第十一話 シェアハウスの管理人は退職ルート!?
とりあえず住むにあたって決まったルールは当初突き付けられたものより大幅に改善された
何より時間制限がなくなったことが一番大きい
お風呂と洗濯に関しては全員が利用した後、吉祥寺さんから連絡が来る仕組みだ
食事に関しては食費さえ払えばみんなとご飯を食べていいらしい
俺は別にどっちでもよかったので部屋で食べときますと答えたが
藤堂さんと不知火さんの反対によりみんなと食べることになった
藤堂さんはワイワイ食べるのが好きなんだろうが
不知火さんは意外だったな・・・
まぁ俺を男嫌い克服の練習台に使うつもりだろう
概ねルールも決まり俺は新生活をスタートした
~1週間後~
幸か不幸か特に何のトラブルもなく1週間が過ぎた
たまに吉祥寺さんと言い合いになるがそれくらいだ
そして今夜、今後の話し合いが行われようとしていた
全員がリビングに集まっている
いつものシュークリームを食べながら和やかに話し合いは始まった
「さて、もう決まってるけど念のため1週間経ったから確認だけど、これからも住むんでしょう?」
「う~ん・・・そうですね・・・」
俺が即答すると思っていたらしく皆が少し驚いた目で見てくる
「何か問題でもあったん?うちらが見てる限りでは楽しそうに過ごしとったと思うけど」
「そうね~。特に問題ないように見えたけど~」
実際大きな問題はなかった
料理も出てくるしある程度の自由もある
ただ、ある程度なのが問題なのだ
正直、料理以外でここに住む理由が無いのだ
別にコンビニ弁当でも外食でも食事はどうとでもなる
何より、ぶっちゃけ一人のが気楽でいいのだ
わざわざ気を使いながらプライベートを過ごす理由がない
俺がどう答えようか迷っていると
「なんで・・・?」
今まで何も言っていなかった不知火さんがポツリと漏らした
全員が不知火さんを見る
「なんでダメなの?私何かした?困らせるようなことした?ううん。私だけじゃなくてここの皆は鷹峰さんに何かした?」
涙目で息を切らしながら早口でまくし立てている
「あっ、いや」
俺がしどろもどろになると不知火さんを除いた3人が俺を三者三様の目で見てくる
吉祥寺さんからは『何、私の妹を泣かしてくれてるんだ?あぁん?』と般若モード一歩手前だ
藤堂さんは『責任とりや~』とにやにやしている
本庄さんは『あらあら~、うふふ~』とにこにこと楽しそうにしている
俺は2人の表情を見たあと覚悟を決め不知火さんに話しかけた
「不知火さんを含め皆さんが私に対して何かをしたということはありません。悩んでいるのは私自身の問題です」
藤巻さんは俺をじっと見て話しを聞いている
「単純に私自身がここまで毎日気を使いながら生活することに耐えれるのかなということです」
「1週間で何を言ってるんだと思うかもしれませんが、その1週間でも私が想像する以上にしんどかったです。やはり女性が4名住んでるところですから。一挙手一投足に気を遣うのはさすがにしんどいです」
「プライベートの時くらいゆっくりしたい。というのが私の本音です」
これは俺の本心だ
後はみんながどう反応するかだが・・・
「そんなに気をつかわせてたかしら・・・?」
「うちもそんな気をつかってなかったと思うんやけどな・・・何やったら今まで一番『素』で過ごしてたんやけどな~」
「私もね~。初日こそあれがあったけど、それでも今までで一番良かったかな~」
「その節は本当にすいませんでした!」
即座に誤った俺を見て本庄さんはいつもの笑顔でもう気にしてないよ~と言っている
「・・・葵は?」
俺もだが吉祥寺さんも一番気になってるだろう相手だ
「私は・・・私は・・・」
少しの静寂の後、驚愕の言葉が続いた
「・・・鷹峰さん以外はやだ」
「へっ?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまった
待て待て!勘違いするな!そう意味じゃないぞ俺!
3人がさっきのような目で見てくる
「ま、まぁODRのこともあって話しやすかったってのもあるんだろうけど」
「それだけじゃないもん」
待て待て!
ほら!吉祥寺さんが般若になってるって!
「何がそんなによかったん?」
おい!絶壁娘!いらん事を聞くな!
「これってのはわからないけど、何か安心できるから・・・」
まぁ俺は人畜無害だからなぁと遠い目をしている
「そうなのね~。葵ちゃんがそんなに安心できる人なんだったら私たちも安心できるのにね~」
にこにこしながら俺の逃げ道をふさごうとするな!ゆるふわネグリジェ!
「し、しかしですね、先ほど言ったように私が気を遣うんですよ!」
「そんなに私のことが嫌なんだ・・・」
不知火さーん!!誰もそんなこと言ってないだろ!てか、泣くな!
般若が!もう目線だけで人が殺せるくらいになってるから!
「かわいい年下の女の子泣かしてでも、自分の事を優先とかどうなんそれ〜?」
にやにやしながら俺を非難する絶壁娘
「で、どうするの?」
般若もとい吉祥寺さんがものすごい威圧感を放ちながら聞いてくる
「いや、あの、それは」
ちくしょう!どうすりゃいいんだ!?
何か切り返す方法は無いかと必死に頭を回転させる
「ほら~男らしく~」
このゆるふわめ!
「・・・」
俺が黙っているととどめの一撃が飛んできた
「・・・・・・・ダメ?」
潤んだ瞳の藤巻さんが上目遣いで聞いてきた
「・・・だめじゃ・・・ないです・・・」
これを断れる男がいたらここに連れてきてほしい
しかも隣には般若の姉がいるんだぞ
「ほんとに・・・?」
「はい・・・」
「ほんとのほんと?」
しつこいな!
こっちはもう諦めて腹を括ったつーのに!
「いましつこいなこいつって目で見てきた・・」
また泣きそうになっている
だからお前はエスパーかよ!
「あんた、また泣かして・・・わかってるでしょうね?」
「鬼畜やな〜」
「女の敵ね〜」
「あぁ〜!もう!住みますよ!住めばいいんでしょうが!?」
若干やけになって叫んだ
すると、さっきまで泣いていたはずの不知火さんがニコッと笑い
「やった〜!」
と立ち上がった
他のみんなもにやにやしている
ま、まさか・・・
「・・・はめられました?」
恐る恐る聞くと
「はめたなんて人聞きの悪いこと言わないでくれる?交渉した結果よ」
ふふんとドヤ顔で笑っている吉祥寺さん
「そやで〜。聡が自分から住むって言うたんやから」
といつものにやけ顔の藤堂さん
「ですね〜」
それに乗っかってにこにこしている本庄さん
そして、今まで見たことのない笑顔で俺に近づいてくる不知火さん
「これからよろしくお願いしますね。聡さん!」
手を差し伸べてきた
俺はその手を握り替えし、力なくこう返事した
「よろしくお願いします・・・」
こうして俺の波瀾万丈のシェアハウス生活は始まった
お読みいただいて誠にありがとうございます。
もし、よろしければ☆評価・ブクマ・いいねをお願いします!
作者のモチベーションにつながります・・・・!