表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪辣の徒  作者: 瓶覗
26/45

24 半年

 このところ、フェイはアグリムが戦士たちと手合わせをして遊んでいる間、島の中に畑を作らせていた。

 綿花の栽培を教えるついでにやり始めたことなのだが、チョシミ相手にやり方を教えていたらいつの間にか人が集まってきて森を切り開き畑の開墾が進んでいたのだ。

 植えるものは元々島で育てていた野菜がほとんどで、基本的には眺めている時間の方が長い。


 チョシミに渡した綿花は何やら特別な場所を作って植えられるようで、まぁ好きにさせればいいか、と何も言わずに放置している。

 そうして畑作りを眺めていると、いつの間にやらアグリムがやってきて抱えられ、隣島に行ったりとそういう日々を過ごしているのだが、それが中々楽しい毎日だった。


 アグリム以外と長い時間を過ごすことのなかったフェイからすると新鮮な日々で、アグリムも珍しく未だに飽きてはいないらしい。

 ほどほどに遊べる相手がいるからだろうか。

 アグリムの暇つぶしの相手に慣れる人間と言うのは本当に貴重だ。それだけで、彼らがどれだけ強いのかが分かる。


 とある日に島民たちが何やら騒いでいると思ったら別の島に王国の船が来ている、と言って船を追い返しに行っていたが、その手際の良さにアグリムも手出ししなかったほどだ。

 島民を守る意思が無くとも長引けば王国の船への面倒が勝って沈めるだろうとフェイは思っていたのだが、その隙も無いほど手慣れた撃退だった。


「ありゃ、王国は勝てねぇな」

「アグリム様から見てもそうなのですね」

「おう。あいつら船への攻撃に慣れてるぞ。沈めずに引き返す程度の損傷を与えるのがやたら上手い」

「なるほど」


 戦いを観察していたアグリムがそんなことを言う程度には慣れた動きで、道理で王国が諦め気味だったわけだとフェイは一人頷いた。

 城勤めの時に読んだ資料で、年々船の派遣は頻度を減らしていると書いてあったのだ。


「大陸で戦うんならともかく、船で来てる程度じゃどうにもならねぇだろうな」

「なるほど。……船隊が来たら、どうなりますか?」

「多少は時間が掛かるだろうが……変わらねぇだろ。王国は船を守らねぇといけないが、あいつらはそうじゃない。長引いてもあの辺の地形も把握してる分気楽だ」


 なるほど、ともう一度呟いて、撤退していった王国の船を見送る。

 しばらくは来ないだろうなと考えていればアグリムが戦場を観察するために登っていた木から飛び降りたので、舌を噛まないように口を閉じてアグリムに抱き着いた。

 予想通りそれ以来王国の船は来ていない。そのうちまた来ることはあるだろうが、結果は変わらないだろう。




「フェイ」

「はい、いかがなさいましたか?」


 隣島の拠点で特にすることも無くのんびりと過ごしていた日、斧で素振りをしていたアグリムが、不意にフェイを呼んだ。

 そちらを振り向きつつ返事をすると、斧に体重をかけつつこちらを見ていたアグリムと目が合った。


「そろそろ別の場所に行くか」

「かしこまりました。目的地は、どこになさいますか?」

「特に決めてねぇが……天空都市ってどこにあんだ?」

「天空都市ヴェルネスですね?ここからですと……ツーケ諸島の方向です」

「距離は?」

「それなりに。海路になりますね」


 ウルムワ諸島にやってきてから半年ほどが経って、アグリムはついにここを発つことにしたらしい。

 これほど長居するのが珍しかったのだ。ここ数日の様子から、もしかしたらそろそろ移動するかもしれないと思っていたフェイは特に驚くことも無く、素直に次の目的地に話を移した。


 天空都市ヴェルネスは、以前にもアグリムが目的地にしようとしていたことがある。

 ここからなら船で海上を直進するのが早いだろうが、そのための準備は必要だろう。

 船は乗ってきた物を手入れしてあるので、荷物の用意が出来ればすぐにでも出発可能だ。


「綿花はいいのか?」

「はい。元々暇潰しですから」

「そうか。……なら、行くか」


 話しながら拠点に置いてあった荷物を纏めて、持っていく物は抱えて、それ以外は拠点の端に置いていく。

 植えた綿花は、枯れてしまっても気にはならないし、上手く育てばチョシミたちが使うだろうか。

 一応植えてあることを伝えておけばいいだろう。どうするかは彼らに任せればいい。


 そんなことを考えている間にアグリムはフェイを抱えて家の屋上まで移動しており、階段を降りて家の中に入ったところで地面に降ろされた。

 すぐに荷物の確認を始めると、何かを察知したのかチョシミが寄ってきたのでここを発つことを伝える。


 明らかに動揺はしていたが、思っていたよりは騒いでいないのでチョシミも予想はしていたのだろう。

 いつ、と聞かれた言葉には準備が出来次第と返事をし、ついでに隣島の拠点は好きに使っていい事とそこにも綿花を植えてある事を伝えておく。

 頭を下げてから去って行ったチョシミが家の外に向かったので、恐らくこの後騒がしくなるだろう。


「アグリム様、こちらはどうなさいますか?」

「あー……持ってくか。でかくはねぇしな」

「かしこまりました」


 にわかに騒がしくなり始めた外は気にせず、荷造りを進めて行く。

 持って来てはいたが着ていなかった服などもまとめて持っていくことにして、この島でよく使っていた物を荷物に追加する。

 来た時よりも大荷物になるかと思ったが、この半年で既に手放した物もあるので最終的にはそう変わらに量に落ち着きそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ