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第七話 妥協点

序盤は葵視点の話になります。

「しっかし、何なのよあいつは」


ぶつくさと言いながら彩姫さんは晩御飯の用意をしている

どうやら彩姫さんは先ほどの話し合いの件をまだ納得いっていないみたいだ


「まぁまぁ、ええやないですか。今までのやつらと比べたら全然ましやと思いますけどね」


藤堂さんはわりと気に入ってるみたいだ

そんなイケメンでもなかったのになんでだろ?


「私もよかったと思いますよ~。あの人、社内でも評判いいみたいですし~」


本庄さんもいつものおっとりした感じで肯定的な意見を述べている


「あんな反抗的な奴のどこにいい要素があるっていうの」


「年のこと言われて怒っとるだけやん・・・(小声)」


「あん!?美鈴は何も食べたくないようね?」


「ひぃ~!!堪忍して~な~!」


「クスクス」


私は思わず笑ってしまった

それを見た彩姫さんが恥ずかしそうにしている

美鈴さんはニマニマしている

本庄さんもいつもの笑顔だ


晩御飯を食べ終え、みんなでシュークリームを食べながら今後の話し合いをする


「さて、どうする?あいつをここに住まわせるのかどうか」


「さっきも言ったけどうちは賛成。てか、住んでもらわんとあかんし。」


「そうですね~。なので、私も賛成で~」


やはり二人はあの男性に対して好意的な意見だ


「ただ、葵ちんが大丈夫ならやけどね。葵ちんが無理なら別の方法を考えよ」


「ですね~。ここでみんな仲良く暮らせてるのは葵ちゃんのおかげですし~」


二人の言葉に私は泣きそうになった

純粋に二人の言葉がうれしかった


「葵・・・?どう?」


彩姫さんがいつもの優しい表情で聞いて来た

私は・・・・


「住んでも・・・・」



はぁ~・・・・


牛丼屋で飯を食べた後、駅前をぶらついてゲーセンを冷かしていると、

携帯が震えた


名前はなく番号だけだ


いつもなら出ないんだが、今日はいろいろとあったのでその関係かと思い電話に出ると


「出るのが遅い!」


「す、すいません!」


反射的に誤ってしまった


「ほんとに・・・で、あんた今どこにいるの?」


この声と話し方は吉祥寺さんだろう

まず名前を名乗れよ・・・


「今は駅前にいます」


「ならすぐ帰ってきなさい。あっ、シュークリーム買ってきてね」


何なんだよこの人は・・・

唯我独尊(ゆいがどくそん)過ぎるだろ・・・


「承知しました」


しかし、(あらが)えないのまた事実・・・・


シュークリームを人数分+α購入し帰宅すると、

リビングに連れていかれた

皆、勢揃いだ


「さて、あんたの処遇だけど」


「はぁ」


何で向こうに決定権があるみたいになってるんだ?


「とりあえずここに住むことは認めるわ。ただし、さっきも言った条件は厳守すること。一点を除いて」


認めるも何も誰かが住まなきゃならんのだが

で、何が変更になるんだろう

俺が黙っていると


「トイレの時のみ部屋を出ることを許可するわ」


「そこかよ!」


思わず突っ込んでしまった


「ぶふっ!くくく・・・」


藤堂さんが腹を抱えている

本庄さんも俯いて肩を震わせている

しかし、やはりというかなんというか不知火さんは特に反応はない

若干顔が赤い感じもするが


「何?何か文句あんの?」


「いや、もう何でもいいですが・・・」


「じゃあ正式にここの住民に「ちょっと待った!!」」


まさかの発言に思わず話を遮ってしまった


「・・・何?」


吉祥寺さんが明らかに不機嫌だが関係ない


「いつ私が正式にここに住むといいましたか?あくまで1週間の約束です。1週間住んでみて今後のことは検討させてい頂きます」


ここで流されるわけにはいかない

ここで流されると今後何があっても向こうに決定権があることになる

そうなると退職者たちと同じ道をたどることになる

それだけは回避せねば


「・・・何が不満なの?」


あの表情だ

前回はあの表情に騙されたが2度目はないぜ!


「い、いや、そのまぁ、何と言いますか・・・」


くそう!


頭では理解してても心が!


「・・・」


吉祥寺さんがじっと俺を見ている

藤堂さんも本庄さんもだ

唯一不知火さんだけが下を見て俯いていた

俺は一度深呼吸すると


「現時点で不満があるとすれば朝の6時~9時までが部屋から出れないことです。それに伴い、19時まで職場にいることになるので、必然的にここに入れるのが24時を過ぎてからになります。さすがにこの条件で年間通して住むのは不可能です。1週間くらいなら我慢はできますが」


「なら、最初からずっと住む気はないということ?」


「全くないわけではありませんが、条件が変わらない限り期間限定になるかと」


「そう・・・・では、なぜ1週間限定で住もうと思ったの?」


「ここまでの条件は想定外だったからです」


本当はあなたの表情に騙されたからですがそこは黙っておこう


しーん・・・・


リビングが静まり返っている

このままずっと静寂が続くのかと思ったが、

意外にもすぐにその時がきた


「うがー!!どないすんの!?とりあえず聡は住むん?住まへんの!?」


藤堂さんが切れた


「住みますよ。とりあえず1週間」


「ほなそれでええんちゃうん?いったんここで手打ちにして1週間後また考えたらええやん!」


これだけ聞くと問題を先延ばしにしているだけに聞こえるが、

実際この手が現状の最善と俺は思っている

実際住んでみないとわからないこともあるだろうし


「問題を先送りにしているだけで何の解決にもなっていないようにも思えるけど?」


「じゃあ彩姫さんは何かええ案でもあるんですか?」


「・・・」


そうだろうな

現時点で俺を説得できていない以上、策はないはずだ

吉祥寺さんが悔しそうに恨めしそうに俺を見ているが見て見ぬふりだ


「では、当初の予定通り1週間よろしくお願いします」


頭を下げ、俺は自室に戻ろうとすると


「シュークリーム置いてきなさい」


ここでそれを言うのかよ・・・

俺はあきれながら「どうぞ」と手渡して今度こそ自室に戻っていった


お読みいただいて誠にありがとうございます。

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