表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔法少女は悪名「白い(ビキニの)悪魔」を払拭したい  作者: 安田座


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

沖田の戦い

 


 皇帝の私室。

「わしは、真に情けない男だな。

 己では何もできずに偉そうな態度でただ頼るだけだ。

 彼らは、子供を犠牲にしていることについても触れなかった。

 わしが子を設けていないこと、いや家族さえ持っていないことも、卑怯な行いであろうに……。

 事が終われば責めてくれるだろうか?」

 皇帝は、窓から消えた山の方を見ながら呟いた。

「これまで、多くの命を犠牲にしたかも知れませんが、その何倍も救っていたはずです。

 それを背負う勇気は、賞賛されても責められるべきでは無いはず。

 ただの人間には、どうしようもできないことがあります。

 だからこそ、あなたは、待ったのでしょう?

 そして、彼らの存在を知った時から期待はしていた。

 自分が消えるのもいとわない覚悟で……」

 バーストルは、隣の窓から同じ方向を見つめながら応じた。



 ミラ様とテネさんを連れて戻ると、すぐに準備してくれた部屋に案内してくれた。

 とりあえず広い女子用部屋に沖田さんも来ている。これから情報共有をするのだ。

「あの、子供を犠牲にしていることに文句言いたかったけど、理由とかも聞かなくてよかったんですよね?」

 まず、沖田さんに気になってた事を確認してみた。

「ああ、あの場で話題にして議論になってしまうと本題が進まないからな。

 それに予想は付いた。

 あの男、魔導士は若者しか残っていないと言っていた。

 おそらく年齢によって取得エネルギー量の様なものが違うのだろう、だから、まずくなる前に吸収される。

 もともと、十歳というのにも意味がありそうだとは想像できていた。超人へと変わるのと同じように魔導士適正も出るのだろう。

 そうで無ければ生後か高年齢が先だろうし、代わりを申し出られても代わりようが無いんだ」

「なるほど」

「まぁ、政治的にも徴兵の口実にぎりぎり使えた年齢かもしれんがな」

「効率っていうか、そういう意味ではわかるけど……いえ、代替案が出せない以上、絶対になんとかしないといけない」

「ああ、そうだな」

 それから、皇帝とした会話の内容をミラ様とテネさんにも説明した。

「でわ、お前の考えた作戦とやらを説明してくれるかの?」

 ミラ様は、少し怪訝そうな顔で聞く。信用無いなぁ、とはいえ……。

「ええ。

 単純なので説明も簡単なんですよ。

 まず、壁の前の部屋の前から全力で撃ち込む。

 だめなら続けて撃ち込む。

 そしてもう一発。

 これでダメなら、なんとかもう一回撃つ。

 とにかくがんばって倒すまで撃つ」

「お前なら、そんなとこじゃろうな。

 壁の前の部屋に入るのは危険じゃから、今の我々ではそれがベストなのはわかる。

 じゃが、だめそうなら全員で逃げるぞ、いいな!」

 あ、ダメ出しは無かった。 けど、う~ん。

「でも、倒すって約束したし……」

「玉砕するよりも、次に繋げる方が大事だ。

 やつらとて、それを理解できないとは思えない。

 信用は確実に失い、次が難しくなるじゃろうが、それでも、当たってみるチャンスがようやく訪れた。

 頼むぞ、お前が頼りだ」

 え? なんかそう言われると……。

「が、頑張ります」

 もう、やってやる、絶対勝って成果を出す。犠牲者をこれ以上出さない為に。

「ところで、お前に確認しておきたいことがある」

 ミラ様が、急に妙に神妙な顔で聞いてきた。

「はい?」

「お前は命の重さをどう思っている?」

「ええと、みんな同じ……かな?

 あ、違っ、子供が大事です」

 突然、しかもなんか重い質問だ。

「やはりの、そうでは無い、自分は二周目だから他の者よりも軽いと思っとるじゃろ?」

「ああ、そうですね。そうです。

 で、ええと、何をおっしゃりたいのでしょう?」

「自己犠牲はしないで、と言っているのよ」

 テネさんが、解説してくれました。

「ごまかすのもあれですから答えますけど、必要があれば……。 でも、判断はちゃんとしますから」

「どうだかのぉ、体が先に動くタイプじゃろうに。

 せっかくじゃから、もう一つ聞いておこうか、お前、転生した魂は体の本来の持ち主とでも言うべき魂の場所を奪ったと思っていないか?」

「まぁ、それもそう思ってますよ。

 でも、だからどうとかは考えて無いです」

「転生は我々自身が体現している以上現実であるはずよの? だから、違いは前世の記憶が有るか無いかだと思わんか?

 じゃから、お前の魂は今の体の持ち主で良いんじゃよ」

 妙に優しい言い方だ。

「迷っては居ますけど、だからこそなおのことこの体を大事にすべきと思ってますよ。

 でも、借り物感はどこか感じてたので、すっきりしました。

 確かに転生をやってるのに、否定してもしょうがなかったですね」

「では、もう少し話しておこうかの」

「ミラ様、なんだか元気ですね」

 テネさんが、嬉しそうに茶化す。

「年寄りは、説教が好きじゃからのぉ」

 自分で言うんだ。

「なるほど」

 うっかり声に出してしまった。

「はぁ、まぁよい。

 わしも神に会ったと言ったじゃろ?

 あいつは、人類の成長に疑問を持っていると言っていた。

 数百万年かけて成長した人類が、あと数十年持つかわからんと言う。

 わしの時代からは想像できないほどの技術の進歩が、人の為では無く、人が何もしない為になったと。

 合わせて、自己優先、自国優先の考えが主となりはじめ、他者への思いやりがどんどん薄まっていると。

 自身が、過保護にしてきたことを反省しているとな。

 そう、お前も同じ考えじゃろうが、地球の技術、特にお前の時代のものは広めるのを控えよう、自然発生すれば自業自得の世界じゃが導くのは転生者の役目では無い」

「そうですね。 最終手段にちょっと考えたけど、そう思います。

 でも、神様は人類がどうなったら終わりって思うのかな?」

「わからんが、敵に回るのはやめろと言っておいた」

「こわっ」

「あり得るな、人類に生き残る資格があるかを試す形でなら。

 その場合、魔法少女は神の側か、人類側か……それとも、別れるか」

 沖田さんも、何か感じていたのだろうか。

「魔法少女同士で争うのが、一番嫌だなぁ」

「わしらが向こうに存命であれば、お前とテネは人類側、沖田とわしは神側となったかもな」

「ああ、そんなこと言わないでくださいよ」

「ミラ、冗談はそのくらいにしておけ」

「すまんかった。

 神の行いを人がどうこう言えるものでは無いが、争いはもっとも嫌っているはずだ。

 だから、想像しても詮無きことであった」

「もう、できれば明るい話は無いんですかね?」

「無いのぉ。

 じゃ、お前の夏季休暇の話でもしてくれるかの?」

「ああ、それはちょっと……」

「さて、実行が三日後の朝なら、わしはちと一旦戻ってくる。

 野暮用じゃが、明日の夜には戻れるじゃろう」

 話が変わったというか、打ち合わせが終わった。

「では、わたしはファイナルフォームIIのマニュアルを熟読しようと思います」

「まだじゃったのか?」

 その時、扉の外で声がした。

「お客様、陛下がお話したいとのことですが、ご足労いただけないでしょうか? もし、ご都合が悪いようでしたらその旨お答えください」

「はい、すぐに行きますよ~」

 すぐに、わたしが答えました。

 ミラ様も、帰宅はちょっと遅らせる模様。

 そして、わたし以外の三人は変身。



 数分後、謁見の間。

「この者は将の一人、グナイゼルという者だ。一度、君と相対したそうだ。

 そして、君たちの協力に賛同できない者を代表している」

 皇帝から紹介された者は、身長は二メートル以上あり筋骨隆々の巨躯であった。西の隊長さんと同じ感じだ。

 わたしは、確かにあの人とは数年前に西の橋で戦ったことがある。

 アースフォームで、どつきあいみたいな戦いだったけど、引き分けっぽく終わった様な気がするぞっと、あれを根に持ってたりする?

「この貧弱な者達がどうこうできるなど、現実味の無い話でしょうから、腑に落ちない方もいらっしゃるのでしょうね」

 ミラ様は、若作りの話し方にしている。少し皮肉も入ってる?

「それを納得させられないわしの不手際だ。つくづく情けないと思われることだろう」

 皇帝がここまで自分を卑下するのは何だろう、雰囲気が少し柔らかくなったのも合わせて嫌味も感じないけど。

「あの、なんていうか、情けないとかそういう表現でなくて、そうだ、家庭的みたいで悪くない感じです」

 とりあえず、思ったことが口から出た。

「君は甘いな、これでも何百万の人間を殺して来た者だ。 思っててもそういう好意的な表現はくれるな。

 では、手数ばかりかけて申し訳無いが、できるなら戦って実力を示してはくれんか?」

「わたしは、意味のない戦いはしたく無いなぁ」

 そう、悪いけど今なら猫フォームで圧倒できてしまうと思う。

「悪魔様には、ただの超人など眼中に無いか」

 挑戦者が煽る。

「わたしでもいいかしら?」

 テネさんが、名乗りを上げた。

 そんな、やっぱりわたしがさくっといきますよ、と言おうとしたら……。

「俺がやろう。

 この中では、恐らく三番手だ。 実力を示す相手としては不足かもしれんが、何かあっても戦力にさほど影響は出ない立場だ」

 沖田さんが買って出てくれた。 確かに、物理戦なら適任かも。

「いいのですか?」

 小声の日本語で聞いてみた。

「レギュレーションが違う戦いに意味は無いが、それゆえに俺たちが勝つことに意味があるのだろうと思える」

 小声の日本語で返って来た。

「まぁいいだろう。 俺は、そいつと再戦したかったがな」

 グナイゼルさんは、わたしを指さす。

「俺に勝てたら挑んで見るがいい。

 納得できなければ、この作戦にはご賛同いただけんということだろうからな」

「グナイゼルよ、その者は化け物を倒したという男だ、不足は無いだろう?

 わしもその男の力を是非に見たい」

 皇帝がその場を治めるべく決定した。

「ただ、鍛冶屋と言ったが、訳あって剣の心得はある。 刃の無い練習用の剣などあればお貸しいただけるか?」

 沖田さんは、決定したことから話を進める。

「俺は刃があっても構わんぞ、あんたが俺を殺せる実力であれば皆も納得することができよう」

「あなたの篭手相手では、妥当な選択と思ったが、それともそちらも真剣を使用するか?」

「まぁいい、納得のいく戦いをしてくれるのだろうからな」

「ご期待には応えると約束しよう」

 沖田さんは、静かに答えた。

 う~ん、やっぱりこの戦い必要なのかなぁと、わたしはどうも釈然としない。



 私たちは、そのまま城内にある訓練場に案内されました。

 皇帝とバーストルさんとグナイゼルさん以外に、十人ほど居るのは、皆将軍級だそうです。そのうちの半数以上が否定派ってことよね。

 入場するとすぐに、沖田さんには、備品庫に保管してあった訓練用の剣を貸してくれた。

「これでいい」

 武器を受け取った沖田さんは、そのまま部屋の中央で待つグナイゼルさんの正面に立った。

 二人が向かい合う。

「じゃ、始めるか」

 グナイゼルさんも準備オーケーを示した。

「開始の合図は無さそうだが、いつでもどうぞ」

 沖田さんは、見た目若造なので生意気さをかなり感じるかも。

 それが気に触った訳では無さそうだけど、もうグナイゼルさんは素早く接近していた。そして拳を繰り出す。その巨漢ゆえにリーチもそれなりだ。

 沖田さんは、それを全て受け流しつつ何度か斬り返した。グナイゼルさんも全て籠手で受けていたが、沖田さんの方が、ちょっと余裕そうだ。

「本気を出せ」

 グナイゼルさんが、なぜか説得するように言った。 これまでと雰囲気が違う様に感じる。

「そういうことか、理解した」

 沖田さんは答えると、剣の先端をやや下げ気味で、体もやや前のめりという構えを取った。きっと意味があるのだろう。

 わたしでさえ知っている幕末の剣士だ。まぁ、漫画やアニメでなんか強くてかっこいい人ってイメージだけのキャラの情報でしかないんですけど、それでもすごさを感じることはできた。

 グナイゼルさんが間合いを詰める。 やはり速い、超人の中でもさらに秀でているのだろう。

 しかし、拳を振りかぶるために引いたところで、防具を砕け散らせつつ後方に吹き飛んだ。

 すぐに、観戦していた者達からの無念な言葉が上がったが、それに混ざって感嘆の声も聞こえた。

「三段突きのつもりだったが、余計に突きが出てしまった。

 悔しいな。 変身をせずに試したかった」

 沖田さんは、武器を構え直しつつの不本意そうに呟いた。

 グナイゼルさんは、よろよろと体勢を起こしていた。

「ふぅ~、痛ててて、煽るような事ばかり言って済まなかったな。

 悪魔様の強さを目の当たりにしていないやつらは、ただ山を消したと言っても納得できないらしくてな。

 なんでもいいから負ければ、文句を言えるやつもおらんだろ。

 でも、こんな戦いはそうそうできんから、よい経験をさせてもらったよ」

 グナイゼルさんは、そのまま両手を上げた。降参ということかな。

「いや、こちらこそ、道化をさせてしまった様で申し訳無い」

 やはり予想通りだったみたいですね。

「いや、気付いてたあんたが道化だろ?」

「皆よ、こういう者達だ、まずは運命をゆだねてみようでは無いか。

 国が救われれば、誰も罪を重ねる事もなくなる。

 確かに失敗の可能性もある様だ。だが、これは最大のチャンスであるのだ。

 それから、これを先に言うべきでは無いが、助力を仰ぐ立場である我々は、貴殿らが失敗してもそれを責めないと誓おう。

 身の危険を感じたら、次のチャンスに備えるつもりで撤退してくれ」

 皇帝が、その場を締めてくれた。

 そして、もやっとしてたわだかまりも解消してくれた。

「が、頑張ります」

 わたしは、とりあえずそう答えた。


 ミラ様は、事が済むとすぐに自宅へと帰って行った。

 ふむ、なんとなく気になる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ