第十五話 知らぬが般若
「いらっしゃいませ!」
看板娘の京香さんが出迎えたお客さんは俺もよく知るシェアハウスの面々だった
「4名様ですね!テーブル席にどうぞ!」
元気よく案内をしておしぼりを渡している
俺がチラッとみんなを見ると吉祥寺さんがニヤッと意地の悪い笑顔を見せている
美鈴さんはいつものにやにや顔だし、本庄さんはふわふわとした笑顔だ
まぁ、それは問題ない
問題は葵だ
俺にジト目を向けたのはいつも通りだから問題ない
なぜか京香さんにもそのジト目を向けていた
「なぁ、聡・・・あいつらって・・・」
「はい・・・住人の方々です・・・なぜここにいるのかはわかりませんが・・・」
~遡ること30分前~
「お姉ちゃん!今日は外食にしよう!」
私の発言に目が点になっている
「えっ・・?あっ、まぁ、まだ作ってないから大丈夫だけどどうしたの?」
「この家の危機だから!」
「あ、葵?ほんとにどうしたの?」
お姉ちゃんが痛い子を見るような顔になっている
「聡さんがうわ、じゃなくて、彼女がいそうなの!」
その瞬間ソファーで美鈴さんがお腹を抱えて笑いだした
こっちは真剣なのに!
それでもお姉ちゃんは真剣な顔で聞いてきてくれた
「もしそれが事実なら由々しき問題ね・・・万が一あいつに彼女でもできてここを離れようもんなら今度こそ解散ね」
それだけは絶対に嫌だ!
するとさっきまで笑ってた美鈴さんが
「葵ちん、聡がどこの焼き鳥屋行ったか知ってるん?」
はっ!そうだ!それがわかんないとどうにもならない・・・
私が表情を曇らせていると神のお告げが聞こえてきた
「多分、火喰い酉っていうお店だよ~」
「ほんと!?」
多分ね~と答えるさやかさん
さすが情報通!
そうと決まれば行くしかない!
お姉ちゃんも頷き、みんなで火喰い酉に向かった
目的地について中に入った私たちを出迎えたのは、
すごく可愛らしい女性店員だった
まさかこの人が!?!?と思いつつ中に入ると
いた・・・
聡さんが男性とご飯を食べている
おそらく同じ会社の人だってのはわかる
あっ!あの可愛い店員さんとすっごく仲良さげに話してる・・・
思わずじーっと見てしまう・・・
気をつけないと・・・
~そして現在~
しかし、なぜ俺がここにいるのがばれたんだ・・・
誰にも言ってないぞ・・・
「おい、聡。お前ここの事言ったのか?」
「いえ、焼き鳥を食いに行くとしか・・・」
「それでここをチョイスするとかどんだけなんだよ・・・」
「俺も震えが止まりません」
と会話しているとエプロンを外した京香さんが俺の隣に座った
「お邪魔しますね」
と笑顔で賄いの焼き鳥盛り合わせとご飯を持ってきた
「はい、聡さん。せせりどうぞ♪」
と極上の笑顔で俺の口に持ってきた
「えっ?あ、はい」
と普通に食べてしまった
いわゆるあ~んだ
「うん、うまい。京香さんからだからかさっきよりもおいしいです」
と、とりあえず褒めておいた
「しょうがないなぁ~。じゃあこれは私の賄いってことにしといて上げる」
と俺の期待していた通りのことばが帰ってきた
ちょろいぜ京香さん!
「お前ら相変わらず仲いいな」
時任さんがニヤニヤしている
「そうですか?普通だと思いますけど」
と言うと隣から少し冷気を感じた
「普通か~・・・私は仲良いかなって思ってたけど?」
「そ、そうですね!一緒にご飯を食べる中ですし!」
アブねぇ!と思っていたら、後ろからものすごい殺気を感じる
しかし、振り返れない
振り返ったら最後、魂を持っていかれそうだ
その後も雑談を楽しみつつ、いい時間になったのでお会計をしていると、
お釣りをもらうときに京香さんが両手でぎゅっと握って渡してきた
「また、来てくださいね!」
めちゃくそかわいい笑顔で言うもんだから
「もちろんですよ。食事のついでに京香さんに会いに行きますね」
と我ながらちょろい返しをしといた
大将が俺の飯がついでだと!と怒っていたがそそくさと退散しておいた
しかし、俺は気づいていなかった・・・
そこにリトル般若が生まれていたことを・・・・
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