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悪辣の徒  作者: 瓶覗
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11 砂漠

 ラクダを一頭連れて砂漠に入り、まずは飛行船も行き来しているらしい砂漠の街を目指すことにした。

 飛行船に乗って行かなかったのは、砂漠を歩いてみたいという興味からだ。

 連れて来たラクダにフェイを乗せてアグリムは歩いているが、楽しそうなのでフェイは何も言わないことにしている。


 自分が歩いていてはすぐに疲れて結局足手まといになるだろうし、それなら最初から大人しくラクダの背に乗って、砂漠の熱気と楽しそうに歩きにくい砂地を進むアグリムを眺めていた方がいいだろう、と思ったのだ。


「お?……なんか来るな、砂の下だ」

「砂漠に居るという魔物でしょうか」

「だろうな。やけに強い魔力……跳ぶぞ」

「はい」


 返事をするのと同時に、アグリムはラクダごとフェイを抱えて上に跳んだ。

 その直後、先ほどまで立っていた地面にしたから何かが大口を開けて飛び出してきたので、落ちないように気を付けながらそれを観察する。

 砂漠に入る前に、危険な生き物は粗方頭に入れてきた。


「フェイ?」

「サンドシャークですね。群れで狩りをする、と」

「……確かにあと何匹かいるな」

「強い衝撃を感じると逃げるそうですよ」

「狩ったら何かに使えんのか?」

「皮が売れるそうですが……他は、特には」


 それなりの値で売れはするのだろうが、金が必要かと言われたらそんなことは無いので、二人にとってはあまり価値のない相手だ。

 その確認を軽くして、アグリムは足元に魔法を撃ちこんだ。


 爆発音とともに砂が抉れ、出来た穴に周りの砂が流れ込んでちょっとした窪みになった。

 一撃で倒したサンドシャークは三体。周りにいた他のサンドシャークは、既に散り散りに逃げたらしい。


 地面に降りて倒した三体を砂から引き上げて確認していたアグリムは、皮を剥いでいくほどのものではないと思ったのかそのまま砂に落として歩き出した。

 ラクダについている手綱を引いているので、フェイも自動的に進むことになる。


「もう寄って来ねぇだろうな」

「そうなのですか?」

「おう。あっちも俺の魔力覚えただろ」

「……確かに、それなりに賢いらしいですしね」


 野生の生き物は強者の気配に敏感だ。

 アグリムは大抵の生物から見て脅威なので、一度でも覚えさせれば早々襲われる事は無い。

 ちなみにラクダも逆らってはいけないと感じているのか、非常に大人しく歩いている。




 その後は本当に襲われることも無く、のんびり話しながら歩いているだけの平和な日が数日続き、遠くに街の明かりが見えたのは予定より少し遅れた頃だった。

 見渡す限り砂の世界で進む方向が少しズレたのと、歩きにくい土地が遅れた理由だろう。


 とはいえ、何かしなければいけないことがあるわけでもない。

 送れたところで問題は無く、次はそれも含めて予想をしよう、とフェイが密かに考えているというだけの話で終わりなのだ。


「おぉ、すげぇ数の飛行船」

「そんなに飛んでいるんですか?」

「街の中も飛行船が飛んでる。規模が違うな」


 はしゃいだ声を出すアグリムに、フェイも自然と表情が緩んだ。

 見えたとはいえ、後一日は歩かないといけない距離だ。フェイにはまだ街が小さく見えただけで、そこを飛び交っているらしい飛行船は見えない。

 けれど、アグリムがそこまで言うならかなりの数の飛行船が飛んでいるのだろうし、見たことのない作りの物もあるだろう。


「少し急ぐか」

「はい」


 アグリムが速度を上げたことで、翌日の夕暮れ時には街に到着した。

 街は壁に囲まれていたが、壁の外にも人が住み着いているようで、ボロボロの小屋のようなものがあたりを埋め尽くすほどに立っている。


「どこから入りますか?」

「上は……面倒になりそうだな。どこか、目立たない所に穴でも開けるか」

「向こう側に人の気配がないところ、ですね」

「あぁ」


 飛行船技術の高さ故か、高く跳んでは見つかって面倒になる予感がするらしい。

 それなら下から、ということで、壁に沿って歩きながら壁の向こうに人の気配のしない場所を探す。

 アグリムがここだ、と言ったところにフェイが魔法をかけて周りの注意を逸らし、あとはアグリムの斧の一振りで人が通れるだけの穴が開いた。


 隠匿魔法の効果もあってか人には気付かれていないので、さっさと通って中に入る。

 どうやら大きな建物の裏側のようで、人が来ないうちにそこから抜けて街の中に潜り込む。

 もう日暮れの時間だが、街には明かりが灯ってまだまだ眠りそうにない雰囲気に包まれている。


「賑やかな街ですね」

「そうだな。……まずは、今日の寝床か」

「……あの建物、廃墟に見えますが……なんでしょう?」

「でかいのに人が寄り付かねぇのか。曰く付きか?」


 目についた建物を指さすと、アグリムが人の流れを確認したようで首を傾げた。

 ともかく人が寄り付かないのなら丁度いいので、確認してみてまだ建物としての機能を保っているようなので仮にここを拠点として、この街でやりたいことを詳しく話し合う。


 まずは、飛行船の設計図か何かが欲しい。

 そして砂漠の少し離れたところに屋敷を持っている個人がいるのであれば、そこへ行く飛行船を奪ってその屋敷に向かう。

 ……何はともあれ、まずは飛行船について詳しく調べることになりそうだ。

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