールの茶髪、普通のボタンダウンのシャツとロングスカートはとても一般人な感じです。

「見つかった件、聞いています」

「だからもあって、追加で調べてたら今回の二面作戦を知ったのよ。 それを主に話したら、わたしが協力に来ることになりました。 今回、主は向こうに顔出してます。

 それと、今度お話をしましょうって主の言葉を伝えにね」

「ぜひお会いしたいです」

「よかった。

 主は先に家に戻ってるから、ソウム国に行くことになるので、帝国を越える必要があるの。

 飛んで行くけど、二日はかかると思って」

「ぶっ通しで?」

「まさか。

 あなたは人間なんだから、休憩を入れるに決まってるじゃん。

 一泊は帝国の宿になるかもだけど」

「そうよね……って、帝国に泊まる~?」

「ええ、でも、帝国って言っても町はたぶん普通よ。 ついでに見ておくと良いわ」

「帝国には行ってみたいと思っても怖くて行けなかったから、案内してもらえるなら、そっちもぜひお願いしたいです」

「じゃ、帝国泊は決定っと。 山中での野宿はしたくないしね。

 できればすぐに出発したいけど、他に都合があるなら後日でも構わないよ」

「いえ、すぐでいいです。二度手間は申し訳ないので、あなたの帰るついでで」

「気にしなくてもいいけど、ありがとう」

「ただ、SWに話をしないとなので、一旦は戻らせてください」

「オッケー。 わたしはもう少し様子を見ていくから、東国の北端の岬で落ち合いましょう。

 場所わかります?」

「大丈夫、了解よ。

 では、とっとと行ってきますね」

 わたしはすぐにそこを飛び立った。

 SWは少しだけ手を振って見送ってくれて、反対方向に飛び立った。




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