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悪辣の徒  作者: 瓶覗
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23 暇つぶし

 隣島にちょっとした拠点を作り始めてしばらく経つと、アグリムとフェイが揃って出かけることにも、夜になるまで帰って来ない……もしくは翌日になるまで帰って来ないことにも、住民たちはある程度慣れたようだった。

 ついでに言うとどこに行っているのかも把握したので、それで安心しているのだろう。

 ついて来るな、とアグリムが言ったからか、誰も隣島には上陸しないようになったようで拠点の周りは随分静かだ。


「神の島になったようですよ、この島」

「つまりは俺の島か?」

「はい」


 住民から王のような、神のような存在として扱われることにもだいぶ慣れたアグリムはそのあたりを気にすることをやめたようで、そうか、と短く言うだけだった。

 それなりに時間をかけて作った拠点は小さな家のようになり、中々快適に過ごせる環境が出来ている。

 拠点が完成したことで、アグリムとフェイはこのところ別の島にも足を伸ばしていた。


 拠点にはその時に使う道具を置いておく、という役割も兼ねて貰うことになり、作業のために机を作ったりもしている。

 それで何がしたいのかと言うと、毛糸の材料になるようなものが無いか、という調査だ。

 出来れば植物系がいいのだが、動物でもいいかとも思っている。


 何故探しているのかと言われたら暇つぶしの為なのだが、あの街に持ち込んで育てても面白いかと思っているところだ。まぁ、総じて暇つぶしの為というのは変わらない。

 フェイの趣味の中に編み物もあるので、一からやってみたら楽しいかもしれないと思い立ったのが始まりだ。

 言い出したのはアグリムだが話を広げて実際原材料を探してみる所まで膨らませたのはフェイである。


「お、あれどうだ?」

「どこですか?」


 フェイを片腕で抱えたアグリムがどこかを指さしているが、フェイには目を凝らしてみても見えない距離の物のようだ。

 アグリムも指さしながら歩き続けているので、フェイに見えていないのは初めから分かっていたのだろう。

 そうして木々の隙間を歩いて行き、アグリムがしゃがんで手に取ったのは、綿花の一種のようだった。


「どうだ?」

「これなら……沢山集めれば、いいかもしれません」

「群生は、してるけど足りねぇか」

「持って帰って増やしてみますか?」

「まぁ、そうだな。ならもう少し採るぞ」

「はい」


 フェイも地面に降ろされて、二人で持ってきた袋に綿花を採取していく。

 王国などで栽培されている物と違い、人の手の入っていない野生種なのでとれる綿はそれほど多くはないだろうから、種は多い方がいい。


「このまま街に運ぶか?」

「いえ、一度拠点にお願いします」

「おう」


 ここ数日二人でいくつかの島を巡り、ようやく見つけた綿花だ。しっかりと抱えて拠点に戻り、机の上に採取してきた綿花を広げる。

 ちょうど綿がはじけている時期だったので、取ってきたそれから種を取り分けていく。

 いくつかは取ってきた状態のままで残して、街に戻った時にチョシミに渡してやり方を教えることにした。彼女なら一度教えれば覚えられるだろう。


 なんて考えながら黙々と作業を進めるフェイと違い、細かい作業に飽きたらしいアグリムは外に畑を作ってくる、と出て行った。

 恐らく鍬から作るのだろうが、それでも綿花を植えるまでにはまだ余裕があるので畑は間に合うだろう。何せアグリムは作業が早い。


「今日はどうする?こっちで寝るか?」

「アグリム様のお好きな方で」

「なら、一旦戻るか」

「かしこまりました」


 日暮れを前に街に戻るために荷物を纏め、外に出る。

 アグリムの作業時間はそれほど長くなかったはずなのに、畑になる予定の場所は土がかなり掘り起こされて柔らかくなっていた。

 もういつでも種まきが出来そうな耕され具合だ。


「行くぞ」

「はい」

「それは持っていく分か」

「はい。やり方を教えてみようかと」

「ほー……」


 興味はあまりないようなので、それ以上は何も言わずに荷物を抱えなおした。

 のんびりと話しながら飛んで街まで戻り、いつも通り屋上に着地する。

 アグリムが屋上に着地するようになってから、裏庭から屋上までを繋ぐ階段が作られたので、今では歩いて屋上から降りることも出来るようになっていた。


 歩いて降りられるのならその方が楽ではあるので、作られた後はそれを使っている。少し急だが、十分な強度もはあるので問題ない。

 アグリムは地面に着くまでフェイを下ろさないのでフェイは歩いたことが無いのだが、音などから丈夫なのだろうと判断していた。


「あ?なんか増えてんな」

「新しい収穫物でしょうか」


 家での定位置である王座の横に置かれたテーブルの上に、何やら見慣れない果実のようなものが乗せられていた。

 この島の主な食料は魚で、果実やそれほど広くはない畑で育てられている穀物、野菜などはアグリムへの貢物になっている。

 見慣れないこれも、島のどこかで取れる果物だろうか。


「……誰かいるな。いつものやつか?」

「チョシミ」


 部屋の外に声を掛けると、すぐにチョシミが現れた。

 聞いてみたら、今から収穫時期が始まる果実で早くに熟したものをここに持ってきたらしい。

 呼んだついでに綿花を渡して処理の仕方を教えておき、フェイは早速果実を齧っているアグリムの元へ戻った。


 渡された果実を齧ってみたら程よい甘みと酸味があったので、薄く切って干してみてもいいかもしれない。

 保存して置ければ少しずつ食べられるだろうし、一気に食べるよりもその方が美味しく食べられそうだ。

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