10 砂漠の横
数日間街に滞在して欲しい物を揃え、ついでに着替えてから二人はいよいよ砂漠に向けて進んでいた。
砂漠のすぐ横にも別の大きな街があるらしく、そこに寄ってから砂漠を見に行こう、という話になっている。
アグリム的に今のフェイの服はあまり着飾らせることが出来ていない判定らしいので、もっと華やかなものに取り換えたいという目論見もあるのだろう。
「ラクダにも乗ってみたいな」
「そうですね、馬とは随分違いそうな感じでしたし」
「砂漠に面する街になら居るだろうし、砂漠は乗って進むか」
知らない文化、知らない物に触れたアグリムは上機嫌だ。
飽きやすい質だから、目新しいものが多くて楽しいのだろう。
砂漠を無策で進むのは流石に危険なので、次の街で詳しく情報を集めるつもりではいた。その時にラクダを探してみて、居れば連れて行こう。
そんな風に考えながら、のんびり歩いて進むこと数日。
見えてきた街の後ろには、砂漠が広がっていた。
フェイの目に見えるようになったのは今日に入ってからだが、アグリムには少し前から見えていたようで既に多少見慣れている様子だ。
「飛行船も動いているんですね」
「そうだな、どこ行きだ?」
「砂漠の方へ行くようですし……陸路が困難な分、主要な街へは空路が発達しているのかもしれませんね」
フェイの知る限り、砂漠は魔法素材の宝庫だったはずだ。
過酷な環境故に素材の採取が進んでいるとは言えないが、飛行船の製造と安定した運用が出来るくらいの魔法素材はこの砂漠から取れるのだろう。
砂漠に道を作るよりは空路を発展させた方が安定するだろうし、この間まで居た隣国よりも高い魔法技術があるのだから、飛行船の製造技術もより高い物なのだろう。
「気になるか?」
「はい。構造が知りたいです。直接見るか、設計図か」
「ならどっかで乗るか。あの分なら、個人の飛行船を持っている奴も居るだろ」
「砂漠に屋敷があるのなら、守りやすくはあるでしょうし……そこに行くための個人飛行船、はありそうですね」
「そんなところになら豪華な衣装もあるだろうし、な」
砂漠にあるかもしれない屋敷の襲撃計画を気楽に話し合いながら、いよいよ大きく見えてきた街に目を向ける。
高い壁などは中心部にあるだけで、外側はそこまでしっかり区切られているわけではないようだ。
砂漠側には少し壁などがあるようだが、二人が今いる平原側には特に何もない。
街を拡張するためなのか、外敵が居ないのか。
それか居るにしても安全を確保できるくらいの何かがあるのか。
なんて考えながら進んで、壁がないのなら紛れ込むのも面倒がないから何でもいいか、と気楽に思考を止めた。
「なるほど」
「何かございましたか?」
「魔法探知だ。土地自体に埋めてあるみてぇだな」
「何かあればすぐにわかる、という事ですね」
「ま、どうにでも出来そうだ」
「……そうですね、私でも誤魔化せそうです」
侵入者に対する備えはあるようだが、アグリムは見つかったところで問題は無いし、フェイは隠蔽に特化しているのでそもそも気付かれないよう誤魔化せる。
何の問題にもならないと分かったのなら、気にする必要はない。
確認を終えて街の中心部に向かいつつ、この町での拠点を探して裏通りも見て回った。
結果として夜になる頃には街のゴロツキが占拠している家を見つけて、そのゴロツキたちを追い出して拠点を確保し、街の地図とこの国の地図も入手した。
飛行船は予想通り砂漠側の主要都市へと向かうものらしく、個人の飛行船を狙うのなら一度そちらの街に行ってから探した方が早そうだ。
ついでに砂漠に居るらしい魔物の情報も入手できた。
何やら色々と、面倒そうなものが住んでいるらしいが、これはまぁアグリムにとっては大した問題ではないので、あまり深くは触れなくていいだろう。
連れて行けそうなラクダも見つけたので出発の際には連れて行くとして、他にもいろいろと見ていて面白そうなものがあったので、あと数日はこの街を見て回ることにする。
そう予定を決めて、初日は早めに眠りについた。野宿でも特に心配などない二人だが、やはり休むのならベッドがあった方がいいに決まっているのだ。
そんなわけで早めに休んで、翌日も街の中を探索する。
ピアスの金具などの探そうと思っていた物も無事に見つけることが出来たので、フェイとしては満足の行く探索結果だった。
鱗の方は既に加工が終わっているので、早速ピアスの金具を取り付ける。
出来上がったものをアグリムに見せると、彼は早速それを付けてくれた。
髪の隙間から覗くドラゴンの鱗は、思った通りアグリムによく似合う。
「邪魔にはなりませんか?」
「おう。軽いし、良いなこれ」
そう言って笑ったアグリムにフェイも笑い返して、自分のネックレスの方にも買ってきた金具を取り付ける。
これで多少扱いやすくなるだろうし、アグリムのピアスと揃いに見えるだろう。
アグリムの斧を覆う布も扱いやすいように切ったり縫ったりして、これでドラゴンから取ってきた素材の加工は全て終わりになった。




