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悪辣の徒  作者: 瓶覗
17/45

16 河口

 何日も船に揺られて川を下っていると、砂漠を出て平原へと入った。

 なんだか色々と面倒な気配があるらしく、アグリムに言われて船にフェイの隠匿魔法をかけて進んでいるのだが、それでも時折何かがこちらを見ている気配がするらしい。


 威嚇するように魔法を放つ姿も見たので、余程見られていたのだろう。

 フェイは気になるほどの物を感じなかったので船の中でのほほんと過ごしており、戦闘が始まることも無かったので面倒はありつつ平和ではあった。


 時々船を降りて物資の確保などもしながら、のんびりと川を下っていく。

 そんなことをそれなりの日数続けたところで川幅がかなり広がり、海が近い事を察した。


「フェイ?」

「アスル川に合流したようですね。あちら側は前に居た王国です」

「ほー……ルクシアンの続きか」

「はい」


 砂漠に入る前に跳び越えた川に戻ってきて、決めるのは海に出た後どちらへ向かうかだ。

 海を進もうと思うと、この船では少し頼りないので別の物を用意しないといけない。

 どうするか、と話し合った結果、一度王国の領土に戻って船を探すことにした。何だかんだ、物を探すのならそれなりに慣れた土地の方がいい。


 王国ではそれなりの期間暴れていたので警備隊などに見つかるかもしれないが、それは特別問題にはならない。警備隊だのなんだのが寄ってくるのはいつものことだ。

 それを気にしていては自由など無いので、気にせずに船を対岸へと進めた。


「もう少し進むと、街があるかと」

「ならこの船は沈めてその街行くか。海の方にもでかい街あったよな?」

「ございます」

「船はそっちで探すぞ」

「かしこまりました」


 無事対岸に着いたところで荷物を下ろして船を沈め、川沿いの街へ向かう。

 街に入るのは問題なかったが、服装が砂漠の街に居た時のままなのが原因か、いつもよりも視線が向けられている感覚があった。


 アグリムの機嫌が急降下しているのを感じながら適当な建物の隙間にある細い路地へと身体を滑り込ませ、街の大通りから裏通りへと足を進める。

 まずは、何より着替えがいるだろう。


「はぁ……着替えたらさっさと出るか」

「かしこまりました」

「他にいる物は?」

「そうですね……縫い針が一本駄目になったので、代わりがあれば」

「分かった」


 一泊するかも分からないので、今日の寝床を考えるのは後回しで良いだろう。

 何よりもまず服だ。裏通りにあった服屋からひとまず適当な外套を入手して頭から足までをすっぽりと覆い隠して大通りに戻った。


 大通りで見つけたそれなりに大きい服屋に入り、幾つか服を見繕って着替える。

 残りは鞄に入れて店を出て、要らなくなった服と外套は路地に投げ込んでおいた。

 これで動きやすくなったので、後は縫い針と食料でも確保出来れば出発できそうだ。


「……ん?」

「いかがなさいましたか?」

「何か……警備隊か?探されてんな」

「もう気付かれたと?」

「魔力かなんか、覚えてる奴が居たんだろうな。出るぞ」

「はい」


 返事をして、歩き出したアグリムに続く。

 どうやらこの街の警備は思っていた以上に厳重なようだ。

 まぁ、ここは王国の端。国境沿いでもあるし、警備が厳重なのは当然かもしれないが、アグリムの魔力まで覚えているやつがいるとは思わなかった。


「どっかで斬り損ねたやつか……?」

「かもしれませんね、この国にはそれなりに長く滞在していますから」


 アグリムは興が乗れば戦うが、戦っている途中でも飽きればそれ以上殺さずにその場を離れたりもする。

 そういった戦いでアグリムに殺されなかった者が、アグリムの悪名を広めているのだ。


 そしてその生き残りたちの中には、再度アグリムと戦いにくる者も居る。

 まぁ、アグリムは一切覚えておらず再戦時も殺したり殺さなかったりするわけなのだが。

 フェイはそれなりに覚えているが、わざわざ教える必要も無いので言いはしない。


「集まってきてるな。フェイ」

「はい」


 差し出された手にフェイが躊躇いなく手を重ねると、抱え上げられて身体が浮いた。

 状況確認の前にアグリムの首に手を回し、姿勢を安定させたところで下に目を向ける。

 一瞬にして地上からかなり離れており、下の方では同じ服装の人間が何人も集まってきているのが見えた。


「警備隊ですね」

「そうだな。このまま次の街に行くぞ」

「かしこまりました。海沿いを進むと、このあたりで一番大きな街があるかと」

「分かった。一旦あっちだな」

「はい」


 騒がしい地上を横目に穏やかに話し合い、進む方向を定めたらそのまま空中を進む。

 地上は相変わらず騒がしいが、何の障害も無い空中を進むアグリムを追うことは難しいのか、地上に降りる頃には一人も追っ手はいなかった。


 そもそも追っ手が居たことすら覚えていなさそうなアグリムと共に海まで歩き、海沿いをのんびりと歩いて進む。

 久々の海はそれだけで楽しく、街に着くまでの数日間は時々波打ち際で遊んだり魚を取ったりしながらの進行となった。

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