第八話 事実は小説より奇なり
俺は自室に戻りとりあえず布団に寝転がって今後のことを考える
わけではなく、スマホを手に取りアプリを起動した
「オーシャンドライブリング」略して「ODR」
うちの看板MMORPGである
このソフトはPCユーザーとアプリユーザーが同じステージで遊べる
PCだけのMMOやアプリだけのMMOは腐るほどあるが別々のハードで同じように遊べるソフトは数少ない
俺は本来PCで楽しんでいるがさすがにデスクトップPCはここに持ってきていない
なので、いつもと少し使い勝手が違うがゲームを楽しむことにした
所謂現実逃避だ
リリース当初からやっているゲームで、課金もしているのでそれなりに強いはず
その理由の一つが所属しているギルド「パイルバンカー」だ
俺の所属しているこのギルドはギルド戦で10位以内を逃したことが無い
その中で俺はタンク職のリーダー的存在として日々メンバーの盾となり奮闘している
決してドMではない
キャラネームは「ソウ」名前を単純に音読みしただけ
特によくパーティを組むのが魔導士のブルーム、拳闘士のレミー、回復士のジョーカー、聖騎士のジョージだ
俺とジョージは男キャラ、他3名が女キャラなので残念ながらハーレムではない
まぁ、ネトゲなのでネカマかもしれないが
「さて、誰かログインしている人はいるかなっと・・・おっ、ブルームがいた」
ブルームは初期メンバーで俺が最もよく話す相手だ
おいす~とモーション付きで軽く挨拶するとブルームもおいす~と返してくる
何をしているのか聞くと暇だったからインしただけとのことだったので、
俺も似たようなもんなのでしばらく個チャ(個人チャット)で雑談していた
「B:今日すごいトラブル続きで狩りに行く元気もないんだよね~」
「S:俺も今日は仕事絡みでてんやわんやだったわw」
「B:お互いしんどそうだねw」
「S:だなwしかし、スマホだと入力に時間かかわるわ」
「B:あれ?珍しいね。ソウが夜にスマホでやるの」
「S:ちょっと諸事情でな。1週間もすりゃPCでできると思う」
「B:そうなんだ。そういえば1週間後くらいからイン率下がると思う・・・」
「S:どした?家を追い出されるとかか?w」
「B:それに近いかな・・・・」
「S:おいおい・・・まじかよ・・・何かあったのか?」
「B:逆・・・かな・・・何もしてないから・・・かな・・・」
「S:う~ん・・・リアルのことを聞くのはご法度かもしれんがよかったら話してみ?もちろん個人名とかは伏せてな。ブルームと遊べなくなるのも嫌だしな・・・」
「B:・・・ありがと。私ね、リアルでも女なんだけど男の人が苦手、というか怖くて・・・今すんでるところは女性だけだし趣味も一緒だから凄い楽しいの」
「S:いいことだな。その中の誰かと喧嘩でもしたのか?」
「B:ううん。実はその家がおじいちゃんの家なんだ。住んでる理由は男性になれることとコミュ力向上なんだ。だから、防犯も含め男性を一人管理人のような感じで置けって言われてるの」
ん?
「B:で、今まで何人か住んでもらったんだけど、そのうちの何人かがちょっと警察沙汰になっちゃったりしてさ・・・余計に男性不振になって・・・・」
おいおい・・・マジかよ・・・
「B:でね、今日新しく住むかもしれない人が来たんだ」
まさか・・・・
「B:その人がすごい面白い人なの!私のお姉ちゃん、、というかお姉ちゃんみたいな存在の人と漫才みたいに掛け合いしてる時、思わず笑いそうになったのw」
「B:でも、お姉ちゃんが私のこと心配してくれていろいろ住む条件を付けたんだけど、その人はそれが厳しすぎるって言って、とりあえずお試しで1週間だけ住むことになったんだ」
ビンゴだよ・・・
むしろビンゴすぎるだろう・・・
この話し方と状況からしておそらく不知火さんだな・・・・
お姉ちゃんは吉祥寺さんのことか
てか、意外にも俺好印象だな
「B:あっ!ごめんね。一方的にしゃべっちゃって・・・」
「S:んにゃ、別にいいよ。話したほうがすっきりするだろうし。ちなみに、ブルームはその人と住むのは反対なのか?」
「B:うーん・・・今までの人とは全然違う感じがするんだよね・・・なんていうかいい人って感じw」
いい人か・・・・
今まで幾度となく言われ続けた言葉だな
あなたはいい人なんだけど・・・ってな!!
「S:そっか。ならその人でリハビリしてみたら?」
「B:リハビリ?」
「S:男性恐怖症の」
2階からガタン!って音が聞こえた
「B:そ、そんなの無理だよ!相手にも悪いし、、、それに何より相手は私のこと快く思ってないし・・・」
「S:なんで?何か言われたの?」
「B:ううん。でも住むときの条件の時に私が原因って気づいてたっぽいし・・・」
気づかれてたのか!?
まぁ、人というより男性の目線や雰囲気に敏感なのかもな
「S:確証もないし一度聞いてみたら本人に。」
「B:無理だよ・・・そんなの・・・第一男性が目の前に来たら、なんて話せばいいかわかんないから冷たい反応になるし・・」
「S:そっか・・・チャットなら大丈夫なのになw」
「B:チャットとかは相手が見えないし・・・てか、ソウは男なの?」
「S:そだよ。よくいい人って言われるよw」
ちょっとヒントを出してみた
これで気づくなら大したもんだが・・・・
「B:・・・ソウって最近人事異動とかあった?」
こいつエスパーか!?
コ○ン君もびっくりの名推理だぞ!?
どうする?ここはゲロったほうがいいのか?
それとも隠し通すべきか!?
そうこう考えてると電話が鳴った
「時任先輩」
先輩からだ
「お疲れ様です。どうしましたか?」
「いや、仮住まい初日を元気に過ごしてるかなと思ってな」
なんていい人なんだ・・・
「何も問題はないですと言いたいところですが、何かと制約が多くてきついっすね。多分、1週間で根を上げる可能性が高いです」
「そんなにか・・・」
「朝6時~9時と夜19時~24時までトイレ以外部屋から出るの禁止ですからね」
「牢屋じゃねぇかよ・・・まぁ、1週間といわず本当に辛かったら連絡しろよ。何とかしてやるから」
「ありがとうございます。万が一があればその時はよろしくお願いします。」
「おう。じゃあ頑張れよ。」
本当になんていいひとなんだ・・・
電話を切ってアプリを再開しようとすると
コンコン
俺の部屋のドアがノックされた
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