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悪辣の徒  作者: 瓶覗
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31 新しい街

 馬を入手して移動が楽になり、アグリムは再度暇を持て余したらしい。

 見つけた村に戯れに魔法で攻撃を仕掛けているのをアグリムの膝の上から眺めつつ、フェイはその村から入手してきた地図を広げていた。

 かなり新しい地図で、帝国内の事が詳しく書き込まれている。


 これを入手したのは村の中でも特に大きな家だったので、恐らく村長か誰かの家なのだろう。

 そうなれば他の村との関りもあるのか、近隣の村の場所や新しく作られた橋の事などが手書きで書き加えられていて、中々良い地図だ。

 流石に十年ぶりとなると色々変わっているようで、地形から変化した場所まであるらしい。


「面白いもんあったか?」

「いえ、特には。……あぁ、ギエペ半島のあたり、砦を建築しているそうですよ」

「本気で独立しようとしてんのか?」

「少なくとも戦闘の予感はあるようですね」


 フェイが地図を畳むと、アグリムはフェイを抱えて立ち上がった。

 こうして話している間に兵士が来るかと思って待ってみたのだが、来なかったので移動する。

 座っていた木の枝から降りて、木の根元で待たせていた馬に跨る。


「半島に行くまでに寄れそうな場所は?」

「新しく街が作られて、かなり人の出入りもあるようです。あの道を辿れば見えるかと」

「行ってみるかぁ」

「はい」


 のんびりと話しながら馬を進ませて、寄り道した村から大通りへと戻った。

 以前滞在していた頃の記憶からか、アグリムにとってこの帝国は戦いを楽しむ場所であるらしい。

 帝国を後にしてから約十年、その間に戦いを避けて隠れることも覚えたはずなのだが、童心に返っているのだろうか。


 なんて思いながら大通りを進んで街が見えてきた頃、アグリムが何かを見つけて馬の上で姿勢を変えた。

 フェイは馬に乗せたままにするようなので、大人しく渡された手綱を受け取る。

 目を凝らすと、遠くに人が経っているのが見えた。一人二人ではなく大勢。全員同じ鎧を身に着けているので、街の警備をしている軍人だろうか。


「ここで待ちますか?」

「いや、見えるところまで近付いてこい。ゆっくりな」

「かしこまりました」


 戦う気満々なアグリムは先に馬を降りて駆け出し、一人になったフェイは静かに馬の足を進めさせてその後を追っていく。

 忘れずに隠匿魔法もかけて、言われた通りゆっくりアグリムに近付いて行くと、兵士の一人が叫んでいる声が聞こえてきた。


「ツーミュ王国が一度は捕らえた相手だ!怯むな!進め!」


 アグリムが捕らえられたというのは、彼らにとって随分大きな知らせだったのだろう。

 そして一年前に脱獄し、帝国に再び現れたというのは衝撃だったことだろう。

 巻き込まれない位置で馬を止めて、アグリムに蹂躙されている兵士たちを眺める。


 見覚えのある顔は無い。まぁ、帝国の兵士の中でも腕利きの者たちは十年前にアグリムが軒並み倒してしまっているので、一定以上の実力者はこの十年で軍に入った者だろう。

 なんて、のんびり考えながら観察している間に兵士の数はどんどん減って、最終的には怯えて動けなくなった者だけが残されていた。


「フェイ」

「はい」

「行くぞ。風呂入りてぇし」

「かしこまりました」


 呼ばれて傍に寄ると、アグリムは馬には乗らずに手綱を引いて歩きだした。

 返り血で汚れているので、汚れを落とすまでは乗らないつもりなのだろう。

 街の方からは何やら喧騒が聞こえてくるが、気にせず街へ入って人のいない宿に向かっていく。


 街からは人が逃げているようで、騒がしくはあるが人の姿はあまり見かけなかった。

 アグリムにはフェイよりも正確に人の有無が分かっているだろうから、宿を決めたということはここに人は居ないという事なのだろう。

 なんて考えながら差し出された手を取って馬を降り、宿の前に馬を止めて中に入る。


 宿の中を探索して、見つけた風呂にお湯を張る。

 誘われるままフェイも風呂に入って身体と髪を洗った後は、服を新しくするために街の中を移動して服屋に入った。


 着替えを終えたところでアグリムが外に魔法を放ったので、フェイは隠匿魔法で姿を隠して邪魔にならない位置に移動する。

 どうやら、もう次が来たらしい。

 アグリムは楽しそうにしているので、フェイはその間にアグリムの服を選んでおくことにした。


「……もう一度お風呂にも入られるかな」


 小さく呟きながら服を見繕っていたら、外の喧騒は大きくなる。

 街の人間は出来るだけ離れた建物の中に避難しているようだが、それで無事にやり過ごせるのか。

 まぁ、戦闘の規模とアグリムの気分によるだろう。兵士が余りにも簡単に倒れては、暇つぶしにもならなかったと街を燃やすこともあるから。


 戦闘の規模が大きすぎても、街の奥の方まで巻き込まれて建物は跡形もなくなる可能性がある。

 兵士は街への被害も気にするだろうが、アグリムは一切気にしないので戦いの場が移ればすぐにでも被害は出るだろう。

 などと考えつつ見繕った服を纏めて袋に入れ、服屋から大通りを覗くと斧を片手に暴れまわっているアグリムが見えた。まだ戦闘は続きそうなので、もう少しここで大人しくしていた方が良さそうだ。

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