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悪辣の徒  作者: 瓶覗
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26 大図書館

 天空都市とは文字通り空に浮いている場所に作られた都市だ。

 その大きさは小国ほどあり、空の上で農耕が行われていたりもする。

 いつから浮いているのかは知られていないが、かなり昔からこの土地は空に浮いていたらしい文献は見つかっている。


 アグリムが捕らわれていた天空監獄ルプシブルはこの天空都市ヴェルネスを元に作られたらしく、人工で浮かせられる土地は監獄程度の小さなものだったのに対し、自然に浮いていたこの土地の大きさは目を見張るものがある。

 やはり自然物は凄いな、などとフェイが静かに関心している間に、アグリムは行き先を決めたらしい。


「酪農地区に行くぞ。布とかも売ってるんだろ?」

「はい。質の良い布製品が特産品になっているそうです」

「ドレス……とまではいかなくても、何かはあるだろ」


 いつも通りフェイを着飾らせるのが第一の目的になっているようだが、行動の理由が何であれ目的地がどこであれ異論はない。

 アグリムの言葉通りにまずは酪農地区を目指すことになり、しばらく船旅をしていたこともありのんびり歩いて向かうことにした。


 酪農地区は島の西端にあり、ここからだとかなりの距離がある。

 今いる場所は天空都市の玄関、中央区の繁華街だ。

 天空都市の中にある主要な街へは馬車も出ているので、基本的にはその道を歩いて行くことになるだろう。


「フェイは?どっか行くとこあるか?」

「そう、ですね……図書館があれば覗いてみたいです」

「あるならこの辺……いや、あっちになんか別のでけぇ街があんな。あっちか?」

「恐らくは城のある区画に建っているかと」

「ならあっちだな。寄ってくか」

「はい」


 フェイには見えないのだが、アグリムには島の中央にある城も見えているらしい。

 迷いなく歩き出したアグリムを追ってフェイも歩きだし、島の中央へと向かっていく。


「浮島とは思えねぇな」

「はい。雲が近い以外は下とあまり変わりませんね」


 話しながらヴェルネスの街並みを眺めて進む。

 途中見かけた屋台からアグリムが流れるように食料を確保していたが、誰にも気付かれてはいないようだ。おそらく、動きが早すぎて分からなかったのだろう。

 フェイが建物の装飾を眺めていた一瞬の隙にアグリムの手には串焼きが握られていたので、思わず少し笑ってしまった。


「お味はいかがですか?」

「……普通だな。食うか?」

「では一口だけ」


 差し出された串焼きの肉を一口齧って、確かにこれは可もなく不可もない程度の味だな、と納得する。

 時々屋台から食料を入手しているアグリムから少しだけそれを分けて貰って腹ごしらえをして、最初の目的地である図書館を探す。

 天空都市の大図書館は何かと耳にする機会があり、少し気になっていたのだ。


 街を歩き回って図書館を探し、見つけた大図書館で珍しい本を読み漁っていたら日が暮れていた。

 アグリムは特に本を読むわけでもなかったが、退屈でもなかったらしく調べたりないなら明日も図書館に籠るか、と言ってくれた。

 そこまで調べたい何かがあったわけでもないが、気になる本があるのは事実だ。


 なのでそこからさらに二日ほど図書館に籠り、気になった本はほとんど読みつくして満足の息を吐いた。

 ここまでじっくり読書に精を出すこともあまりなかったので、フェイとしては満足だが三日通って一冊も本を読んでいないアグリムも何故だか満足そうなのが不思議な所だ。


 ともかく天空都市に来て最初の三日は図書館通いで終わってしまったので、ここからが本格的な探索の時間になる。

 向かう場所は最初の予定と変わらず、まずは酪農地区を目指すので西にひたすら歩いて行く。


 街を出て人目が向けられなくなった後は、図書館をそれなりに楽しんではいたが運動不足を感じているらしいアグリムに抱えられて凡そ人間が出せる速度ではないような高速での移動をしたり、二人並んでのんびりと散歩をしたりと移動の時間を楽しむ。


 時々すれ違う人もいるが、特に気にもされないあたり歩いて移動する者もそれなりに居るのだろう。

 気候が安定していて散歩はしやすい土地だし、そういう楽しみ方も一般的なのかもしれない。

 道沿いには小さな村などがあり、そこに宿もあるが宿には泊まらず基本的に野宿で過ごしていた。


 持ち歩くのが面倒で金銭を用意していないので、面倒事を起こさないために宿には近付かないようにしているのだ。

 これが通りがかりの村であれば一切気にせず宿を占領するのだが、しばらく滞在するつもりの土地なら追われるのは面倒だ。


 その気になれば金銭も用意は出来るのだが、野宿も楽しめるので特に用意しないことにした。

 元々アグリムは他人の気配が好きではないので、金があっても宿には泊まらなかっただろう。

 時々見回りの兵士らしき人影も見かけるので休むときは場所を選ぶが、それも大した手間ではない。


「お、陸の端が見えるぞ」

「ではもう少しですね」


 そうしてしばらく移動し続けて、アグリムの目が島の端を捕らえた。

 最西端はそろそろなようで、ということはこのあたりが酪農地区と言うことになる。

 最初の目的地に到着したので、次はこのあたりで大きな街を見て回ることになりそうだ。

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