表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔法少女は悪名「白い(ビキニの)悪魔」を払拭したい  作者: 安田座


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/18

壁の正体

 


 私たち魔法少年少女四人は帝国に向けて飛んでいます。 ミラ様は、もちろん沖田さんに装備されてます。

「ええと、どこに行きます?」

 皆に向かって聞いてみた。実は決めてなかったわよね。

「皇帝の私室はわかるのじゃろ?」

 ミラ様が余裕な感じで問いで返す。

「はい、でも、あそこ寝室みたいだったので夜にしか居なさそうですけど」

「では、夜に行けばいい、と言いたいところだが時間が惜しい、お前が正面から素顔で行け」

 ミラ様は、最初からそのつもりだったのね。

「え?

 ……あ、ああ、あの作戦ですね」

 最初に帝国に来た時の結果オーライ作戦をもう一度だ。向こうが勝手に段取ってくれる。 今回は暴れて掴まるわけではないけどね。

「まだ全員の顔を晒したくは無いしの」

「罠を警戒ですね。

 で、何か決まったら、どうやってお知らせすれば?」

「決裂なら、どこかを破壊して脱出すればいい。

 合意を得られたなら、ただ飛べば見える」

「そりゃそうだわ」



 適当に決めた作戦通りに正面から行くと、やっぱりあの部屋に連れて行かれ、バーストルさんを呼ぶことに。順調かも?

 そして、皇帝の前に案内されて来たのだ。

 広い部屋で、皇帝謁見の間みたいな、というかそうなのかな。

 人払いがされたところで、皇帝が口を開いた。

「早かったな」

 少し厳しい口調だ。 そうだよね、ほとんど昨日の今日だし。

「その短期間で何か変わったのか?

 複数人の存在は認識していたが、それが増えたのか?」

 バーストルさんのツッコみだ。

「わたしをかなり強くしてもらいました。

 だから、とりあえず私だけで倒すつもりで来ました。 仲間のサポートを受けながらですけど」

「強く? 誰にだ?」

「説明しても理解できない存在。 そもそも具体的に説明できないし……神様よ」

「確かに理解できん。 神が居るなら、この世はこんな事になっていないのでは無いか?」

「いやぁ、そうでもないんですよ、これが。

 そうじゃなくて、ごめんなさい、事実だからとわたしから振っておいてなんですが、話をそちらに持って行かないでください」

「ふむ、では、その力をどうやって示せるのか?」

「見たら分かるんです?

 わたしの予想だと、あなた達は敵の力を知らない」

「……なるほど、ご明察だ。

 いいだろう、少し教えてやる。それを聞いて判断すればいい」

「お願いします」

 ミラ様が気にしてたやつだ。

「待て、俺も聞かせていただきたい」

 沖田さんだ。 近くに居たのね。

「窓を開けてもいいですか?

 仲間の一人です」

「開けよう」

 バーストルさん自身が開けてくれた。

 沖田さんが入って来た。

「沖田さん、いいんですか?」

 入って来た沖田さんに日本語で聞いてみた。

「場合によっては俺の話をするつもりだ」

 日本語で返ってきた。なるほど。

「若い剣士か、いいだろう」

 皇帝が興味を示したみたい。

「鍛冶屋だ」

 そうなんだ。 終われば、そういう話もできる様になるよね。


 そして皇帝が語り始めた。

「十六年前、この国に”やつ”が現れた。

 ”やつ”は、わしの目の前で、側近たちを殺し、父母を殺し、右腕を奪った。側近には帝国屈指の騎士も複数居たが、人の能力など意味が無いというほどにあっさりと全滅した。

 右腕は、”やつ”が連れていた化け物に繋がっており、その力が利用できると説明されたが、その時は意味が分からなった。

 ”やつ”の要求は、その化け物に餌を与え続けること、断れば国を滅ぼすと……。

 餌は人間、とてつもない数のな。ゆえに要求を飲んで起こる悲劇は容易に想像できた。

 それでも、わしには断ることができなかった。 命の数の簡単な計算だからな。

 化け物は、すぐにある場所に住みついた。 そして生贄を常に待っている。

 不足してくると、この腕を通して要求してくる。言葉では無いがわかるのだ。

 知っていると思うが、稀に右腕だけを食われて生き残る者がいる、聞こえが良いように魔導士と呼んでいるが。

 あれは、早贄だ。不足状態が続くと突然吸収される、消えるのだ。 それでも、何か個体差があるのだろう、何人分にもなるようだ。

 そして、これは勝手な言い分だが、これは、この国の問題では無い、この国が食いつくされれば、周辺国に向かうのはわかっているのだ。

 では、それを各国に相談すればよかったと思うだろうが、どのみち戦争になるのも想像に易いのだ。

 だから、大陸を代表して調整することにしたのだ。 帝国の痛み、第一子を生贄にすることも調べてあるのだろう?

 倒せるものなら倒して欲しいと言いたい。 だが、その後、”やつ”がどう動くのかもわからん。さらにその先も居るかもしれん。 そこまで面倒を見てもらえるのか?

 ”やつ”は、五倍ほどの大きさの人型だが、猛獣の様な体と顔、翼もあり、連れている化け物とは比にならないほどの殺傷力を持っていた。

 後は、人語を話す以外は分からない、あれ以降現れてもいない」

「なるほどな。

 俺は、たぶんその化け物の初期に近いやつを倒して来た。

 国は滅ぼされた後だが……。

 ”やつ”というのは見ていないが、知らないところで話が済んでいたのだな」

 沖田さんだ。

「君の国の王は、そちらを選択したのだな……戦うことを選んだ勇気には敬意を表したい」

「身内を全員犠牲にされた者としては、あんたの選択を指示したい。

 悪いのはその”やつ”という者だ」

「そんな言葉をもらえるとは思っていなかったよ。

 君なら勝てるのか?」

「いや、俺は仲間のサポートのおかげでかろうじて勝てただけだ。

 十年以上も掛けて成長している存在には、俺では全く歯が立たないだろう。

 それに、そいつの方が遥かに強い」

 わたしに振る。

「あ、勝つつもりは、さっき言った通り。

 その”やつ”っていうやつとは戦ってみないとわからないですけど、人語を話せるならまずは話してみたいとか言うのは変ですかね?」

「話ができたとしても、結果として戦うことになるだろう、だから隙を見せて不利になるくらいなら問答無用の方がいい」

 沖田さんは、わたしを心配してくれて居るのだ。そもそも戦士では無いわたしの考えは甘いと自覚もしている。

 わたしも、敵は完全に悪だと思う、だからその通りなんだろうけど……。

「そう……ですよね」

「お前の言いたいことも分からなくは無い、魔法少女だからな。

 前言撤回ではないが、今の俺は、本当の討つべき仇が、その”やつ”かその背後の者か、それが居ると知り、この湧きあがる復讐心、とても平常心でのアドバイスでは無かったと思っている。

 だから、そういうのはミラに任せて、まずは壁を駆除してみよう」

「いえ、沖田さんが正しいです。

 でも、まずはやることをやりましょう。

 ところで、壁というのは造ったのです? 変な質問ですけど」

「いや、そこを不思議に思うのも理解できる。

 あれはやつの殻のようなものだろう。 住みついてすぐにできた。 ちょうど手を入れられる大きさの穴も用意してな」

「つまり壁の強度自体も不明なのですね」

「そうだ、さっき君の指摘に答えた様に、我々は敵の力を全く知らない」

「いえ、今のは一つのヒントでした。

 壁の前には部屋があるのですよね?」

「そうだ。 生贄の儀式をするための部屋がある」

「では、作戦を決めました。

 そして、気持ちは、最後まで面倒を見ます、です。

 そもそも、私たちが負けたら人類は終わりのレベルですよね?

 だから負けないし、敵の数だけ勝ち続ける意思があります。

 それでは、壁のところに連れて行っていただけます?」

 実は、もう一つ方法がある。 地球の技術を広めるのだ。そして対抗できる兵器を作る。 私にしてもいろいろと素人だけど、理屈として知ってることは多い。

 でもそれは、やってはいけないことだと思って生きて来た。 魔法少女をやってる時点で偉そうには言えないけど、そこもわたしの線引きだ。

「わかった。

 だが、今すぐにというのは無理がある。

 悪いが、民衆を避難させる時間が欲しい」

「兵もだ、化け物は超人だろうと餌や盾にする。 誰も居ない方がいい」

 沖田さんが追加する。彼の実体験からだろう。

「承知した」

「後は魔導士だが、どこに居ても吸収されるのか?」

「おそらく、そうだろう」

「あいつが危機に陥った時に、どうなるか……」

「今居る魔導士達は皆若い、できれば生かしてやりたい」

 こう答えるバーストルさんはやっぱり優しい人なんだろうなぁ。

「あんたは大丈夫なのか?」

 沖田さんが皇帝に確認した。 そうなんですよね。

「あれを倒せるなら構わん。

 わしは選ばれてなった魔導士では無い、だから無関係と安心している訳では無いことは信じて欲しい」

「やはり俺は平常心では無い様だ、聞くまでも無いことを聞いた。 たいへん失礼をした。 変身解除」

 沖田さんは、変身を解いた。

「君は?」

「これが俺だ。

 そんなに変わらないかもしれんが、若造に好き勝手言われるよりは多少ましだろう」

「面白い男だな。

 では、三日後の朝日が昇った時に始めていただこう」

 こんな空気感で、雨だったら?って思ったわたしはKYかも。

「承諾していただけてよかった。

 だめなら、力ずくでいくとこでしたよ」

 もう一方の作戦でしたし。

「それも言わない方がよかったと思うぞ」

 沖田さん、いがいとツッコみ役なのね。もちょっと渋くしてて欲しいです。

「では城内に部屋を用意させよう。

 幾つ必要だ?」

「女子三人用と男子一人用の二部屋でお願いします」

 人数くらい教えてもいいよね?

「わかった。

 トイレと風呂が付いてる部屋だったな。

 もちろん室内には監視も付けない」

 バーストルさん覚えてたのね。

「ここに、鍛冶の工房はあるか?」

 沖田さんが確認する。何するの?

「後で案内させよう、自由に使ってくれ鍛冶屋殿」

「何をするんです?」

「間に合うかわからんが、お前の武器を作ってやる。

 間に合わなければ、念のため何か長物を借りると良い」

 わたしに武器、あの刀みたなかっこいいやつかな。 でも、猫フォーム用に武器欲しいなぁ。

 実は、マニュアルが準備中になってて、呼び出せる武器があるのかも呼び出せてもどんな能力があるのかもさっぱりわからないのだ。 猫耳はちょっと分かったけど。

「できれば、なんちゃらナックルみたいなのがいいです」

「俺、長物って言ったよな?」

「じゃぁ、ナックルも作ってください」

「わかったわかった」

「わたし、二人を呼んできますね」

「そうしてくれるか、それと、念のため変身は解かない様に伝えて欲しい」

 少しほっぺをかきながらなのは、少し後悔してるのかなぁ。 あれは信頼をプラスする英断だったと思うけど。

 とはいえ、二人はまだ身バレしてないもんね。 あと、ミラ様の正体見たら腰をぬかしそう。

 そしてわたしは二人を呼ぶために飛ぶ。 破壊しないで飛ぶのが合図だったよね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ